遅刻はしなかったのに
「!ひっろーい!」
私たちはお風呂にきていた。
このお風呂はなんとサーシャ専用だそうで一人用らしい。
なのに広い。
サーシャ専用の部屋は三つもあるらしい。
一つは、私たちが再会してご飯を食べた部屋。
この部屋は、誰かきた時に会ったりご飯を食べたりする部屋らしい。
二つ目は寝室。
そして三つ目がいまいる浴室だ。
ちなみに一つ目の部屋の前に入った部屋は、待合室らしい。
浴室には脱衣場、体を洗う場所、お風呂になっている。
けど、お風呂にはお湯が入っていない、なんでだろ?
「それはですね、私が入る時に自分の魔法で入れてるからです」
なふほど。
あっ!もしかして、あの魔法?
「そうです」
「サーシャ様の魔法のお風呂に入れるなんて光栄です!」
クレアは目をキラキラとさせている。
「魔法のお風呂って?」
クレアと違ってアンズは可愛らしく首を傾げている。
「クレアは大げさだな、何回か入ったことがあるだろ。
魔法のお風呂とはこれだ、クリエイトオンセン」
サーシャが魔法を唱えると浴槽にお湯が溜まっていく。
「あれっ?これって普通にお湯を出しただけじゃないの?」
「これは普通のお湯でなく温泉というものだ」
「温泉?それって地面を掘ったら出てくるのだっけ?
そんな魔法があったんだ」
「ああ、これはルー様が作った魔法だ」
「ルーちゃんが!?」
「ルーさんが!?」
アンズとクレアが同時に驚いて私を見てくる。
私が作ったってクレア知らなかったんだ。
「うん、温泉に一回行った時すごく気持ちよかったから毎日入りたいなーって思って作ったの」
封印される前もいつもサーシャが使ってたし、封印から出てきてもお風呂は滅多に入らなかったからすっかりわすれてたよ。
お風呂を出た私たちは寝室へやってきた。
久しぶりにサーシャに背中を洗ってもらったけど、すごく気持ちよかった。サーシャは背中洗いのプロかもしれない。
今日はもう寝るだけなのでベッドに入る。
皆同じべっどだ。
四人寝たって十分な広さがある。
なんでこんな広いんだろ?
サーシャ一人用だよね?
クレアは「一緒のベッドに寝るなんて」と恐縮していたが、もう友達なんだからと説得して一緒に寝ることになった。
ふかふかのベッドに入り目をつぶる。
今日は色々とあったなー。
血なんて流したのもすごく久々だったなー。
〈称号作成〉と〈称号破壊〉という新たな力も手に入れた。
草食狼という美味しいお肉にも出会えた。
・・・大量繁殖は止められたけど・・・。
今日は疲れたなー。
そんなふうに今日の出来事を思い返しながら眠りについた。
「起きてください、ルー様!」
んー、サーシャの声がする。
眠たい・・・後少しだけ・・・
「起きないと遅刻しますよ!」
「ちこく〜?」
「はい、学園に遅刻しますよ!」
がくえん?
・・・あっ!そうだった!
学園に行かなきゃ!
「皆行こう・・・って二人は?」
どこを見渡してもアンズとクレアがいない。
「二人ならルー様を置いてさきに行きましたよ」
「えっ、ひどい!なんで置いていくの!?」
「ルー様が先に行けと言ったからです」
サーシャが呆れながら言う。
私そんなこと言った?
ん〜、言ったかも?
「それより早く行かないと本当に遅刻しますよ」
そうだっ!
今から歩いて行っても間に合わないので転移魔法で行くことにする。
「じゃあ、行ってくるね」
「いってらしゃいませ」
サーシャと挨拶をかわして転移魔法を発動させる。
「ルーフェスは遅刻だな」
「い、いるよ!」
あっぶなーい!
ギリギリセーーーーフ!
ココナがちょうど確認してるとこだった。
うん、間に合ったね。
「なっ!い、いつのまに!?」
ココナがすごい驚いてる。
いや、ココナだけじゃなくて教室中が騒がしい気がする。
「おい、さっきまで、いなかったよな」
「突然現れたような・・・」
クラスのみんなが私を見てる。
「ルーちゃん!いきなり教室に出てきたら駄目だよ!」
何故かアンズに叱られてしまった。
「皆静かに!
ルーフェスも遅刻になるからと、気付かれないようにこっそり入ってこないように!」
こっそり?
転移魔法でここにいきなり出たから、こっそりになるのかな?
「朝の授業はここまで」
朝の授業が終わった。
昨日と違って色々な話が聞けて面白かった。
魔法に関しての授業はもっと聞きたいな。
「ルーちゃん、もうちょっと余裕を持ってこないと駄目だよ」
ギリギリできたことをアンズに叱られてしまった。
「あと、教室に転移しちゃダメだよ」
「なんで?」
さっきも言われたけどそれがよく分かんないんだよね。
「ルーちゃんは[魔王]であることを秘密にするようにって、ココナ先生に言われたでしょ」
うん、言われたけど、それが?
「普通の学生は転移魔法なんて使えないんだよ。
ましてや私たちは入学したばかりなんだし」
そうかな?
使えると人くらい一人や二人、いるでしょ。
「いないよ」
「いないと思います」
アンズだけじゃなく、クレアにまで否定されてしまった。
探せばきっといると思うんだけどなー。
「ルーフェス、話がある」
私がアンズたちに叱られているとココナに呼ばれた。
なんだろ?
もしかして、ココナにも叱られる?
遅刻もしそうになったし、転移魔法でいきなり教室にきたのもダメだったみたいだから叱られるかも。
「クレア王女もいいか?」
あれ?
私だけじゃないの?
じゃあ、もしかして叱られない?
そんなことを考えながら私たちはココナについて行くのだった。
こういうの何回もあるな。




