クレアの呪い
「本当にちゃんと反省してくださいね」
サーシャが何回も反省しろと言ってくる。
そんなに何回も言わなくても大丈夫だよ?
反省してるよ?
「ルー様が封印されて、色々と大変だったんですから」
「大変?」
「はい、ルー様が封印されたことで、大戦が起こりました」
「「「えっ!?」」」
私が封印されて大戦が起こったって、どゆこと?
疑問に思ったのは私だけじゃなくて、アンズもクレアもそうみたい。
「[最強の魔王]がいなくなったことで、他の魔王や他の存在が、自分が[最強]だと、暴れ出したり、ルー様が封印されて怒ったものたちが、暴れたりと色々あったんです」
へー。
そうだったんだ。
確かに私がいる時にそんな大戦が起こるなら、私が全力で止めてたかもだしね。
「そんな理由で、大戦が・・・」
「クレア、そんな理由というのはどういうこと?」
あれっ、サーシャちょっと怒ってる?
「ルー様をこの世界から消したんです。
怒っても仕方ないでしょう」
あー。
サーシャも怒ってたのね。
私の為に怒ってくれてありがと。
「も、申し訳ありません!
その、そういう理由ではなく・・・」
「ほらほら、サーシャ抑えて、クレアも悪気があったわけじゃ無いんだから」
「それで、サーシャはなんでここにいるの?」
「数百年前、この国がオルトラニーに迫られていたところを、私とカノンで救って、それから守護者としてこの国にいるんです」
そっか、カノンと一緒にねー。
「オルトラニーって誰だっけ?」
聞いた事はあるような気がするんだけど、
「忘れたんですか、[魔王]オルトラニーですよ?」
[魔王]?
あっ!
そういえば、そんな人もいたっけ。
「で、カノンはいないの?」
「はい、カノンはルー様を探すと世界中をまわっています」
「世界中って、私この世界にはいなかったよ?」
「はい、それは彼女にも言ったんですが、「いないなら見つける」と意味のわからないことを言って行ってしまいました」
あー。
そっかー。
あのこはおバカだったからなー。
「ルーちゃん、勇者カノン様を知ってるの!?」
アンズが驚いたように私に問い詰めてくる。
クレアも驚いてるみたい。
「うん、カノンは私の、えーっと、従者?妹分?みたいな感じだよ」
「伝説の勇者様が従者・・・」
アンズもクレアも驚いて口を開けたまま固まってちゃった。
「クレア良かったな、これでお前も助かるかもしれないぞ」
二人が落ち着いた後、サーシャがそんなことをいいだした。
助かる?
「っ!本当ですか!?」
「あぁ、ルー様にできないことは、ほとんどないからな。
[理不尽魔王]と呼ばれてるのは、ルー様が本当に理不尽なまでありえないことをしてきたからだ」
なんか酷い気がする。
「助けるって、クレアに何かあるの?」
「はい、まずはクレアを鑑定してみてください」
鑑定?
言われた通りにやってみる。
[魔王殺し]。
彼女にはぞな称号があった。
「えっ、[魔王]をころしたの!?」
私はその結果に驚いてクレアの方をみる。
「!?
この称号は生まれつきですが・・・どうやってわかったんですか!?」
「スキルで鑑定してだけど?」
クレアは何に驚いているんだろう?
それより、生まれつきで称号持ち。
クレアの前世の人がその称号を得て、それが受け継がれたって事だろうか?
確かすごく稀にだけど、そういうことが起こったはず。
「で、なんでそれで救って欲しいの?
[魔王殺し]のせいで、魔王に狙われてるとか?」
「いえ、そうではなく・・・
わたくしはこの力を制御できず、自分の命を削ってるのです」
なるほど、そういうことね。
強力な力を制御できずに持ってると、そういうこともあるか。
でも、この[魔王殺し]って魔王を殺したから貰える称号だよね?
ならなんでそんな強力な力をもってるんだろう?
称号を詳しく調べるのは面倒なんだよね。
よしっ、ここは、
私は立ち上がってクレアの横に立つ。
私の方を不思議そうに向いてきた顔を、両手で掴んで、顔をちかづけていき、クレアの唇にキスをした。。
「んっ」
3秒ほどしてから口を離す。
クレアは最初、なにがあったのかわからないようにポカンとしていたが、だんだんと顔を赤く染めていった。
今では耳まで真っ赤だ。
「な、なにしてるの、ルーちゃん!」
「ちょっと、詳しく調べるのに必要だったんだよ」
あれからわたわたと色々あったが、キスは本当に必要だったんだ。
スキルや称号を詳しく知るにはしっかりと解析する必要がある。
複雑なものほどそれは疲れる。
称号なんかはなおさらだ。
だから体液・・・唾液をとった。
これならずっと楽になるから。
そして、[魔王殺し]の詳細が解析できた。
この称号はほんとうに[魔王]である人を殺せるものではない。
この力は[魔王]そのものを殺す力。
簡単にいうと、[魔王]の称号を壊して、[魔王]を[魔王]じゃなくするものだ。
うん、すごいねこれ。
世界に与えられた称号を壊す。
[魔王]限定だとはいえ、かなり強力なものだ。
こんなものを生まれつき持ってても、制御出来ずに、長く生きられないのもしかたないね。
暴走させてないだけでもすごいよ。
わかったことを皆に伝える。
「そうですか、そんな力だったんですね・・・」
「それで、ルー様、なんとかできますか?
できれば助けてやってほしいんですが」
うん、私も助けたいよ。
友達になったんだしね。
はーーー。
すごく疲れそうだけど、頑張りますか。
「クレア、頭だして」
頭を出してきたクレアの頭に手を置く。
目を瞑り、集中力をたかめる。
やることは簡単。
まずは[魔王殺し]の構成を読み解く。
それから〈全能〉の力を使って、[魔王殺し]の[称号を壊す]というのを再現する。
そうして、クレアの命を削っている[魔王殺し]を壊すだけ。
集中力を高め構成を読み解いていく。
くっ、なかなさ複雑でしんどい。
よしっ、読み解けた!
パリーン!!
ん?
なにかが割れたような音が聞こえた気がするけど、今は気にしない。
あとは、[魔王殺し]をこわすだけなんだから。
こっちは〈全能〉を全力で使って簡単にできた。
ふー、
おわったー。
つかれたー。
集中を解いて目を開ける。
あれっ?
なんか口の中が血の味がする?
不思議に思い下を見てみると、クレアの綺麗な金髪を赤く染める液体・・・血が大量にあった。
この血って、もしかして、私の?