表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旋律はいつもドリン系  作者: 鍵森 裕
1章 始まりは、そんなもん。
9/66

9話 ニックネームは。

「俺、ねーちゃんが三年にいるから、だいたい聞いてたけど、ほんまに、オージョー(往生)したで!」


 やはり藤本は、あの女子の壁を突破して教室に入ったようだ。


「ワシらは階段をわざわざ1階まで降りて、反対の扉にまわったんじゃ」


「ほーじゃ、ほーじゃ」と『階段遠回り組』が言った。そして、口々に女の壁を乗り切った藤本の勇気をたたえた。


「俺もそうすればよかった」と、藤本が顔を少し赤らめながらボソッと言った。


 女子の壁で何があったのか?


 ワシの藤本に対する言葉遣いは微妙に気を使っている。他の中学の奴らには、わからないだろうが石田だけは気づいていた。


 出来るだけ、自然に聞こえるように、丁寧に、でもあまり媚が他人に見えないよう。(ワシは藤本は恐かったが、そのせいで他の中学の奴に、ばかにされたくないのじゃ)


 石田はワシに向かって、しきりに大丈夫か?

というように目配せをしてくる。ワシがいつ、ライオンの尾を踏むかとヒヤヒヤしている。そして、すぐにでも逃げれるように藤本の顔色を用心深くうかがっていた。


 ワシは、ひとつの賭にでた。


「『マーくん!』7時40分の電車で来てたろう。ボクだも徳田駅から乗ったのじゃ。マーくんはどこから乗ったの?」


「湯田村駅」(ワシの乗る徳田駅の一つ前だ)


 藤本正輝はそう言った後、すぐに自分がどう呼ばれたか気づいた。そして、右の口元を少しだけあげて笑った。


 石田の喉がゴクリと動いた。


 賭に勝った。


『マーくん』というのは、藤本の不良の仲間うちだけが使っているニックネームだ。


 ワシは、福山の不良どもに名前が知れ渡っている『危ないコイツ』藤本をニックネームで呼べる、ただひとりの一般人になったのだ。


◆◆


 担任が入ってきた。初めてのホームルーム。一人一人の簡単な自己紹介。名前、出身中学、あれば趣味など、それから「よろしくお願いします」だ。


「青山 千春です」


 ワシは藤本正輝に向けて、そう言った。


***当時の後書き


次回、マンドリンクラブの部室に行きます。

何にもなければですけど……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ