8話 ここはやはりライオンの檻。
凄く短いです。
ワシら『階段遠回り組』は教室の窓際の後ろの方に陣取った。
1クラス35人。その内男子約10人。そういう状況におかれた男子がとる行動は、ひとつ。
寄り添うことだ。
真面目な奴も不良も、ワシみたいにそのどちらでもない普通の奴も、みんな一所に固まるのだ。
そして、知った顔がいないか、あたりを見渡す。少しでも知っている人間がいたら満面の笑顔を見せて話しかけるのだ。
藤本正輝も同じだった。
30年前の不良は、みんな純情だった。(もちろん、例外はいます)不良のレッテルをはがせば、藤本だって15才のチェリーボーイなのだ。
『階段遠回り組』男子10人に藤本も寄り添うように加わった。藤本もワシらもここでは、ライオンの檻に入れられた羊だった。
驚いたことに藤本はワシを知っていたのだ。もちろん、中学の時に見かけた程度だったと思う。もう1人の石田には見向きもせず、ワシに話し掛けた。
石田にすれば、ありがたかったに違いない。貧乏ゆすりのような足の震えが止まっていた。
藤本はワシの名前までは知らなかっただろう。記憶の底からワシの名前を引きあげようとしていたようだが、あきらめたのか、少し間をおいて口を開いた。
「女ばっかで、おーじょーしたで!」(訳=女ばかりで、大変だったよ)
電車の中で見た、辺りを睥睨するようなオーラは感じられない。ワシと同じ15才の少年の顔があった。
***当時の後書き
そろそろ、クラブに入部できそうです。
主役は私(青山千春)ですけど、1章は藤本正輝、彼のお話です。