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旋律はいつもドリン系  作者: 鍵森 裕
1章 始まりは、そんなもん。
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5話 意外に頭よかったのね藤本くん。

 入学試験の時に藤本の姿を見つけた時、ワシと同じ中学の人間はみんな驚いた。


 なぜかって、藤本クラス(レベル)の不良になると、行く学校なんてだいたい決まっている。


 ネンは本気で「やっぱり、普通科の進学校にする」と言った。


「ばか。藤本みたいなのが、新市商に受かるわけないじゃろ」


「そうか、そうだね!」


 きっと、他の生徒もそう思ったことだろう。


 新市商は広島商業(野球で有名な)みたいに成績優秀な学校では決してなかったが、答案用紙に名前さえ書けば入学できるようなレベルでもなかったからだ。


 入学式、姿を表した藤本を見てワシらはパニックにおちいったのだ。


「青山くん、なんで藤本君がここにいるんだ?

落ちたんじゃなかったの?」


「恐るべし藤本。けっこう頭よかったのね。

でも大丈夫じゃ、ネン。ようするに近づかなけりゃいいのじゃ」


「わかった。でも、なんかあったら頼むよ。青山くん」


 ワシに頼ったくらいで、なんとかなるか? と、そん時思った。


◆◆


 新市駅から学校までの道は女、女、女だった。新市商業は女が多いということは知っていた。


 でも、知っていることと、解るということには大きな差がある。


 一学年に約250人。内、男子80人。1学年7クラス。1クラス約35人中、男子10人ちょっと、という割合だ。


 男子高に行った友人はうらやましいと言ったが、女に免疫のない当時のワシたちは、ここがパラダイスだと思えるはもうすこし先だ。


「うわー、すげー!ネン、女ばっかりじゃ!」


「ほとんど女子高みたいだ青ね、山くん」


 もちろんネンは女子高なんて知らないのだが。


 入学式や、受験の時は新入生だけだったので、「あー、やっぱり女が多いな」くらいにしか思わなかったが、今日は全校生徒がいた。女が三倍なのじゃ。


 藤本から逃げるようなつもりで駅から出たが。今度は女生徒に囲まれての登校が恥ずかしかった。


 小走りで女生徒を縫うように学校へ向かう。


 校門をぬけて下駄箱付近に掲示板があった。先生が掲示板のクラス分けの紙を見るように促している。


「あっ、ネンは一組だ。さすが代表!」


 ネンは入学式の時に新入生代表をやった。つまり、トップの成績で入学したということだった。


「ワシは……五組か」


「青山くん五番目だね」


「ないない、それはない」


 笑いながらワシ達はお互いのクラスに別れていった。


***当時の後書き


 今と違い、田舎では中学生の男女がつき合うようなことは、ほとんどありませんでした。せいぜい、誰と誰が好きあってるらしいと(つき合ってるわけじゃない)、うわさになる程度でした。


 それが、高校生になると解禁されたかのように、彼氏、彼女を作り出しました。


 でも、高校生初日は、ただただ恥ずかしかった事を思いだします。うらやましいぞ、高校生の時のワシ!

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