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旋律はいつもドリン系  作者: 鍵森 裕
1章 始まりは、そんなもん。
16/66

16話 初練習開始。

 ワシがこのクラブの先代部長、青山史浩の弟だという事はすぐに知れ渡った。


 別に隠すつもりもなかったが、どのタイミングで言おうかとも思っていたのだ。


 10人ほどの男女の先輩方が部室にドヤドヤ入ってきた。


「そんなおもしろいネタは最初に、俺に報告しろ!」と、まずドラの宮島部長が言った。他の先輩も口々に……。


「これが、あの青山先輩の弟か」だの。


「あれを小さくすると、こうなるのか」だの。


「あんまり似てないんじゃないか」だの言いながら、ツンツンする。


 棗田先輩は弟を見るような目で、ずっとワシに微笑みかけている。


 ちやほやされているのか、バカにされているのか良く分からなかったが、元部長の弟だからって、虐められるでも、特に優遇されるわけでもないようだ。


 何人かの先輩はワシを見るふりをして、藤本を観察に来たようだ。藤本の悪名を知っているなら心配しない方がどうかしている。


 でも、このクラブに棗田先輩がいる限り藤本は心配ないと思う。大人の世界を垣間見たワシにはわかるのじゃ。


 先輩方も満足したのか、入ってきた時同様にまたドヤドヤ出て行った。


みんなが出ていくと棗田先輩が楽器棚の所に行った。


「さて、どの楽器がいいかしら」


 ワシらにはまだ、個人の楽器がないので練習するには楽器を借りねばならない。棗田先輩はワシらの為にクラブの予備楽器からギターを選んだ。


 もう少し後になると、新入部員が増えて楽器が足りなくなるが、今日の時点ではまだ2人だけだったので、よりどりみどりだ。


 渡されたギターを持って、広い方(裁縫実習室)の練習場に案内された。机はすでに教室の後ろの方に片付けられていて、合奏ができるような状態になっている。(という状態だそうだ)


 まずはギターの構えかたとか、持ち方。初日なので練習というよりこのクラブの様子などを説明してくれた。


「部長の宮島君ね、チハル君のお兄さんに憧れて長ランにバギーパンツなのよ」


 棗田先輩が遠くを見るような、例の潤んだ瞳で嬉しそうに話してくれた。


「あっ。それで宮島部長を見た時、どっかで見たような雰囲気だと思ったのか……宮島部長さんって、いつもあんなに不機嫌な顔をしてるんですか」


「宮島君も部長になるまでは、ニコニコして冗談ばかり言ってたんだけどね。部長になってからは、雰囲気も青山先輩の真似ね。ふふっ」


「チハルは良いのう。兄さんがおって。俺の姉ちゃんは、小言ばかりじゃ。うるそーてかなわんわ」


 藤本は不機嫌そうでなく普通に会話に加わった。ワシがもう棗田先輩のことをあきらめたのを雰囲気で察したのだろうか。(別におまえのせいで、あきらめたんじゃないがの!)


「棗田先輩は3年の俺の姉ちゃんを知ってますか?」


「えっ。じゃあ2組の藤本昌子さんがマサキ君のお姉さんなの」


「お、お、俺の姉ちゃんを知っとるんですか?」


 藤本が喜ぶ、喜ぶ。


「うん、別に友達ってわけじゃないんだけど、

マサキ君のお姉さんって、すごい美人なのよ」とワシの方に言う。


 藤本が喜ぶ、喜ぶ。


「そういえば、マサキ君もけっこう二枚目だもんね」


 藤本が……。


 先輩方、心配しないでください。


 棗田先輩が、このクラブにいる限り藤本は無害です。


***当時の後書き


まあ、最初の練習からハードにはしませんよね。

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