9.結果
世界は順調に育っている。
緑色の樹木も増えている。
ただ、気温が随分上昇している。太陽の時間を増やした影響だ。
生物たちが暑さでバテているのがモニターから確認できる。
「熱射病とか日射病だよな・・・」
神として俺も心配だ。
「雨でも降らせるか・・・」
簡単だ。
部屋の台所、蛇口から出る水で世界に水を遣ることができる。
なお、初めは小汚いと驚いたこの部屋だが、今は気にならない。
この世界には、他の世界から、人間以外にモノが漂着することがある。
恐らく、以前にこの部屋にいた者たちが、それらをここに集めたのだろう。
確かに俺も、食料など食べたい。神に食事が必要なくてもだ。元いた世界の文化は懐かしい。
とはいえ、俺が回収できたのはサッカーボールぐらいだが。
なお一方、ゴミの廃棄方法は分からない。
だから、この部屋の状況はそういう理由からも来ているんだろう。
まぁ、人のゴミを綺麗にするほどの綺麗好きでもないので、俺の方が部屋の状況に馴染んだのだ。
さて。雨だ。
俺は台所に立った。
蛇口をひねり、コップに受ける。
これを世界に流してやれば世界にとって雨に変わる。
あ。
良い事を閃いた。
俺は、台所に転がっていた、半分のレモンを取り上げる。
丁度いい。
搾ってコップの中に果汁を足してやろう。
疲れているものたちに、爽やかな恵みの雨になる。
皆、喜ぶだろう。
***
降らせた雨に、世界の皆が驚いた。
その様子に、俺はアッと気が付いた。
酸性雨! 酸性雨を降らせてしまった!
レモンの果汁など入れなければ良かった!
急いで中和しなければ、世界が酸で痛む! 溶ける!
俺は急いでコップに新たな水を注ぎ、部屋に転がっていた洗剤を注いだ。
酸性を中和できる、アルカリ性の水ができるからだ。
強く多く降らせる。
瞬く間に緑が枯れた。世界が茶色く変色した。
おかしい。失敗した。
しまった、急いで量を誤った。それに強く降らせすぎた。
手を打たなければ、世界が割れ始めている。接着剤は。
焦っている間にもモニターの数値がぐんぐん減っていくのが見えた。生命の数だ。
まずい。
手を打たないと。
栄養を入れれば良いか? 違う、これじゃない、こっちだった
戻らない。腐りだした。どうして、何をすれば。
ぐんぐん、数値が減っていく。
目が離せない。
最後の一人が映し出される。それしかもう残っていない。
『あぁ』
力尽きた一声が。
最後の住民、悪鬼が、身体を溶かしながら茶色い大地に倒れ込んだのを見た。
絶望した。
頭を抱える。立っていられない。
こんなはずじゃなかった。
俺は、壊そうなんて考え無かった!
こんな事望まなかった!!
視界が狭まる。
目の前が、真っ暗だ。