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神の塔  作者: 天川ひつじ
9/10

9.結果

世界は順調に育っている。

緑色の樹木も増えている。


ただ、気温が随分上昇している。太陽の時間を増やした影響だ。

生物たちが暑さでバテているのがモニターから確認できる。


「熱射病とか日射病だよな・・・」

神として俺も心配だ。


「雨でも降らせるか・・・」


簡単だ。

部屋の台所、蛇口から出る水で世界に水を遣ることができる。


なお、初めは小汚いと驚いたこの部屋だが、今は気にならない。


この世界には、他の世界から、人間以外にモノが漂着することがある。

恐らく、以前にこの部屋にいた者たちが、それらをここに集めたのだろう。

確かに俺も、食料など食べたい。神に食事が必要なくてもだ。元いた世界の文化は懐かしい。

とはいえ、俺が回収できたのはサッカーボールぐらいだが。


なお一方、ゴミの廃棄方法は分からない。

だから、この部屋の状況はそういう理由からも来ているんだろう。

まぁ、人のゴミを綺麗にするほどの綺麗好きでもないので、俺の方が部屋の状況に馴染んだのだ。


さて。雨だ。

俺は台所に立った。

蛇口をひねり、コップに受ける。

これを世界に流してやれば世界にとって雨に変わる。


あ。


良い事を閃いた。


俺は、台所に転がっていた、半分のレモンを取り上げる。

丁度いい。

搾ってコップの中に果汁を足してやろう。


疲れているものたちに、爽やかな恵みの雨になる。

皆、喜ぶだろう。


***


降らせた雨に、世界の皆が驚いた。

その様子に、俺はアッと気が付いた。


酸性雨! 酸性雨を降らせてしまった!


レモンの果汁など入れなければ良かった!

急いで中和しなければ、世界が酸で痛む! 溶ける!


俺は急いでコップに新たな水を注ぎ、部屋に転がっていた洗剤を注いだ。

酸性を中和できる、アルカリ性の水ができるからだ。

強く多く降らせる。


瞬く間に緑が枯れた。世界が茶色く変色した。

おかしい。失敗した。


しまった、急いで量を誤った。それに強く降らせすぎた。

手を打たなければ、世界が割れ始めている。接着剤は。


焦っている間にもモニターの数値がぐんぐん減っていくのが見えた。生命の数だ。

まずい。

手を打たないと。

栄養を入れれば良いか? 違う、これじゃない、こっちだった


戻らない。腐りだした。どうして、何をすれば。

ぐんぐん、数値が減っていく。

目が離せない。


最後の一人が映し出される。それしかもう残っていない。


『あぁ』

力尽きた一声が。

最後の住民、悪鬼が、身体を溶かしながら茶色い大地に倒れ込んだのを見た。


絶望した。

頭を抱える。立っていられない。


こんなはずじゃなかった。


俺は、壊そうなんて考え無かった!


こんな事望まなかった!!


視界が狭まる。


目の前が、真っ暗だ。

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