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神の塔  作者: 天川ひつじ
5/10

5.悪魔が

皆のために声を出しながら俺も駆け下りる。


誰かが死ぬ。悪魔に追われている時点で確定している。

まとまっていた方が大勢死ぬ。バラバラに散らなければ大勢死ぬ。

後方、酷い悲鳴が聞こえてきた。


俺は、向こう側に見える螺旋階段に飛び移る。


ガシャーン!


度肝を抜く、大きな着地音が響いた。


ハッと背後を振り返ると、音に気付いた悪魔が顔を上げてこちらを見た。


そして、悪魔は捕まえていた誰かをゴミのように投げ捨てた。


ガバリ、と悪魔の顔部分が大きく割れる。滴る赤が現れた。

まるで黒い岩石の中の灼熱の溶岩。悪魔の口だ。


恐怖で全身の毛が逆立った。


「お前か!」

と悪魔が叫んだ。

そしてバネのような脚力で、俺の移った螺旋階段に飛び乗ってきた。


ガシャーン!

大きな着地音が響く。俺より随分と上の位置。だけど俺の位置も大きく揺れ、俺はその衝撃で我に返った。


完全に目をつけられた。リーダーだと認識された。


死にたくない。

こんな訳の分からない場所で、訳の分からないまま死ねるか。


駆け下りる。

追ってくる。

飛び移る。

部屋の陰に入る。視界から逃れる。良い道はないか必死で、瞬間的に決断し続けて逃げる。違う未来があるはずだ。


駄目だ、振り切れない。

完全に狙われている。


どうすれば良い。逃げきれない。

恐怖で涙がにじむ。


方法がない。


・・・あっ


それはまるで奇跡的な啓示だった。閃くように思い出した。

脳裏に、観音開きの大きな扉が浮かんでいる。


『禁断の扉』

そう呼ばれ続けている場所。決して開けてはいけないと言われているもの。


丁度今、この螺旋階段を降りていけば、ある。


俺は衣服の上から、胸の位置にぶら下がっているカギを片手で握りしめた。ある。カギがある。


悪魔の手にかかるのならばいっそ。悪魔さえも手にかけることのできる存在を封じ込めたという、あの、扉を・・・!


俺は走った。

悪魔が迫っている。

胸元にぶら下がるカギを衣服の中から取り出し握り込んで走る。


『禁断の扉』にたどり着いた。

ドアノブのような場所が光って見える。俺は十字のカギを押し付けた。


「それを開けるなぁあああっ! それは『神の塔』さえ飲み込むぞっ!!」

俺の行為に、悪魔が叫んだ。

恐怖で立ちすくみそうになったのを、奮い立ってまた駆け出す。


扉は開いたのか。何かが現れたのか。分からない。


だが、悪魔が追ってこない。足止めできている。


確実に、俺は封印を解いている。

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