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イラストとビールと女と男

わたし田中エリはどこにでもいる絵が得意な事以外は平均的な小学生。


苦手な科目は算数で得意科目はもちろん美術。

将来の目標はイラストレーター。


そんな私にもいつかは大好きな漫画みたいにステキな王子様が迎えに来てくれるの。



あれから時は経ち、私は現在イラストレーターになる事もなく、もちろんステキな王子様も迎えに来ない。


ただのOLだった。


今は親に雨漏りがしてきたから家を建て直すと呼び出され実家の部屋の片づけをしている。


そこで古いダンボールの中から出てきたのが、冒頭の黒歴史だ。


「おいおい、小学生の私。

なんて事をしてくれてんだ。

折角の休日に部屋の片づけをしてる彼氏も居ない喪女をそんなに責めるなよ。」

っと。


いつかステキな王子様がと思っていたのに、現実の男なんて最悪よねとオタクに変わる。

そしてもう私なんて…から、いつのまにかどうせアニメのキャラとは付き合えないなら、せめて好きなキャラ男様とキャラ男君がくっついて欲しいと、変わるまでそんなに時間はかからなかった。


部屋の片づけを終えた私は明日の仕事に備えてさっさとアパートへ帰る。


手にはコンビニの唐揚げとビール。


今も惰性で続けているイラストサイトに自分の絵をアップして飲んで寝る。


今日もそうなるはずだった私はパソコンを立ち上げて固まる。


高校の頃のクラスメートの男子から私宛に一通のメールが届いていたのだ。


「今時メール?今の私の連絡先知らない奴からの連絡なんてどうせ宗教の勧誘かねずみ講かなんかでしょ。」


そこにはこう書かれていた。


久しぶり俺同じクラスだった竜介。

お前絵上手くてサイトに投稿してたりしてたよね?

今趣味で小説書いたんだけど良かったら挿絵描いてくんね?時間あったらでいいんだけど。もちろんちゃんと少しはお金も渡すよ。


添付されたアドレスは小説投稿サイトで、悔しい事に何年もやってる私のイラストサイトより閲覧数が多かった。


「はぁ〜なるほど、ファングット1500か。

私にイラスト付けてもらって目立ってファンを増やして、いずれはどっかの会社から出版してもらうつもりね。」


竜介君…、正直あまり覚えてない。

なんか良い人だった気がする。


要は記憶に残らない良くも悪くもないどうでも良い人だ。


普段だったら当然無視する所だが、掃除中にあんな物を見つけた後だったせいか返事を返してしまった。


懐かし昔話しや誰が結婚して離婚したとか話しが盛り上がり次の金曜日に会う約束をしてしまった。


しまった…、洋服買って美容室にも行かなきゃならないじゃないか!


お金がもったいないのでとりあえず美容室だけ行って、普段の仕事着で会いに行く事にした。



「あっ、もしかしてエリちゃん?」


待ち合わせの場所に現れたのは当然王子様風のイケメンでもなく、なんとなく小ざっぱりした清潔感だけは保ってるありがちなスーツ姿の男だった。


変わってねーなこいつ。

が、第一印象だった。

まあ悪いしちょっとは気を使ってやるか。


「竜介君?わあ、変わったね。

ちょっと大人っぽくなったんじゃない。」


「そっそうか?エリちゃんは若いな全然変わってないな。」


若いなとか変わってないなとか。

良くある言葉を並べて失礼な男だ。


変わってない訳ないだろ。

私だって一応OLだ、社会経験積んで成長してんだ。


可愛くなったねと言えとは言わないが、せめて良い女になったとか仕事出来そうとか言えよ。


なんであの時会う約束をしちゃったんだろ。

あー、なんか帰ってビール飲みたい。


「今日はいきなり誘っちゃってごめんね。

俺大学も男だらけのサッカーサークルに入ってたし、絵が描ける友達なんていないんだ。」


男だらけのサッカーサークル!

このワードいいね。

次のイラストの題材にしよう。


「エリちゃんお酒飲める?

この近くにちょっと良いお店あるんだけどそこで良い?ちょっとは高いけどもちろん俺が奢るし。」


お酒飲める?、ちょっと良いお店、奢ってくれる…。


ああっ、ごめんね。

私の頭の中、男だらけのサッカーサークルだったよ。

こんな私をちょっと良いお店をわざわざリサーチして奢りで飲ませるなんて狙ってるな。

なかなか見る目のある良い男じゃないか。


「うん行こう。少しだけなら飲めるよ。」


こだわった作りの個人店で美味しい料理に美味しいお酒。

私達はまた懐かしの話しをしながら少し飲んだ。


「そういえば小説読んでくれた?」


「うん、もちろん(途中まで)読んだよ。

結構面白かった。」


「ほんと?嬉しいな。

俺さ 絵とか描けないからエリちゃんに挿絵描いてもらいたいんだ。

ちなみに一枚描くのにどれくらい時間かかるの?時間ある時でいいから頼める?」


「私が絵描けるって、覚えててくれたんだ。」


なんか嬉しいな。


「もちろん。なんか表彰されてたし、運動会の看板もうちのクラス評判良かったしな。」


そうなんだあ、覚えてたのか。


「ものによって違うけど、速い人だと構成10分で色塗りに10分くらいかな。

遅い人だと構成1時間でそこから完成まで3時間くらいかな。」


「そんなにかかるのかー。

うーん、今の所ただの趣味の小説だし、時給1000円の技術料500円だとして、そんなに出せないけど一枚6千円でいいか?」


私の絵が一枚6千円っ!


確かに相場より安いけどプロじゃないし。

勢いでちゃっちゃと描いちゃうタイプだからそんなに時間かからないし。


第一に絵描いてお金貰った事なんてないよ。

あ〜どうしよう…。


「私プロじゃないし友達だから一枚百円でいいよ。」


「ほんと?ありがとう。

実は自分の作品が書籍化されるのが夢なんだ。

書籍化されたらもっとパーと飲もうな。」


「うん、応援するよ。」


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