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第2話 目覚め

ネタが尽きるまで毎日20時更新予定!

 目を覚ました時、俺の目には天井が映る。

 薄暗い部屋の天井は木の梁と板でできた古汚れた天井だった。

 硬いベッドの上に寝ていた俺は体を起こす。


 頭が痛い。ズキズキと頭が痛む。


 しばらく痛みが引くのを待って、俺はベッドから降りた。


「どこだ? ここ」


 一人用のベッドは二つあり、小さな丸テーブルが一つあるだけのさほど大きくない部屋だった。

 古い西洋のような部屋造り。壁は石でできているようだが、床は板張りだ。

 靴を履いて部屋には入るらしく、板は土などの汚れや靴跡が見える。

 窓を開け,薄暗い外の景色を見た俺は思わず、つぶやいた。


「どこだ? ここ」


 先ほどと同じセリフを吐く自分に苦笑してしまう。

 窓の外は中世ヨーロッパさながら、レンガ造りの家々の間には舗装のされていない道には色とりどりの髪の人々が楽しそうに話しながら歩いていた。

 その服はワンピースを腰の紐で止めた簡易的な服装がほとんどだ。

 中には皮や金属の防具や腰に剣を持っている女性もちらほら見える。

 見覚えのない部屋,見覚えのない景色。

 

 夢か?


 明晰夢めいせきむは俺には起こらない。

 過去に何度か夢の中で夢と認識した途端に目が覚めた。


 美人なお姉ちゃんが裸でドアから入ってくる!


 ピクリとも動かないドアを見て、確信する。やはり夢ではない。

 しかし,このままベッドに腰掛けていても状況は分からない。情報が欲しい。情報が無いことには何の判断も出せない。


 とりあえず、部屋を出た俺の耳に階下から騒がしい声が聞こえてくる。


 一階は酒場か。


 俺は様子を見ながら階段を下りる。

 木のテーブルが十卓ほどありカウンターもある、広い店内には活気があふれていた。

 テーブルは七割ほど埋まっており、みんな食事や飲み物を飲んでいる。

 店員らしい男性があわただしく、木の大きなジョッキをいくつも抱えて歩き回っていた。


「お~い。婿殿」


 階段の途中で酒場全体を見回していると、椅子に座っている男が俺に手を振りながら声をかけてくる。

 八割が女性。少ない男性もほとんどが女性と一緒の中、声をかけて来た男は一人で座っていた。

 年は二十歳過ぎだろうか? 椅子に座っていても大柄と分かるマントを羽織った男は目立っていた。


「お~い! 婿殿! こっちじゃ」


 俺が無視して周りを見回しているとより一層大きな声で、こちらをまっすぐ見据えて手を振っている。

 黒髪に無精ひげを生やした偉丈夫と言った顔の男は早くこっちに来いと手を振る。


 どうやら男は俺のことを知っているようだ。

 この男が何か知っているかもしれない。

 他にとっかかりがない以上、まずは男から情報を得るしかないのか。


 四人掛けの木のテーブルをはさんで、男の前に立った。


「初めまして……ですよね」

「ああ、初めましてじゃ、婿殿。儂の名前はムサシマル。まあ、座ってゆっくりと話をしないか? どうだ、腹は空いていないか?」


 ムサシマルはテーブルの上に置かれた木の器に入った煮込み料理をその武骨な左手で指さしながら、俺に席に着くように促した。


「私の名前は竜ヶ峰(りゅうがみね)清人(きよと)です。私もいろいろとお聞きしたいことがありますが、まず……」


 俺はマントに隠れたムサシマルの右手を指さした。


「そのマントの下で物騒なものを握っている右手を、テーブルの上に出していただけないですかね」


 ムサシマルはその無精ひげを蓄えた口元をニッと吊り上げ、マントの下から右手をテーブルの上に置いた。

 その時、マントの陰に小さな柄がちらりと見えた。


「これでいいかね」

「もう一つ、席を移動しませんか? あちらの窓に近いテーブルに……できれば私が窓際の席でお願いしたいのですが」


 階段を降りるときにあたりをつけていた、窓から外に逃げやすい席を指さした。


「わははは。いいのう。それくらいの用心深さはないとな。で、次はこの料理と飲み物の毒見を儂がやっておこうか?」


 ムサシマルの表情が崩れ、子供のような笑顔になった。


「お主、酒は飲めるか?」

「飲めなくはないですが、今日は遠慮します」


 俺の要求通り、二人で席を移った。

 イスに座る前に窓をいつでも開けられるように確認をし、ムサシマルが着席するのを確認してから硬い木の椅子に座る。


「腹の探り合いはやめて話がしたいんじゃが……もともと儂はそういうのが苦手でな。単刀直入に聞こう。お主、どうやってこの世界に来た? そして帰る方法を知っているか?」

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