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06 入学試験を受ければいいらしい

 デールは俺に負けたショックのせいで寝込んでしまった。

 だが同じく負けたはずの父さんは、勝負が終わった直後こそ落ち込んでいたが、徐々にハッスルしだし、母さんと一緒に俺の強さの秘密を問い詰めてきた。


「さあ、どうやって強くなったんだ!?」


「お母さんが知らないうちに剣の達人に習ったの!? 一体いつ!」


 信じてくれないだろうなぁと思いつつ、俺は改めて正直に話すことにした。


「実はね。俺の前世は塔の七層まで到達した冒険者なんだ。その記憶を保ったまま転生してきたんだ」


「そんな話を信じると思ったのか!?」


「作り話ならもうちょっと説得力があるのにしなさい!」


 両親に怒られてしまった。

 実際、俺だって転生などというものを信じていなかったのだ。あのナイフを突き刺す瞬間だって半信半疑だった。


「で、どんな修行をしたんだ?」


 父さんが改めて身を乗り出してくる。


「どんなって言われても。さっき言ったように毎日コツコツだよ。母さんが証人になってくれるだろ? 俺は一人で家を離れたりしてない。庭で素振りしていただけだ」


「そうよねぇ……私に隠れて剣の達人と会って修行していたってのは無理がある話ねぇ……」


 母さんは頬に手を当て、不思議そうに言う。


「するとラグナ。お前は毎日、一人で素振りをしていたら強くなったと言うのか?」


「まあ、そういうことになるかな」


 前世の話を信じてもらえないなら、そう説明するしかない。


「うーん……信じられん。しかし現に俺より強かったからなぁ」


「とんでもない天才なのね」


「そういうことだな……『剣豪の印』どころか『剣士の印』もないのに。印とは無関係に才能があるってことか」


「そんなことありえるの?」


「現に強いんだから仕方ないだろ」


「そうよねぇ……」


 両親は首をひねりつつも、俺が天才だという結論で一応は納得した。


「よし、ラグナ。お前は冒険者になりたいんだな? それも一層や二層で満足せず、三層から先を目指すんだな?」


「目指すのは最上層だよ」


「分かった。なら王立冒険者学校に入れ!」


「王立冒険者学校?」


 初めて聞く名前だった。

 名前からして冒険者を育てる学校なのだろう。

 しかし学校などで学ばなくても、実戦の場で鍛えたほうが早いのではないか。


「あの学校の教師はほとんどがレベル2だ。中にはレベル3もいる」


「へえ。すると父さんよりも強い先生がいるってことだね」


「悔しいがそういうことだ。何せこの国は、塔のアイテムがないと成り立たない。だから塔で活動する冒険者の育成は重要なんだ。当然、優秀な冒険者を教師として雇っている」


「父さんは雇われなかったの?」


「俺はな……実は一度誘われたことがあるんだが……教えるよりも戦っているほうが性に合う」


 父さんは照れくさそうに言った。

 確かに、教壇に立っているより、前線で剣を振り回しているほうが似合いそうだ。


「冒険者学校の入学試験は厳しい。卒業するのはもっと厳しい。だが卒業生は皆強いぞ。実は父さんも卒業生なんだ」


「へえ。でも生意気なこと言うけど、卒業生の父さんに勝った俺が、今からその学校に入って学ぶことあるかな?」


「言ったはずだ。レベル3の先生もいると。その人は本当に強い。ラグナでも勝てないぞ」


「俺でも勝てない、か」


 父さんが言うなら、そうなのかもしれない。

 今日は技術を駆使して父さんに一勝したが、やはりレベル1の力でレベル2と戦うのは歯ごたえがあった。それがレベル3ともなれば、難易度は更に跳ね上がる。

 レベル3で、なおかつ父さん以上の達人だとすれば、確かに勝つのは難しい。


「入学試験は一月だ。今は七月だから半年後だな。どうだ、受けるか?」


「そうだな……もし入ってみて学ぶことがなかったら退学すればいいんだし」


「おいおい。試験を受ける前からやめることを考えるなよ」


「ごめん。確かにそうだね」


 ちょっと生意気になりすぎていた。

 それに、俺は剣技には自信がある。だが魔法はド素人。二週目の人生は魔法を主体に戦い、剣も魔法も使えるオールラウンダーを目指すつもりだ。

 独学で魔法を学ぶより、学校に入って優秀な先生に教えてもらったほうが効率がいいだろう。


 それから。

 一緒に塔を攻略する仲間を探すという目的も忘れてはいけない。

 もしかしたら、その冒険者学校でいい出会いがあるかも。


「よし。入学試験、受けるよ」


「そう言ってくれると思ったぜ!」


 父さんは嬉しそうに笑った。

 一方、母さんは。


「王立冒険者学園って、ここからちょっと遠いのよねぇ……寮住まいになるから、ラグナとたまにしか会えなくなっちゃうわ。さみしい……」


 と、子離れしたくない様子だ。

 だが、俺が冒険者として本格的に活動を始めたら、何年も塔に籠もりっぱなしだ。いや、もしかしたら二度とここに帰ってこないかもしれない。

 遅かれ早かれ、子離れはしてもらわないと。


 それにしても、試験は一月か……。

 俺の誕生日は十一月だから、試験を受けるとき七歳になっている。

 つまり『状態異常:子供』が解除され、前世から引き継いだステータスを完全に使えるようになっているわけだ。


 うん。絶対に合格するな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前の国と比べて底辺で戦う国で最上階を目指す仲間が見つかるのだろうか?素質のある若者を自分が指導する形、それを許す信頼関係が無いと無理かな。
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