22 魔法効果付与に詳しくなった
レベル2になったので、レベル上げはお休みだ。
どのみち、日帰りできる範囲のモンスターを倒してレベル上げするのは難しいのだ。
たまたま『凄いトウガラシ』が大量に売っていたからよかったものの、あんなラッキーはそうそうないだろう。
仮にあったとして、レベル3になるには、あのトウガラシが五十個くらい必要だろう。
そんな金はないし、そもそも父さんいわく、あまり塔の外で売っているのを見たことないらしいので、やはりレベル上げはお休みだ。
なので俺は、昨日習得した魔法をじっくり研究することにした。
自室のベッドに寝転びながら、説明文を読む。
まずは二つの魔法効果付与をチェックしよう。
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・冷気耐性付与
説明:消費MPは20。アイテムに冷気耐性の属性を与える。その効果は魔法付与のランクに応じて変わる。低いランクでは防寒具程度の効果しかないが、高ランクだと氷系魔法の威力を低減させ、場合によっては無効化する。冷気耐性を付与されたアイテムを複数装備しても、効果は重複しない。もっともランクの高い効果が適用される。
・炎耐性付与
説明:消費MPは20。アイテムに炎耐性の属性を与える。その効果は魔法付与のランクに応じて変わる。低いランクでは暑さを和らげる程度の効果しかないが、高ランクだと炎系魔法の威力を低減させ、場合によっては無効化する。炎耐性を付与されたアイテムを複数装備しても、効果は重複しない。もっともランクの高い効果が適用される。
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二つとも『複数装備しても、効果は重複しない』と書いてある。
つまり人間が装備しないと、効果を発揮しないということも読み取れる。
例えば、この家に冷気耐性を付与したとしよう。
今は二月で、かなり寒い。
もし家に冷気耐性があれば、部屋が暖かくなるはずだ。
俺は試しに、壁に向かって冷気耐性付与を行ってみた。
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MP:140/160
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よし。
MPが消費されたので、成功だ。
魔法付与を行ったアイテムには名前をつけることができるのだが、そのメッセージもちゃんと出てきた。
家族全体の家なので『シンフィールド家の屋敷』という名前にしておこう。
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名前:シンフィールド家の屋敷
説明:『冷気耐性:F』の効果を持つ。
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ステータス鑑定で確かめても、しっかり魔法付与が成功していた。
それにしても簡素な説明文だ。
まあ、この家は塔由来のアイテムではないので仕方がない。
何せその辺の物を鑑定しても、『名前:なし』『説明:なし』と寂しい表示しかでてこない。こうしてテキストが表示されるだけマシである。
「温かく……ならないな」
家に冷気耐性付与を施してしばらく待ってみたが、室温が上昇する気配はなかった。
やはり人間が装備しないと駄目なのだろう。
次は、今着ている上着に冷気耐性を付与する。
「おお……ポカポカしてきた……」
上半身だけでなく、下半身も温かい。
逆にズボンにも冷気耐性を付与してみたが、効果は重複しなかった。やはり説明文は正しい。
よし。
次は、今覚えている四種類の魔法付与を、一つのアイテムに集中してかけてみよう。
俺は上着に『炎耐性』『強度上昇』『切れ味上昇』をかけようとした。
が、『強度上昇』を付与しようとしたところで、メッセージが表示された。
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このアイテムには既に魔法効果が二つ付与されています。三つ以上付与する条件を満たしていません。
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なんと。
三つ以上付与するには、何か条件を満たさないといけないのか。
一度付与した魔法効果を消す方法も知らないし……これは慎重に考えて付与していったほうがいいな。
すると、最初から『HP+5』の魔法効果を持つ『グリーン・サーペントの宝石』には、あと一つしか付与できないということか?
少しもったいないが、実験だ。
まずは『炎耐性』を付与。
次に『冷気耐性』を付与しようとしたら、さっきと同じメッセージが現われた。
なるほど。できることと、できないことが分かってきたぞ。
次は、残りの二つの説明文をチェックしてみよう。
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・フリーズウェーブ
説明:消費MPは3。自分を中心に冷気を広げる。その距離と威力は調整可能。ただし氷魔法のランクによって上限がある。
・バキューム
説明:消費MPは3。周囲の物を吸い込む空気の流れを作り出す。吸引力は調整可能。ただし風魔法のランクによって上限がある。
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予想通りの内容だな。
フリーズウェーブで周りの地面をツルツルにして、バキュームで相手を転ばせたり引き寄せたりといった使い方ができそうだ。
明日から色々と試してみよう。
これが普通のレベル2だったらMPが20くらいなので、魔法を一日に数発しか撃てない。
だが俺はMP160なので、何十回も練習できる。
魔法も剣と同じで、反復練習が大切だ。
威力そのものが同じでも、使い方を体に染みつかせると素早く撃てる。
しかし、こうやって考えてみると、普通の魔法使いは大変だな。
練習したくても、MPが足りなくてできないのだから。
MPを回復するアイテムを大量に用意できれば話は別だが、俺のように毎日毎日、何十発も魔法を使ったら、アイテム代で破産してしまいそうだ。
冒険者学校に行けば、少ないMPでも効率的な練習法とか教えてくれるのだろうか。
あるいは、生徒のためにMP回復アイテムを用意しているのかもしれない。
「入学まであと二ヶ月くらいだ……それまでは魔法の練習をひたすらやっておくか」
俺は剣技には自信がある。
しかし魔法は最近覚えたばかりだ。
いくら人より多く練習できると言っても、やはり長年魔法使いをやっている者には敵わないだろう。
その差を少しでも縮めるのだ。
可能なら、在学中に教師を追い抜きたい。