21 レベル2になった!
グリーン・サーペントを二十匹倒したら、宝石を四個ドロップした。
凄い。
これを全て売ったら、七十万ディーネ以上になる……。
もっとも、貴重だから高いのであり、この調子で入手して市場に流したら、価格が下落するかもしれない。
それより、家族へのプレゼントにしよう。
俺は帰り道、スライム三十匹に、ブルー・ゴーレム十体を倒す。
すると『スライム玉』と『浄化の石』を二つずつ手に入れた。
『スライム玉』というのは、握りこぶし大で半透明のぶよぶよした物体だ。
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名前:スライム玉
説明:スライムの心臓。見た目は不気味だが、甘くて美味しい。放っておくと干からびてしまうので、早めに食べることをオススメする。
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スライムには様々な亜種がいて、それぞれ違う味のスライム玉をドロップする。
一層にいるスライムのを食べるのは初めてだ。
食べてみると本当に甘くて美味しかったので、あっという間に二つともなくなってしまった。
『浄化の石』は小石程度の大きさだった。
やはり昨日ドロップした物は、特別な大きさのようだ。
ブルー・ゴーレムの強さは同じだったが……その辺は運だろう。
しかし、俺はすでに『グリーン・サーペント』を合計二十一体も倒している。
そろそろレベル上がってもいい頃合いなんだけどなぁ。
早くレベル2にならないかなぁ……なんて考えながら、塔を出る直前、近くにいたスライムをアイシクルアローでぺしっと倒した。
すると――。
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レベル2になりました。
『フリーズウェーブ』を習得しました。
『バキューム』を習得しました。
『冷気耐性付与』を習得しました。
『炎耐性付与』を習得しました。
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目の前にテキストが現われた!
うぉぉぉっ、やったぁぁぁ!
ついに、ついに……長い道のりだった!
いや、冷静に考えると、さほど長い道のりじゃないな。
だってレベル上げ始めたの昨日だし。
むしろ早すぎる。
前世はベテラン冒険者たちに手伝ってもらったのに、それでもレベル1から2になるのに、半年くらいかかったのだ。
今回は『凄いトウガラシ』が二十個も手に入り、効率よく狩りを行えたのがよかった。
こんなサクサクしたレベル上げは初めてだ。
まあ、前世のステータスを引き継いでいるからできたことなんだけど。
普通ならトウガラシが二十個あるからといって、一日で二十匹もグリーン・サーペントを狩れない。
さあ、成長した俺のステータスは?
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名前:ラグナ・シンフィールド
レベル:2
・基礎パラメーター
HP:757
MP:160
筋力:634
耐久力:461
俊敏性:1003
持久力:589
・習得スキルランク
回復魔法:C
氷魔法:F
風魔法:F
魔法付与:F
ステータス鑑定:A
ステータス隠匿:B
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俊敏性が千を超えた……普通じゃありえない四桁だ!
塔の外では『無能の印』と呼ばれている『上限突破の印』のおかげである。
それ以外のパラメーターも順調に上がっている。
特にMPは一気に7も増えた。
魔法を使いまくったおかげだろう。
そして覚えたばかりの『氷魔法』『風魔法』『魔法付与』がGからFにランクアップした。
これで魔法の威力が上がるはずだ。それにさっきレベルアップのお知らせとともに、新しく覚えた魔法も表示されていた。
俺、もう魔法剣士を名乗ってもいいかもしれないな。
とりあえず、試しに……。
「フリーズウェーブ!」
俺を中心に冷気が広がり、半径五メートレくらいの草むらが凍ってしまった。
「バキューム!」
目の前に、エアロアタックによく似た空気の塊が発生した。
ただし風をまき散らすのではなく、逆に吸い込んでいる。
俺の服や髪が、その空間に向かってなびいている。
「ふむふむ。どっちも便利そうだ。『冷気耐性付与』と『炎耐性付与』は名前の通りだな。あとでじっくり説明文を読もう」
本当は今からでもじっくり読み、魔法の練習をやりまくりたいのだが、そろそろ帰らないと夕飯に間に合わない。
まだ七歳の俺は、親の言うことにちゃんと従うのである。
そして塔を出た俺は、早速、今朝と同じ店に『浄化の石』を売りに行った。
「この大きさなら、一つ百ディーネだな」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよ。大きさの比率から考えて、妥当だろ?」
確かに、今朝売り飛ばしたメロンのような大きさの石と、この小石を比べて考えると、そんなもんかもしれない。
「じゃあ、その値段で」
二百ディーネを手に入れた俺は、宝石店に行く。
「あの。この緑の宝石を四つ、ペンダントにしてくれませんか?」
「ペンダントにすると言っても、台座の形とか材質で値段が変わるぜ」
「四つで二百ディーネの予算なんですが」
「じゃあ一番安いやつだな」
二百ディーネ払い、飾り気のない鉄製のペンダントを手に入れた。
しかし、そこにはめ込まれた『グリーン・サーペントの宝石』が美しく輝いているから問題ない。
ペンダントの一つは俺の物だ。
そして家に帰り、父さんと母さんに一つずつ渡す。
「いいのか、ラグナ。こんな貴重な物を……」
「そうよ。あなたが手に入れたんだから、あなたの物なのよ?」
「気にしないで。今までお世話になったから、ちょっとした恩返しだよ。たまには親孝行させてよ」
「ラグナは七歳なのに大人びてるなぁ……そういうことなら、ありがたく頂こう」
「ありがとう、ラグナ。ふふ、似合ってるかしら?」
父さんと母さんは、とても喜んでくれた。
そんな両親と俺の様子を部屋の隅っこから見つめている奴がいる。
兄のデールだ。
「兄さん」
「何だよ」
「はい。これは兄さんの分」
「え? お前……俺にもくれるのか?」
「うん。家族だし。兄さんにだけあげないわけにもいかないだろ?」
「そ、そうか……お前からもらっても、べ、別に嬉しくはないが……どうしてもというならもらってやる……!」
デールは何やら赤くなりながらペンダントを受け取り、装着した。
実はツンデレかな?