17 先生がヘタレだった
01話と02話を少し改稿しました
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名前:グリーン・サーペント
説明:一層にあるミナノ湖のヌシ。全長約二十メートレ。その巨体を活かした体当たりが得意技。一人で挑むのならばレベル5以上が望ましい。
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「うわぁぁっ、出たぁぁぁっ!」
「出たぁって、アラン先生が呼び出したんでしょう」
「そうだけど、まさかここまで大きいとは思わなかったんだよ!」
「まあ、確かに俺も驚きましたけど。大きいから強いとは限りませんし。頑張ってください」
「くそぉぉぉ、お前、七歳のくせに冷静過ぎるぞぉぉぉぉぉ!」
などと悲鳴を上げながらも、アラン先生は剣を構えた。
腰はひけていない。
ちゃんと臨戦態勢だ。
そんなアラン先生にグリーン・サーペントは向かってくる。
「おおおおおおお!」
アラン先生は敵の体当たりを剣で受け止める。
これが並のモンスターなら、体当たりの勢いで刃が突き刺さり、相手が傷ついていただろう。
しかしグリーン・サーペントのウロコは硬く、刃が通らない。
そしてアラン先生は吹き飛ばされ、転がっていく。
「うぉい、今のでHPが10も減ったぞ! やべぇよ、あと二発で死ぬじゃん!」
アラン先生は情けない声を出す。
印を持つ者は、致命的な傷を肩代わりしてくれる障壁が常に体の周りに張り巡らされている。
その障壁の残量をHPという。
このHPがある限り、骨折したり、大量出血するような傷は負わないのだ。
そして痛みや衝撃は、かなり緩和されて伝わってくる。
基本的にHPが残っていれば敵の攻撃で死ぬことはない。
試験の時に確認したアラン先生のHPは24。
グリーン・サーペントの体当たり一回で10減るなら、三発でアウトだ。
ゼロになるなら、障壁が消えるだけなのでまだいい。
しかし、体当たりを三回喰らうと、マイナス6だ。
障壁がない状態だと、1のダメージに相当する攻撃を食らっただけで、骨折したり内臓を痛めたりする。
マイナス6は完全に即死と思ったほうがいい。
つまりアラン先生は、あと一回しか体当たりを受けられない。
「アラン先生。ビビったら負けです。避けられない攻撃じゃありません。よく見て回避して、カウンターを打ち込むんです」
「お、おう!」
俺のアドバイスに従い、アラン先生はグリーン・サーペントの体当たりをギリギリで回避する。
よし。なかなかいい動体視力だ。伊達に教師をしていない。
そしてアラン先生の剣がグリーン・サーペントのウロコを切り裂く。
「よし! 出血させた! その調子で頑張ってください!」
俺は声援を送る。
「よし、じゃねーよ! こんだけ思いっきり切り込んでも、ほとんどダメージになってねーじゃんか!」
「百回くらい斬れば出血多量で死にますって」
「百回も斬る前に俺が死ぬ! やっぱ無理!」
アラン先生はグリーン・サーペントに背を向けて一目散に走って行った。
……なぜだ。
一回できたのだから、集中力さえ保てば百回できるはずだ。
途中で集中力が切れたから諦めるなら分かるが、なぜこのタイミングで?
これはもしかして、あれか。
ヘタレか!
「おーい、ラグナくん! 君も早く逃げるんだ! いくら君でもそいつには勝てない!」
「いや、勝てますよ。だいたい校長は、アラン先生でも頑張ればこいつに勝てると判断したから凄いトウガラシをくれたんでしょう? だったら俺が負けるわけありません」
「そ、そうか……ラグナくんは校長よりも強いんだったな……いや、しかし! いくら強くてもそう無防備にモンスターの前に立つんじゃない! モンスターは人間と違って会話できないんだぞ! 戦う前に挨拶とかしないんだからな!」
「分かってますよ」
そんな話をしているうちに、グリーン・サーペントは標的をアラン先生から俺に切り替え、突進してきた。
俺はそれをヒョイヒョイ避けつつ、アラン先生を見る。
「それで、こいつは俺が倒しちゃってもいいですか?」
「倒せ倒せ! 横で見ていて心臓に悪いから早く倒せ!」
「それでは……」
俺は背負った剣に手をかけようとして思いとどまる。
確かに剣を使えば一撃だが、俺は魔法のランクとMPを伸ばしたいのだ。
できるだけ魔法を使って戦おう。




