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忘れられた者  作者: 星がキタロウ
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笑顔を忘れてた者(編集、終1)

俺はまた少女の家を訪れていた。

そこで起こる老婆と少女の喧嘩俺にはどうしようもできなかった。そして、少女は家出をしてしまった。老婆に頼まれ仕方なく少女を迎えにいく俺。少女が寝ているためおんぶして少女の家に帰ることにした。

 夢美をおんぶして、あれからどのくらい歩いただろうか、最初は軽かったが、歩いているうちにまるで、米俵を運んでいるかのようになっていた。


 夢美を家に届けようとおんぶして歩いていると、背中のほうからかすかに声がした。

「行かないで...行かないで...私を...一人に...しないで」そう言い、夢美は俺に抱きついてきた。

「ちょ、お前...」何してんだ。

 と言おうと思ったが背中から伝わる夢美が震えが分かってしまったので黙っておいた。

 そして、そのままにしておいた。


 夕日が落ち鈴虫がリーンリンリンと泣き始めた頃に俺は、あの薄暗い、まるで人が住んでいない幽霊家ような家に着いた。


 俺は夢美をおんぶしたまま家の中に入る。

 老婆はちょうど薬を飲んでいるところだった。

「おや、すまないねえここまでおんぶしてきてくれたのかい」「いえ、彼女そんなに重くないですし、それにそんな距離がなかったので」

 と強がる嘘をつく。

 そういうと老婆は歯を見せて笑い

「本当に君は優しい少年だねえ」といった。


 俺は老婆に言われ夢美を老婆がいつも寝ているベットに寝かせた。

 本当にいくら経っても起きない。

 しかし、今では先ほどと違い気持ち良さそうに寝ている。

 そんな少女は美しかった。


「それでは、今日は帰ります」と言うと

「本当にありがとうねえ」と老婆が言ってきた。

 俺はそんなことないですよと答え、家を出て行った。

 すっかり真夜中である。


 風が吹いてきており、俺の少し濡れた背中が冷たくて寒かった。

 空にはもやもやとした雲がかかっている。

 明日は雨が降りそうだなそう思い俺は家に帰った。


 そして数日間俺は夢美の家を訪れなかった。

 いや、数日あっただけの人の家を毎日訪れるということはおかしいことである。

 訪れないことは当然だろう。

 しかし、それでも夢美が心配である。

 俺の頭の中の半分以上をそんなことを占めていた。


「~~~~~」なんだろう何か聞こえる。

「光~どうした」篤が声を俺にかけていた。


 そうだ、今は昼休みだった。

「あ~、ごめんどうした」そう言うと、篤は不安そうな顔をして「どうしたじゃねえ~よ。最近ずっと上の空になっている。何かあったのか」

「最近ちょっと調子が悪くてな」

「ここんとこずっと天気悪いからな。光は天気が悪いと調子悪くなるタイプなのか」

「ああ、そうかもしれない」夢美を送って以来ずっと天気も悪い、きっとそのせいでもあるだろう。

 今日もそのおかげで教室で昼食を取っている。

 これも、あの家にいけない理由のひとつとなっていた。


 何事もなく学校が終わる。

 俺は、あのいつもハイテンションなくるみにより、部活に入ることになった。

 そして今日から部活が始まる。

 部活を何にしたのかというと、剣道部になった。

 正直、剣道部に入るつもりは無かったが、どれに入ろうか迷っていたところ、くるみに部員がこのままだと部員不足で廃部になってしまう。

 と言われたので半強制的に入れられた。


 しかし、それはそれで良かったと思う。

 くるみに声をかけられなかったら、迷いに迷って結局、部活に入らなそうだったからである。

 今日は早速剣道の練習をするのではなく、まずは自己紹介をした。

 俺は最初から仕掛けるような自己紹介ではなく、あいつ普通なことしか言わない、つまらねー、と言われるようなぐらい普通な自己紹介をした。

 そして、先輩に胴着などの場所や注意事項などを言われ今日の部活は終わった。


 帰り道俺はくるみと一緒に帰っていた。

 ほかの剣道部と一緒に帰ろうとしたが、1年で剣道部に入ったのは、くるみと俺あとは、2人女子がいるだけだった。

 話したこともない人と(しかも女子と)帰ることは俺には到底できなかった。

 一人で帰ろうとしたところ、くるみに呼び止められ一緒に帰ることになったのである。


 俺は

「剣道部の女子と一緒に帰らず俺でよかったのか」と聞くと、「うん、それよりヒカルン、今日暇?」と言われた。


 確かに今日は、部活も思っていたよりもずっと早くに終わり、特に用事がなかったため暇だった。


「うん、まあ暇だけど」そう答えると、くるみはうれしそうな笑顔を浮かべて

「じゃあ今日みんなで入学祝に行かない」と言ってきた。


 中学時代などあまり遊ばなかった俺にとってクラスの誰かと食事を取ることは、今までにないほどわくわくした。


「ああ、もちろん。だけど、ほかのみんなは用事ないのか」

「うん、もう連絡とっているよ。そうだ、ヒカルン連絡交換しようよ。今ケータイ持っている?」

「ああ、持っているよ」

「おぬしも悪やのう」そうくるみは言ってきた。


(この学校では今時、携帯電話は常に持っておくべき必須アイテムにもかかわらず、使ってはいけないどころか、持ち込みも禁止されている。入学時それを聞いた俺は、一瞬入学をあきらめようかと思いもしたのである。)


 二人はバックから携帯電話を取り出し、連絡を交換し合った。食事だけでなく、連絡まで交換、しかも女子と。

 あまりのうれしさに夢とばかり思ってしまう。

 しかし、夢ではない。

 何かこの後よからぬ不運でも起こるのではないか、とも思ってしまった。

 集合場所と時間を教えてもらい、俺とくるみは別れた。


 くるみの姿が見えなくなると、俺は歓喜のあまり大声を出して家まで走った。


 家に帰り俺は早速準備に取り掛かる。

 まずは、着ていく服を考えた。

 しかし、そうはいっても始めたばかりの一人暮らし。

 必要最低限の物しか持って来ておらず、服の種類などほとんどなかった。

 それでも自分の中で一番満足のいく服を選ぶ。


 そして風呂に入り、金の準備のした。

 一応のため予想している金額よりも倍の金額を持っていくことにした。


 父から送ってもらっている金が入っているカードをそのまま持って行ってもいいのだが、落としてしまうことを考えると再発行の面倒なことや、気づかずに悪用されそうで持ち歩くことをやめていた。


 携帯電話を開いて時間を見ると約束の時間よりもまだかなりはやかった。

 もう少し家で時間を過ごしてもいいのだが、遅れてしまっては、申し訳ないということや、自分自身、とても浮かれていたということもあり、家を出て行った。


 今日食事をする場所は、本当はこの町でするつもりらしかったが、この町には、飲食店というもながほとんどないため、この町から降りて、海辺にある町に行くことにになっていた。


 早速電車に乗ろうとする。

 電車の便を見てみると、1~2時間に1本さすが田舎だと思った。

 俺は2両編成の電車に乗りその町に行く。

 やはりガラガラ、数人しか乗っていない。

 俺は荷物を隣に置き椅子に座る。

 広々として実にいい気分だ


 町へ着くと、携帯電話のマップ機能を使い、目的地まで行く。


 マップのおかげで、すぐにその店を見つけることができた。

 が、誰もいない。


 それもそのはず、俺がついた時間は、約束の時間の2時間以上前だったからである。

 このまま待って、時間を持て余すのは、どうも嫌だったので、ちょうどこの町には、帰ってきてから一度も来るたことがない。

 丁度いいので、町を回ることにした。


 特に行く場所もなく縦横無尽に俺は歩いた。

 さすがに歩き続けるのも大変なので、とりあえず近くの店に入ってみた。


 とにかく大きいスーパーのような店に入り、椅子にでも座り時間をつぶそうと思っていたが、この店は、スーパーではなく服屋だった。


 しかし、ちょうど着る服があまりなかったため店を回ってみた。服の種類は、派手な服やシンプルな服、アニメで出てくるような服など、たくさんの種類があった。

 その中には、俺の好みに合う服も何着かあった。

 幸いにも、多めに金を持ってきていたので、ズボンと服を1着ずつ買うことにした。


 その時あることが頭を横切る。

 そう夢美のことである。これまで、夢美の服は半そでに長ズボンという同じ服しか着ていなかった。

 また、その服もいつも洗っているようで汚れはなかったが、少し破れている所が何箇所かあった。

 夢美はあの服以外持っていないようである。


 機嫌を直してもらうのも含めて、服を送ることにした。

 そうしないと夢美に会えそうにもないからである。

 俺は女性の服がある場所に誰もいないことを確認して行ってみた。

 女性用の服にも、やはりさまざまな服があった。

 俺は夢美の身長を思い出す。

 そして、服を選んだ。

 できるだけ男性でも着れるような服、また夢美に似合いそうな服を選んだ。


 しかし、問題はここからである。

 この服を買うには必ずレジを通らなければならない。

 俺が着る予定の服を上にしてレジへ置いた。


 女性店員がレジを打ち始める。


 俺の服は難なく終わった。


 そして、夢美に渡すようの服。


 店員は不思議な顔をして

「お客様、こちらの商品はレディース物でございますよ」と言ってきた。

 子供服ではなく、それなりの少女が着る服である。

 俺が間違って気づかずに買ってしまったとでも思ったのであろう。

 がそれは、大きなお節介だった。


 俺は

「はい、大丈夫です」と答えておいた。

 店員は、不思議な顔をしながらまたレジを打つ。


 俺は財布から金を取り出し、服を買った。


 親が子供の服を買っていくならまだ、定員も納得をするだろう。

 しかし、俺はどう見ても大人には見えず学生に見える。

 そして、その男子学生が背丈がほとんど変わらない、女物の服を買っていく。

 確実に変態、そう思われただろう。

 まあ、仕方がないと思い、店員が先ほど買った服の入った袋を受けとり、俺は店を後にした。


 時間を見てみるとかなり時間が過ぎており、あと40分ほどだった。

 先ほど買った服を持ちコンビニまで行き、コンビニの宅配便で家まで送るようにした。

 しかし、俺は衝撃を受けた。

 こんなにも近い距離なのに費用がかなり高くかかるからだ。

 だが、このままコインロッカーなどに入れておくと、食事後にすっかり忘れ家に帰りそうだったので、ここは惜しまずに出した。


 コンビニを出ると、そろそろ良い時間だったので、あの店に行った。

 店の前には、まだ誰もいなかった。

 数分経ち、やっと来た。くるみと春花だった。

「お~、ヒカルン早いねえ」

「今着いたばっかりだよ」と嘘をついたが、口が裂けても浮かれて2時間以上前に来たとは、言えなかった。


 三人で話していると、残りの大輔と篤、康成、結月も来た。


 駅とは反対方向から彼らは歩いてくる、車だろうと俺は判断した。

「お、三人とも早いね」篤がそういうと

「私と春香は今着たばかりだけど、ヒカルンは私たちよりも早く来てたんだよ」にやりとしながら、こちらを向いてきた。

「俺も今着たばかりだよ」と惚けておいた。


「よ~しそれじゃあ、早速入ろう」くるみが先頭に立ち俺たちは店に入っていった。


 店は店前の風景や看板の印象から和風の落ち着いた店だと思っていたが、期待を裏切られ、肉の食べ放題店だった。


 晩御飯には少々早い時間だったのか、すんなりと入ることができた。

 指定の席へ連れて行かれてから、メニューが配られた。

 俺たちは牛と米を中心として、注文した。


 肉を焼きながら、くるみが

「グラスをみんな持って」と言い、俺たちは言われたように水やジュースの入ったグラスを持つ。

「それでは、入学を祝って かんぱーい」

「かんぱーい」俺たちの入学祝が始まった。


 そう言っても、違う場所にいるからといって別に話の内容が変わらず、変わっているのは食事の時間と場所だけだった。

「そういえば来週、高校初めてのテストだよね」と結月が言った。


 すると、楽しがっていた二人の男たちの空気が変わった。

「結月...それ以上しゃべるな」そう大輔が言った。

「あっ、そっか~二人って毎回赤点ぎりぎりだったね」そういつものやり返しのようにそう言うと、大輔が結月の頭を拳でぐりぐりとした。


「それ以上しゃべるなって言ったよな」

「ごめんごめん、痛いから離して」そういってやっと大輔は、結月の頭から手を離した。

「大輔が勉強しないのが悪いんだよ」とまた結月が勉強の話にすると、大輔が振り返る。

「おまえ、まだ言うのか」このままでは、けんかになりそうだった。

「ちょっと、二人共店の中だよ」すかさず春花が止めにかかる。

 すると、二人は身を引いた。

 委員長の中でもここまでしっかりとした委員長はいないだろう。

 改めて俺は春花を尊敬した。


 その後も楽しく食事をして、気づけばバイキングの終了時間ぎりぎりだった。

 俺達は、それぞれ2500円ずつ出し会計をした。


 店を出てすぐ、車だという天草姉弟と、一緒に来た篤、康成と別れる。

 そして残りの俺とくるみと春花は、駅へと向かった。


 駅までの帰り、くるみは

「はあ〜、美味しかったね。ついいっぱい食べちゃった」と満足そうに話している。

「くるみは、食べ過ぎだよ。それに、肉ばかり。そんなんじゃ体、悪くするよ」確かに肉ばかりだった。

 しかし、肉の食べ放題店で肉ばかりだというのは仕方のないことだろう。


「私達、丁度食べ盛りじゃん。ハルが逆に食べなさ過ぎるんだよ。ねえ、ヒカルンもそう思わない」と俺に話を振ってきた。

 ここは素直に

「いや、別に俺はそうは思わなかったけど」と言っておいた。

 春花は、肉ばかりではなく、野菜も数々の種類を取り入れており、完璧な食事を取っているようにも思えた。

「ほら、草薙君だってそう言っている」春花は俺の言葉に乗るようにそう言った。


「ヒカルンはハルに気を使っているだけだよ」確かに気を使ってはいたが、思った通りの言葉しか言っていなかった。

「そんなに食べなければ大きくなるところも大きくならないぞ」そう言いくるみは両手で春花の胸を触る。

 そして俺はというと、反射的に反対側を向いていた。

 見たい、見ていたいがここで振り向いてしまうと、なにか不味いと思い振り替えることをやめておいた。

「ちょっとくるみ何するの」と声だけ聞こえる。

 童貞の俺にとって是非とも振り返りたい。

 今すぐ振り返りたいが我慢する。

 俺の前で誘うようなこと止てくれと思っていた。

 そのようなくるみによる危ない行為が終わったことを声で確認して俺は振り替える。

 声だけ聞いていても18禁を越えているぐらい俺にとって刺激の強いものだった。


 先程までの俺がやるとセクハラで捕まりそうな行為をしていたにもかかわらず急に話が変わる。

「そういえば、ヒカルンもう私達には、馴れた」

「えっ、どうして」

「だってヒカルンまだあまり喋らないんだもん。もしかしてつまらなかった?」


 いつもただ楽しんでいるだけのくるみだと思っていたが、俺の事を気遣ってくれていたようだった。

 そう思うと、とても嬉しく感じられた。

 俺はくるみの方を向き笑顔で答える。

 しかし、あまり笑ったことのなかったので少しぎこちない笑顔だっただろう。


「いいや、そんな事はないよ。とっても楽しかった。ありがとう」そう言うとくるみも笑顔になる。

「本当、それならよかった。ハルも心配していたんだよ」

「松下さんにまで迷惑かけているとは、知らなかったごめんな」

「ううん、楽しかったようで何よりだよ」そう言い春花も笑った。

 何気に会話と言う会話ではないが、俺との会話で春花が笑ったのはこれが最初だった。


 その後は、俺も少し気が楽になり、趣味などベタな話だが、話し合った。


 そうするうちに電車にも乗り気づけば、元の町まで帰っていた。

「それじゃあまた明日」と俺から声をかけた。

 すると二人も

「ヒカルンばいばい」

「それじゃあお休み」と返してくれた。


 今日はなんだか運が良すぎる。

 このあととんでもない不幸が起こるのではないのかと少し怖くなるのであった。

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