表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた者  作者: 星がキタロウ
3/22

一緒にいる者(編集、終1)

登校二日目にも関わらず、いきなり遅刻をしてしまった。

午後には、彼女にありがとうと言われ嬉しがる俺だが、彼女を怒らせてしまった。

何かとついていない一日だった。

 時計を見ると5時だった。

 流石に今から寝ると寝すぎて登校時間に遅れることは、今までの人生の経験で分かっているためやめておいた。


 朝食を食べるため、またいつものコンビニへ行った。


 朝食は、食べやすいパンと眠気覚ましのコーヒー(もちろんミルクと砂糖を付けてもらった)を買って家でスマホを片手にニュースを見ながら食べた。


 その後もスマホを触っており時間は、6時。


 今から学校に行っても6時半よりも前に着き、特に学校では何もすることが無い。

 だが、家に居ても同じため学校に行くことにした。


 制服にすばやく着替える。

 今まで来ていた服から制服に着替える時の冷たさといったらいくら行ってもなれないものだ。

 その後、スマホを片手に歯磨きをして、かばんを持ち家を出た。


 外は、6時でもあったため、まだ薄暗かった。


 だらだらしていた後の外の風はとても気持ちいものだと思いながら自転車を走らせる。

 周りの景色を見ながら走っていたが、何処も彼処も山と畑あとはポツポツと家が建っているだけで風景の変化はほとんど無かった。


 思っていた通り学校には6時20分に着いた。


 俺は教室につくと、今日提出の書類を出す書類の準備をした。

 書類は入学前に保護者として近くに住んでいる親戚のおじさんに頼んで書いてもらっていたため心配はいらなかった。

 次に一時間目の準備をする。

 国語であり、教科書、ノート、辞典をカバンから取り出す。

 これで今から一時間目が終わるまでの準備終わり。


 後は8時になるまで何もすることはない。

 本でも買ってもってくるべきだと後悔しながら、窓側の誰か知らない人の席に座り外を眺めながら、英語の単語本を開き沢山の単語を見る。

 外ではこんな時間から陸上部や野球部が練習をしている。

 毎日この時間から練習をやっていると思うとぞっとする。

 外から聞こえる掛け声を聞きながら勉強をしていると、意外にも外の掛け声はうるさく感じず、逆に勉強をするときに流すようなBGMにまで感じてきた。


 最初は良いと思っていた掛け声も「いっち、にっ」としか言わない単調なものだったので飽きを感じ始めた6時50分、二人目の登校者が廊下からバタバタと誰かから追いかけられているような足音で教室まで来た。


 スポーツ刈りのクラスに一人はいるテンションが高そうな男だった。

 その男は、俺を見ると驚いた顔をして

「きみ学校来るの早いね、名前は確か光君だっけ?」と言ってきた。

 そして俺も驚いた。


 俺は、この男と一度も話したこともない。

 なのになぜ俺の名前を知っている。


「え、そうだけど、もしかしてクラス全員の名前もう全員覚えたのか?」

 そう質問をすると、男は笑って

「そんな事はないよ。まだ男子ぐらいしか名前いえないよ」男は、当然のごとくそういってきた。


 俺はまだクラスのほとんどの名前をいえない。

 普通にすごいと思った。


「ねえ、光君何でこんな早くに学校に来たんだ?」

「特に意味はないよ。早起きして家では何もすることはないから。え~っと、ごめんまだ名前覚えられなくて」


 しまった名前を知らない、嫌なやつだと思われただろうか。

 そう思っていると、男は嫌な顔一つせず、


西澤篤にしざわあつし、気安く篤とでも呼んでくれ」そう笑みを浮かべそういってきた。


「俺も光でいいよ、よろしく篤。それで篤はどうして早くに学校に来たんだ?」篤は、かばんのチャックを開け、中からノートを取り出す。


「まだ、課題が終わっていないんだ」といってそのノートを俺に見せる。


「ん?ちょっと待てよ。それ今日提出だっけ?」俺は焦った。

 すっかりそのことを忘れていたからだ。

 俺も急いでそのノートをバックから取り出す。


 バックには学校で必要なものをすべて入れていたので、ノートは一応あったがもちろん

 ほとんど手をつけていなかった。


「もしかして、光もやっていないのか?」

 俺はため息をつき

「ああ、残念ながらな」と言う。


 篤はよしと言い、2つの机が向かい合うようにくっつけ、

「それじゃあ、さっさと片付けようぜ」と言って筆箱からペンを取り出し書き始めた。


 俺もそれに続きノートを書き上げていく。


 答えがあったらすぐにでも移したい所だったが、生憎答えは回収後に再び配る形になっていた。

 それは、答えをいつも写している俺にとってかなりきついものであった。


 俺たちは必死になって書き上げた。

 分からないところは教え合い(どちらも分からないところは適当に書き)何とか8時までには終えることが出来た。


「いや~終わった終わった」篤が席を立ち背伸びをしながらそういう。

 俺も同じように背伸びをしながら周りを見渡す。

 既にクラスほぼ全員が登校していた。

 その中には、やはり俺たちが今解いていたノートをやっている奴もいる。


 俺たちは机を元に戻し自分たちの席に着く。

 俺の席とその隣の席を使っていたため、その席の人には申し訳ないと思い、その席の女子が席に着いたときに

「席使ってごめんな」と謝っておいた。

 その女子は

「ううん、ぜんぜん大丈夫だよ」となんとも思っていないかのような笑顔でそう言ってきた。


 そして今日も学校が始まる。

 今日は昨日とは違い、授業が始まった。

 内容は最初ということもあったため中学校の復習のようなものだったため簡単だった。


 そんなこんなで午前の授業終了。

 昼休みになり俺はバックから財布を取り出し昼飯を買いに行くことにした。

 一度はこんなことやってみたいと思っていたため、わくわくしていた。

 買いに行こうと教室を出ようとしたとき、篤が「光も購買、買いに行くのか。なら一緒に行こうぜ」と言うため一緒に行くことにした。

 正直うれしかった。


 購買は俺たちが靴がある靴箱の目の前で売られている。

 俺たちがここに来たときにはすでに数人ほど買いに来ていた。

 購買では、パンや弁当飲み物が売っていた。

 俺はサンドイッチと牛乳を選ぶ。

 篤はカレーパンにおにぎり、カツサンドにコーヒーなど(袋2つに大量に入っていた)を既に買い終えていた。

 俺も購買のおばちゃんに千円札と砂利銭を出しお釣りとして6百円もらい篤の元へ行く。


「そんじゃ外に行こうぜ」と篤が校舎から出ようとしながら言う。

「外って何処に」

「昨日いい場所見つけたんだ」

 俺は言われるまま校舎を出て校舎裏のほうに向かう。

 校舎裏は山へと続いていた。


 俺たちがその場所に行くと既に先客がいた。

「お~篤こっちこっち」

 先客のうちの一人がそう言ってきた。


 あの先客はどうやら篤の友達であり、俺と同じ全員クラスメンバーなようだ。

 話はしたことはなかったが、見たことはあった。


「あれ隣の人は確か...」

 男は俺を見てそういう。

 名前を思い出せないようなので

「草薙光です。よろしく」と自己紹介をした。


 男は思い出したかのように手をポンと叩き

「そうだった光君だった。俺は佐藤康成さとうこうせいよろしく」

 俺と篤は、康成の隣に座る。


 俺たちが座ると、康成に続いて残りのクラスメンバーも俺に自己紹介をした。

 最初は、俺が朝謝った俺の前に座るあの女子から、

「私は水瀬みずせくるみだよ~よろしくヒカルン」

 いきなりあだ名を付けられ驚いたが、あだ名など今までに呼ばれたことがないため、少しうれしがっている自分がいた。


 そして次は、あのキリッとした委員長だった。

松下春花(まつしたはるか)です。よろしく」

 思っていた通り感情が入っていないとても簡易で冷たい挨拶だった。


「それじゃあ次は私だね。私は天草結月あまくさゆずきです。よろしくね光君」

 この女子の中で一番普通な挨拶だった。


 そして最後に男子(スポーツ刈りの絶対にスポーツやっているだろうと思えるほどいい体をしていた)「俺は、天草大輔あまくさだいすけだよろしく、光」


 天草?兄弟なのかそう思い結月の方をみると、

 大輔が

「そうだ俺たちは双子の姉弟きょだいだ」と言うと、

 結月が

「ちなみに私の方が年上だからね」と言ったが、ここから見てあることを思ってしまう。


 それは、大輔が兄で結月の方は、年齢を偽っているのではないかと。

 しかし、その小ささからだとある層からは絶大な人気が出そうなほどだった。


「今、光君私のことちっちゃいって思ったでしょ」

 結月が、頬を風船のように膨らませそう言う。


 俺は読まれているのかと思いギクッとしながら

「いいや、ぜ、全然そんなこと思っていないよ」と言うが、

「本当~」と言われた。


 隣から篤が付け足す。

「彼女年齢偽っているんじゃないかって言われて怒っているけど、毎度のことだから気にしなくて大丈夫だよ」


 それを聞いていた結月がまた怒って

「そんなこと言われたことなんて...ほとんどないよ」と批判して言うがすべてを否定しなかった。

 気を落としている結月を、春花が結月を助けるようと助太刀する。

「結月さん、しかし背は伸ばすことはできますが、縮めることはできません。ある意味それはステータスですよ」

 さすが委員長と言いたいところだったが、結月を助けているようには思えず、反対に篤の付け足しをしているようだった。


 結月はその言葉を聞くとさらに気を落とした。

 やはり自分でもいろいろ考えているんだろうな。

 と少し結月に同情しておいた。

 最後の紹介が終わったところでようやく昼食が始まった。


 そしてさっそく、くるみから質問

「みんなってもう入る部活決めた?」

 するとすぐにみんなはもう決まっている。と返事をした。

 しかし俺だけは

「俺は部活には入らないつもりだよ」と言うと、すぐにくるみから

「何で部活はいらないの」

 と言う次の質問。


「家のこととかもあるし...」

「あ~なるほど」と一応理解した。

 しかし、

「でもそれでももったいないよ。絶対部活は入った方がいいって」と部活への勧誘をされた。


 このまま断っても部活に入った方が良いと長く言われそうなので、

 他のみんなに「みんなは何部に入るんだ?」と聞いてみたところ

 篤と大輔はやはりサッカー、康成は陸上、くるみはテニス、春花はバドミントン、結月は剣道と言った。

 全員運動部であることに驚きがあった。


 どうしようかと思ったが体験入部などもある為、もう一度真剣に部活を考えることにした。

 その後の話で分かったことだがここのいる俺以外みんな中学が同じで仲が良かったようだ。

 その事を聞き俺は場違いな気がしてここにいていいのかと不安が出てきた。

 他の話は、担任の先生の話や授業のこと来週あるテストのことについて話した。

 そのような話をしているとあっという間に昼休みが終わってしまった。


 そして、ここからがきつかった。

 5時間目は数学。

 数学は苦手教科でもあったがそれよりも6時間目の体育(隣のクラスと合同で授業を行うことになっている)の方が問題だった。

 もとから運動が嫌いだった俺にとって体育はきついもの。

 そして今回は、体育の中で最も過酷な競技、長距離走である。

 今日走るコースは学校を出てから裏山を周り帰ってくるコースだった。


 簡単に経路を説明され早速走ることになった。

 まずは、女子から体育の先生のよーいどんを聞き一斉に走り出した。


 そのようすを隣で見ていた一部の男子は

 あのかわいくない?や、あの子でかい?などと授業中にもかかわらず、早速女子一人一人に評価をつけ始めている。

 この男たちは体育という授業と、保健体育という授業の区別がどうやらつかないようだ。


 続いて男子は、女子が走り始めてから10分後にスタートした。

 走り出してから5分ほどはなかなか良いペースで走ることができ、上位層についていくことができた。


 しかし、予想していた通り、10分ほど経つと俺の体は悲鳴をあげ、男子の最後尾すら見えなくなった。

 足場は土でガタガタ、日はギンギン照りつけ体が焼かれ、汗で濡れた体操着が体にくっつく。

 もう半分走ることをあきらめてかけていた。


 すると山の方から声がする。

「あっ、変態」突然声をかけてきて、変態呼ばわり。

 怒って横を向くと俺と同じ速さで走るあの少女がいた。

 ずいぶんと余裕そうで俺の方を見ながら走っている。


「誰が…変態だ」喉が渇き、潰れた声でそういった。

「あなたですよ、変態さん」

 何か言い返そうと思ったが、頭まで血が回らずまた酸素も足りなくなっていたため、少女に返す良い言葉が思い浮かばず、言い返すことができなかった。


 あまりにも辛そうに走っていたからだろうか、何かを察したらしく少女は、

「ねえ、近道教えてあげようか」と少しまじめに言ってきた。

「え!?」俺は驚いた。


 昨日あんなに嫌われたのにえらい変わり様である。

 これは何かあると思い、俺はまた力を振り絞り

「いや...みんなも...まじめに走っているんだ...俺...だって」と誤魔化しながらも、少し男気があるように見せようとしたが、

 少女に

「だけどこのままだとまだ1時間以上かかるよ」と言われ、少しずつ俺の中で心の迷いが出始めた。


「近道すると20分ほどだけど、どうする」少女のその悪魔の言葉や、その優しさに負け

「お願い...するよ」と言ってしまった。

「分かった。じゃあ着いてきて」少女は早速、山を登り始める。

 俺もその後についていった。


 俺たちは、当然だが道のない山の中を走っていく。

 走っていく中で俺自身が遅いということもあるが、それよりも少女の足がとても速かった。

 たぶん今走っている男子の誰よりも速いだろう。

 そのため少女とも距離がぐんぐん広がっていく。


「待ってくれよ」というと少女は振り向き

「速くしないと間に合わなくなるよ」と言ったが、俺に気を使ってくたのか無意識なのか、先ほどよりも遅めに走ってくれた。


 しかし、追いつけると入っていない。

 また段々と距離が広がっていく。

「速すぎる、もう少し遅くしてくれ」というと少女はまた振り返り

「これ以上遅くしたら間に合わなくなっちゃうよ。体力不足過ぎるよ。さあ、文句言わずに走る」少女は元気を出してそういった。

 少女のどこにそんな元気があるのだろうと思わせるほど、少女はまた軽やかに走っていく。

 それでも俺は、まるでダンベルを持っているかのような足取りで少女を追い走っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ