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忘れられた者  作者: 星がキタロウ
14/22

森を訪れる者

老婆を病院へ連れて行ってから一週間が経ち日曜日、暇である。昨日は、みんなでボーリング場へ行った。

当然と言うべきか俺は勿論ボールがピンへ届くことはほとんどなく、ガーターばかり。

たとえピンへ届いたとしても倒れて1本だった。

しかし、篤からのアドバイスにより最後にはスペアまでとることが出来た。

その時にはみんなが祝ってくれた。

更にはその後にケーキまで奢ってくれた。

そこまでやるか?と思ったが、嬉しかった。

そんなで昨日は楽しい充実した1日だった。


しかし、今日はサッカー部やテニス部など部活があるらしくいつものメンバーで遊ぶことができない。

そんなわけで今日一日暇である。パンを食べコーヒーを啜り今日の時間のつぶし方について考えた。

一番最初に思い浮かんだのは、そのまま家で寝て過ごすということだった。

しかし、家で一日過ごすというのはなんだか時間を無駄にするようだったので却下した。

次には昨日と同じように図書館にいって勉強をするという考えが浮かんだ。

家ではとても勉強しそうもなかったのでなかなかいい案だと思った。

そしてもうひとつ、夢美に会いに行くという考えが浮かんだ。

単純に夢美と話がしたかったのと、普段どのように過ごしているのか気になったからだ。


考えた結果、午前に夢美に会いに行き、午後は図書館で勉強することにした。

コーヒーカップとパンを載せた皿を台所に置き、早速、私服に着替え外へ出た。

山を登り夢美の家に行くと夢美はちょうど顔を洗っているところだった。

「わっ、何しにきたのよ、この変態」夢美は驚いている。

「ちょっとあっち行って」自分の起きたばかりの顔が見られたくないのだろう。

いつも整っている夢美を見てきたために寝癖がついた夢美を見ると、悪いとは思うが面白い。

俺は言われたとおり、夢美が見えないところまで、離れた。

顔を洗い、寝癖も治したようで夢美が帰ってきた。

「何のよう?」

「用はとくにはないけど」

「ならどうして」

「夢美の生活が気になって」

「私!?本当にあんたどうしようもない変態ね。それに名前で呼ぶな」

「じゃあなんて呼べばいいんだ」

「うーん。お姉さん?違うな。お嬢様?違うな。うーん」

「決まらないなら名前でいいじゃないか」

「うーん。仕方ないわね。だけど極力名前で呼ばないで」

「はいはい」なぜそこまでいやなのか理解ができなかったがまあいいだろう

「それなら、俺の名前もしっかりとした名前で呼べよ」

「しっかりとした名前で読んでるわよ」

「変態のどこがしっかりとした名前だ!」

「あなたをそのまま言葉にしたような名前でいいじゃない」

「どこがだ」

「勝手に人の家に上がりこんで、付きまうとこのどこが変態じゃないって言うのよ」

「だから前にも言っただろう。心配だったからだって」

「それでも、付きまとったことは、どう説明するの」

「気になったから...でも、そんな如何わしい思いはなかったんだ」

「どうだか」夢美は目を細めて信用してない顔で俺を見る。

「まあ、あんたはこれからも変態と呼ぶからよろしく」

「よろしくされたくないな」

「それじゃあ」夢美は籠をからい走っていこうとする。

「あっ、待って」

「今度は何?」

「俺も連れて行ってくれないか」夢美は眉を寄せあからさまにいやそうな顔をする

「何で私があなたを連れて行かないといけないのよ」

「特に理由はない」そういうと夢美はハァーとため息をつく

「遅いとおいていくからね」そういうということは、良いということでいいのか。

「わかってるって」こうして俺は夢美のあとをついていった。

最初に夢美の足が止まったのは、歩き始めてから2時間たったころだった。

そこは川だった。

休憩らしく、夢美は顔をぬらし、水を飲んでいる。

俺も同じように川の水を飲んだ。

休憩は短く、水を飲むとすぐに出発した。

次に夢美の足が止まったのは、目的地らしく夢美は籠を置き、植物を取り始めた。

俺も夢美が採っている山菜であろうものと同じものを採った。

しかし、いざ夢美に渡してみると、

「変態、あなたどういうつもり」

「夢美を手伝うつもりだが」

「あなたねえ、私たちを殺したいの」

「え!?そんなことないぞ」

「ハァー本当にあなた何も知らないのね」まああきれられた。

しかし、俺にはどこがあきれられているのかわからなかった。「いい、これが私が取った山菜、それでこれがあなたが取った山菜ね。似ているようだけど、葉の形とか茎の分かれ方が違うでしょ。それだけじゃなく味も違うのよ、食べてみれば」

「夢美、さっき私たちを殺す気?とかいったよな。これ毒じゃないのか」

「私食べたことないからわかんない」

「絶対に毒じゃないか。じゃあ俺が持ってきた山菜すべて毒なのか」

「私わかんない」

「そうかわかった。とりあえず籠に入れておこう」

「ごめんごめん嘘です。変態が持ってきたのはすべて毒です」「え!?すべて」

「うん、すべて」夢美が採っているのを見ながら見た目が同じものを採ったはずなのに、すべて毒だったとは、今年中にでも死んでしまうのではないかと思いぞっとした。

「見分けがつきにくいけど、私持ってきた物とではところどころ違うところがあるでしょ」確かに言われてみると、違いには気づくしかし、素人からすると間違えるのも無理がないほど違いが少なかった。

たとえでいうと俺にとってそれは国産のものと外国産のものを見分けられるほど難しいものだった。

夢美にいわれたとおり少しの違いにも気をつけ、1時間ほどたつと籠がいっぱいになった。

「そろそろ帰りましょう」

「そうしよう。もうへとへと」山菜取りがここまで疲れること知らなかった。

「あんた、本当にあきれるほど体力がないわね」

「夢美がありすぎるだけだ」

「もうあんた動けなさそうね...ちょっとここで待ってなさい」そういうと夢美は森の中に消えていった。

俺が地面に大の字になり、目を閉じ、すずめのさえずりを聞いていている。

少し疲れで眠気が襲ってきた頃、夢美は帰ってきた。

手にはみかんが二つあった。

そのうちに一つを俺に渡し

「これ食べたら帰るよ」といったので俺は木の近くまで移動し腰掛けながら

「わかったよ」と答えた。

どうやらこの近くには何本かみかんの木があるらしい。

そんなここらについての話をしている間にいつの間にかみかんがなくなっていた。

「それじゃあ、帰ろっか」そう籠を背負いながら夢美がいう。

俺も同意した。

帰りも同じ道を歩く。

出発前に時間を見ると午前11時だった。

これなら1時までに帰れるかなそう思っていた。

歩きながら夢美が質問してくる。

「あんたさ、さっき何か見てたじゃん。いつも見てるけどそれ何なの」それといわれるものはスマホのことを示しているのだろうか俺はポケットからスマホを取り出し

「これか?」と聞き返す。

「そうそう、それ」

「え~っとなんて説明すればいいのかな。文明の最先端機具かな」

「何ができるの」

「電話したり、メールしたり、何か調べたり」

「電話ってあのガチャって開けるやつじゃないの」ガラパゴス携帯を表しているのだろうか手で開く素振りをしている。

「それを使っている人もいるけど、学生は大体こっちの携帯だよ」

「ちょっとそれ見せて」そういわれたので、俺は夢美にスマホの画面を見せ、動かして見せた。

「わあ、すごい。なにこれ、どうやって動いているの、え?どうなっているの」夢美はまるで幼児が始めて何か見たかのような驚き方をしている。

今時スマホを見てここまで驚くのは夢美くらいだろう。

「それとさあ、お願いなんだけど」

「場合によっては聞かないけど一応聞くよ」

「えっとね、前勉強がどうとかいっていたじゃん。それで私も勉強したいんだけど...ごめんね変な事言って」これまた俺は意表をつかれた。

日本で勉強がしたくない学生にぜひ送りたい言葉だった。

学生の中でも自分から勉強をやりたいという学生はごく少人数だろう。

俺はどうせ勉強をやらなければならなかったし、断る理由がなかったので

「いいよ」と答えた。

このときほど夢美が笑顔になったときはないだろう。

夢美は驚きながらも、無邪気な子供がおもちゃでももらったような笑顔を見せた。

「ちなみに聞くけど、夢美は具体的にどんな勉強がしたいの」俺と老婆以外の人には姿が見えない。

また、山にずっといる夢美である。

学校にいってはいないことがわかる。

そうなると、学校で習うような勉強ではない勉強をしたいのではないのかと思ったからである。

「うーん、とりあえず変態が勉強しているところと同じところが勉強したいな」

「一応聞いておくが1+1=?は」

「あんた私を馬鹿にしてるの2に決まっているじゃない」

「7×7=?は」

「49に決まっているじゃない。」

「なら3割5分9厘小数に直すと」

「0.359じゃない。本当にあんた私を馬鹿にしているの」「夢美お前学校いっていたのか」

「それがよく覚えていないのよね」

「じゃあなぜ小学校の勉強ができているんだ」

「わからない、なんとなく」覚えていないとは黒歴史でもあるからいいたくないのかそもそも思い出したくないのかわからなかったが夢美が学校に言っているのは話を聞く限り明らかだった。

それならそのとき夢美はまだみんなに見えていた?

夢美はなぜみんなに見えなくなった。

そもそも学校を休む理由として姿が見えなくなったからという小学生でもつきそうにない嘘をついているのかほかの人間に夢美の姿を見てもらわない限りわからないままだった。

そんなことを考えるとやはり俺は、夢美のことについて何も知らない。

いや、知っていたらそれこそ変態であるこれが当然なのかと一人納得するのであった。

その後も夢美に算数、数学の質問をしてみたところ、小学校までの算数ができることがわかった。

夢美の家にいる老婆に聞けば教えてくれえるのだろうか、そんなことも考えていた。

「夢美」

「何?」

「俺とあの老婆以外の人間には見えないんだよな」

「うん、そうだけど」

「何で見えないと思う」そう聞くと夢美の足が止まった。

これは、俺の質問が悪く彼女を傷つけてしまい思わず足が止まってしまったのか、それとも目の前に起こることで足が止まったのか、はたまた、どちらもなのかとまった瞬間は、分からなかった

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