仲直りをした者
俺は、くるみと分かれ東京に行った後、この町に帰ってきたのは高校になった今回が始めてである。
3年以上俺のことを覚えていたことがうれしいと同時に、覚えていなかったおれ自身が悪いようで申し訳ないように思えた。
「本当にごめん」そう誤った。
「ううん、いいよ。ここに帰ってきたってことは、東京で何かあったんでしょ」そう何かあったのだ。
しかし、ここに戻ってきたのは、くるみに合う為ではなく、逃げてきたようなものだった。
「ああ、いろいろとあったんだよ」
「今はどう少しは落ち着いた?まあ昨日あんなとがあったばかりだけど」
「ああ、だいぶ良くなったよ」
「そっかー私はひかるんとまたはなせてうれしいよ」
「くるみって本当に変わったよな。小学校時代なんて、ほとんどしゃべらなかったのに。まるで別人だよ」「本当?そんなに変わった?。それに比べて、ひかるんは背が伸びたのと私のことを水瀬じゃなくてくるみって呼ぶくらいだね」背が伸びたのは、うれしかったが、苗字から名前に変わった、といわれると急に恥ずかしくなるものである。
その後も俺たちは1時間以上思い出話をした。
俺が転向した後のくるみのこと、小学校のときに解いた算数の問題のこと、そしてあの図書館のこと。
「くるみってさー」
「ん?」
「まだ、あの図書館行っている?」
「ん~今はあんまりかな」
「そうか~」くるみは何か思いついたらしく、うれしそうにこちらを向く。
「ひかるん、ひさしぶりにみんなであの図書館行かない?」とてもいい案だと思った。
しかし、くるみは何か勘違いをしているらしい
「くるみ、図書館ってどういう場所か知っているか」
「うん、もちろん。みんなで勉強をするところでしょ」
「図書館っていうのは静かに本を読む場所だぞ」
「似たようなものじゃない」
「どこに接点があるんだよ」くるみはほほをふぐのように膨らませ、怒っているように見せかける
「ひかるんはもう行きたくないの」そう棘のある声でそういってきた。
「いやいや、行きたい。行きたいです。行かせてください」そうあせってそう伝えると、くるみは笑って
「良かった。それじゃあ、みんなにも伝えておくね」そういってくるみは、離れていった。
俺は辺りを見回す。
すでに何人か登校していた。
俺は急に恥ずかしくなった。
篤が隣に来た。
「よっ、おはよう。くるみと仲直りできたみたいだな」
「ああ、よかったよ。篤にも迷惑かけたな」
「友達なんだしそんなの迷惑のうちにはいらねえよ。それにけんかするほど仲がいいって言うだろ」篤たちと友達で本当に良かった。
「席に着け~」また今日も変わりのない学校生活が始まる。
今日は部活にも行った。
「先輩昨日はすみませんでした」と体育館に入ってすぐ、この部活で部長をしている男子の先輩に昨日のことについて謝った。
「光か、昨日病院だったんだろなら仕方ないさ」
「えっ」病院に行くなど嘘な話を誰かが話したらしい。
「そう水瀬がいっていたが、違うかったのか」くるみが言っていたのか
「いいえ、そうでした」ここはくるみの話に合わせておこう
「くるみは大丈夫だったか」俺の話はもう終わったらしく次にくるみに質問をし始めた。
見た目から少し怒っているようにも見える。
「はい大丈夫でした。わはははは」くるみはその事について笑ってごまかす。
「ははははは、ちょっと来ようか」そう先輩に言われくるみは連れて行かれた。
俺は同じ学年の女子(最終的に男は俺だけであとは女子と言う望みたくもないハーレムな部活になっている)に「くるみどうしたのか」と聞いた。
するとその女子は笑って「ああ、くるみ昨日部活に来ておなか痛くてどうしようもないので帰りますと言って帰っていったんだよ。で、そのあと外で走り回っている水瀬さんを先輩に見られたんだよ。本当に何がしたかったんだろうね~」なるほどそう言うことだったんだな。
と、大体の予想がつく。
もしも俺の考えが本当なら悪いことをしたなと思った。
少し経つとくるみと先輩が帰ってきた。
くるみは2日部活で素振りしかさせてもらえないらしい。
元はといえば俺のせいだと思ったため俺も素振りをすることにした。
「くるみ、ごめん俺のせいで」
「ううん、私のせいだから。それにひかるん、もうこれ以上謝らないで、もうあの事は終わったんでしょ。それよりひかるんは私の事なんか気にしないで練習しなよ」
「俺、竹刀を振るフォームが悪いらしいから、素振りしたいんだ」
「ありがとう。ひかるん」俺は部活が終わるまで素振りし続けた。
「ひかるん。一緒に帰ろう」本当ならもちろん喜んでと言って帰りたいところだが、よっておきたい場所があった。
その為
「ありがとう、でも今日は行かなければならない所があるんだ」と答えざるを得なかった。
くるみは顔を少し暗くして
「そう...」と答えるがすぐに笑顔を見せ
「それじゃあ明日一緒に帰ろう」そう言ってきた。
「もちろん」
「それじゃあひかるんまた明日ね」そう言うとくるみは同じ部活の女子仲間のもとに
「私も入れて」と言って帰っていった。
時間を見ると5時、少しずつ暗くなってきているが今日行っておかなければ意味がない気がした。
俺は、山の近くに行き木の後ろに自転車や荷物を隠し、山を登った。
今夢美がどこにいるかは分からない。
とりあえず昨日と同じようにあの崖に行った。
崖からは眺めがいいここから夢美は見えないだろうかそう思いながら、辺りを見回す。
木々でほとんどの地面は見えなかったが、俺は夢美を見つけることができた。
夢美は釣りをしていた。
俺にとって夢美が狩をして鹿や鳥などを狩る姿は想像できなかった。
となると自給自足をしている彼女たちにとって魚は重要なタンパク源なのであろう。
俺は遠回りをして夢美のもとへ行った。
釣りといっても漫画などである岩の上であぐらをかき釣れるのを待つのではなく夢美はズボンを上げ半ズボンのようにして、川の中に入りそこで釣りをしていた。
その姿は今までに見たことがなかったので俺は衝撃を受けた。
パシャ夢美が竿を上げた。
糸の先端には魚がついていた。
しかし、魚についてまったく興味がない俺にとって名前どころか食べられるかすらわからなかった。
夢美は流れの緩やかな場所に行く。
そこにはかごがあった。
夢美はその中に魚を入れた。
そのとき俺に気づいたようでこちらを見てきた。
俺は夢美に近寄り、口をあける
「昨日はありがとう。おかげで仲直りすることができた」
「別に私は何もしてないわよ。あなたが一人で問題を起こして一人で解決しただけじゃない」
「確かにな。でも本当にありがとう。ちなみに今はどれくらい釣れたんだ」
「このバケツにあるだけよ。言っておくけど今日はもう渡さないからね」
「分かっているよ」
「用ってそれだけ」
「ああそうだよ。だから今日はもう帰るよ」
俺と夢美はその後すぐに分かれた。
夢美は器用にバケツの水を変え家の方に向かって帰っていった。
俺は反対方向にある自転車がおいてある場所へと歩いていった。
時は流れ土曜日。
今日はくるみや篤たちと図書館で朝から勉強である。
他のみんなも部活が休みらしく全員揃って一つのテーブルを占拠して勉強をした。
休日ともあり沢山の人がいることを予想してテーブルを使うのも悪いかとも思ったが、図書館が改良され広くなっていた。
テーブルはもともと8個ほどだったものが倍以上になっていた。
また客の方も数が少なくほとんどを老人が占めており、ここにいる人の平均年齢は70歳ぐらいではないかとも思わせるほど老人しか居なかった。
俺たちはその中でくるみの判断により丸テーブルに座った。
結月がくるみと仲良くなれるようにと言って俺とくるみはとなりに座ることになった。
そして、俺の右の席には龍司が座り男と女が見事に分かれた。
他から見ると女と男で中が悪いのか、それとも恥ずかしがっているのかそう思わせる様な座り方だが、俺は知っている。
このグループはとても中がいいことを始まってかるすぐに篤に大輔、そして康成が
「分かんね〜」と頭を抱えていた。
その時は結月が二人に教える。
結月が説明しにくいところは、春花がここはこうなるなど家庭教師のように的確に教えている。
俺もくるみに教えてもらっていた。
昔ならばここで俺もくるみに教えているところだったが、今の俺の学力ではくるみに教えられることは何もなかった。
結局のところ勉強会であっても男子が女子に一方的に教えてもらう勉強会だった。
昼になり、勉強終了。
篤や大輔、康成がヤッホーイと嬉しがっている。
これだから馬鹿はと結月は三人に呆れ顔でそう言う。
二人は全く気にしていないようだ。
俺達は、ファストフード店で昼食を取った。
午後も勉強会をする予定だったが、篤達が限界だと言うので仕方なく遊ぶことになった。
外では遊びたくないという春花の要望により、くるみが提案したカラオケになった。
カラオケではやはりというべきか篤、大輔、康成、くるみの四人が熱唱を繰り広げていた。
俺やあとの女子はタンバリンなどをたたいていた。
それだけでも十分に楽しかったが、一人一回は必ず歌うとくるみに強制させられて仕方なく、俺たちも歌った。
カラオケボックスには5時間以上いた。
最後の15分ほどになったときに、みんなで歌おうよ、というくるみのこれまた提案により歌うことになった。
俺たちはもう歌いたくないといったが、篤達が歌おうぜ、とくるみの仲間になり歌わざるを得なかった。
選曲は男女4人、3人グループの歌を歌った。
今までみんなの前で歌うことは公開処刑のようなものだと思っていた俺だが、みんなで歌うとそんな気にもならず歌を歌うことが楽しいと思った。
そんなこんなで15分はあっという間だった。
「はあ~楽しかった」とくるみが背伸びをしながら言う。
「結局、遊んだ日になっちゃったね」と春花がもっともなことを言った。
「高校時代なんて遊ばずにいられるかよ」と遊びのことしか考えていないと思われる篤が言う。
「また、行きたいね」そう俺がつぶやくと一瞬空気がシーンとなった。
何かまずいこと言ったかな?
すると篤が顔をにっこりとさせ口をあける。
「おお、光も楽しかったか、そうかそれは良かった。次いつ行くか」と俺に話しかけてくる。
篤たちは俺が楽しくないとでも思っていたのだろうか、俺はここまで楽しかったのは本当に久しぶりだった。
感謝したいぐらいだった。
俺たちは帰り道が分かれるまで次いつ遊ぶか、何をして遊ぶかなど先々のことまで話し合った。