93話〜『』
廃墟と化した村から走ってジーニーの村に来た俺は、さほど代わり映えのない様子の村の姿に安堵した。
煮炊きの煙がかまどのある広場からあがり、痩せ細ってはいるが、特に何かあった様子もない村人たちがいつもと変わらないであろう日常を過ごしている。
俺の考えすぎか、まだ余裕があったのだろう。これならば対策はとれる。
しかし、そこでハッと気づいてしまう。
ジーニーのいない俺は一見すると例のゴブリンにそっくりで、モンスターに見間違われる可能性が高い。そのまま戦闘に入ったところでジーニーの戦闘力から推測できるレベルの戦力なら問題はないが、パニックになるのは避けたい。
残念ながら村の内部で目につくところにジーニーはおらず、村長か自宅か分からないがどこかで交渉についているか、森の奥に作ったバナナの樹を案内しているのだろう。
……森の奥。
村を見ていた瞳をぐるりと回して、村の向こうに見える森の入り口を見る。
深く、薄暗く、鬱蒼とした森の中では何が起きているのか分からない。
村が無事だったのは朗報だが、まだ安心しきるわけにはいかな い。
貴重な情報源としてもそうだが、魔物に襲われるというのはショッキングなものだ。それも無防備な時になどなおさらだ。
なら、ここでひとつ警戒心を持ってもらった方がいいか。
「ゴ、ゴブリンだ! ゴブリンが村を襲いにきたぞ!!」
「ギャッ!ギャギャッ!!」
堂に入ったゴブリンムーブで村人に襲いかかる。そう、俺だ。
1匹か? どこから入った? なんて声があちこちから聞こえてくる一方、逃げ惑う村民を尻目に地団駄を踏んだり、特に意味もなく飛びかかっては奇声をあげて離れ、村を横断するゴブリン。そう、俺だ!
ゴブリンに似ているという利点を余すことなく利用した、名付けて『ゴブリン襲撃訓練』だ。このまま俺が村を出れば、しばらくは周囲の警戒を怠ることはないだろう。それなら先刻の村を襲った災禍のように唐突な襲撃でどうしようもなくなるという可能性も減るに違いない。
俺がこんな作戦を計画したのはひとえにジーニーたちが森の奥に出張っているからだ。彼女らを追うにあたり、村をそのままにしておけば無防備なままゴブリンの襲撃に遭うかもしれない
森の奥に向かう前にできることとしては上出来だろう。会話を試みるよりも早く、それでいて確実に警戒を促せる。
そして森の奥に感じるなにか言葉にしようのない違和感を早く調べたかった。これはなにかまずいことが起きているかもしれないと、そう感じていた。
村の出入り口には先日見かけた男ではなく、やや気だるそうな男が村の方を見ることもなく立っていた。なので、後ろから襲いかかって死ぬほど驚いたところで森の奥に目線を向け、まるで遊ぶかのように跳ねてから森へ向かう。俺の演技力もなかなかだろう。
村全体のパニックは凄まじいが、これくらいは許してほしい。ゴブリンどもに本当に急に襲われたらこの程度じゃないんだから。
そうして俺は森の