81話~「現実」
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どれくらい逃げて、どれくらい戦っていたのかな。
夜に戦い始めて、また夜が来て。
きっと丸一日以上は戦ってる。
今は煙と炎で身を隠しているけど、またすぐに見つかると思う。
どうもあの魔物は魔力──マナを食料にするみたい。
途中で見かけた小精霊?って感じの小さな子が食べられているのを見てしまった。
とはいえ、私に何ができるわけでもない。
私の得意な魔法がほとんど効かない相手だとは思わなかった。
魔法を当てると樹皮みたいのに弾かれてしまうので、代わりに林や森を焼いて足止めしたけど、それほど時間も稼げなかった。
仲間のみんなが私を置いていったのは正解だったかもしれない。これは私を追っている。
きっと半精霊化している私はかなりのごちそうに見えるんだろうなあ。おなかへった。
さっき森の中でみすぼらしい姉弟を見つけた。
こんな魔物がいる森に迷い込んでしまうなんて運のない子たちだと思う。
助けてあげられたらいいんだけど、ちょっと自分のことで精一杯かな。
左手は不意を打たれた一撃でやられちゃった。
魔法の補助用に持ち歩いてた杖狙いの攻撃のせいで、杖を握ってた指先もだいぶ折れ曲がって痛い。
右足に至っては無くなってしまった。
痛いだなんて思っていたら、伸ばした根に引っ張られて噛み切られてしまった。
あまりの痛みに痛み止めをしようと凍らせたら、すっごい痛かったけど足の代わりみたいになったので逃げた。
これは勝てない。
ケイトがいれば、きっと死んだって生き返るんじゃないかと思ってるけど、心配はかけたくない。
だから必死に逃げていたけど、そろそろヤバい。
頭にも枝の一振りを食らっちゃって、視界はぐわんぐわん揺れてる。
枝や根を近づけないように、敵と自分の間で風と土と火を合わせた爆発魔法で牽制してるけど、魔力がもう残り少ない。
そのせいかな? 敵が私を食べるんじゃなくて、まず殺そうとしている気がする。
あー、食べられちゃったらさすがに生き返れないかなぁ?
どうしたらいいかな。
答えは出てこない。
敵が迫ってくる。
こんな時、ケイトがたまに話してくれる「ヒーロー」はタイミングよく飛び出してくれる。
私にとってケイトはヒーローみたいなものだったかな? うーん、ヒーローとはちょっと違うかもだけど。
残っていた左足と、氷で出来た右足が同時に打ち払われて砕けちゃった。
痛みはもう麻痺しているけど、足がなくなるのを見るのはかなりショックだなぁ。
もう一回、爆発魔法で牽制しておこうかな。
うわぁ~
地面に転んでるのに、地面に向かって爆発魔法を使ったもんだからゴロゴロと転がっちゃった。
あ、でも距離をとれたかな?
あー、ダメだぁ。
起き上がろうと地面を押した右腕が根元から吹き飛んだ。
これでもうホントに手も足も出ないや。
どうしようもないし、回復魔法でも唱えて悪あがきしよう。本当の意味での回復魔法じゃなくて、水属性の回復促進魔法だから、なくなっちゃった手足は戻らないけど。
ずるりと体が持ち上げられて、枝先に絡んだ髪がブチブチと千切れる音が聞こえる。
ダメかな~
ダメだろうなぁ~
頑張ったんだけどなぁ~
だんだんと視界が暗くなっていく。
ううん、諦めちゃダメだよね。
きっとケイトが来てくれる。
来てくれなくても恨まないけど、来てくれたらスッゴく嬉しい。
だからケイト、私を助けにき──