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草食系異世界ライフ!  作者: 21号
そして5年後編
52/95

50話~「緑色のテンプレート」

~あらすじ~

 冒険者ギルド!

 特殊任務!

 荷馬車が揺れる

 空荷車の旅1日目。

 ルノール、アプリ、ブライアン、そして俺。

 3人と1頭の旅の初日、俺たちはいきなり問題に直面していた。


「第21回パーティー会議を始めよう。議題は『俺の戦闘力が低すぎる件について』だ」


 町の外に出た直後、町に入ろうとする列を乱すように駆け込んできた連中に出くわした。

 そいつらの言葉を端的にまとめると、


「どうやら商人を狙った盗賊が多発し、それをも狙った魔物も増えているらしい」


 とのことだった。

 そこで直接戦闘力の低い俺が一念発起して問題提起したのだが、ルノールとアプリの反応はあまり芳しくなかった。解せぬ。


「えっとぉ…ケイトは戦わなくてもいいんじゃないかなぁ?私の魔法があればぁ、だいたい何とかなるよぉ?」


「そうね。それにお父様には木魔法があるじゃない、それで充分だと思うわ」


「ぶるるるん」


 3方向からツッコミが入る。ブライアンは何を言ってるか分からないが。


「いやほら、だからって戦力外通告は危険じゃないか?魔法が効かない敵や、武器になる植物がいない時もあるだろ」


「それこそそんな時は戦わずに逃げることを優先すべきよ」


「それにケイトはほとんど不死なんだしぃ、無理して戦う必要もないと思うよぉ」


「ばるるるん」


 過去にワイバーン相手に啄まれてエグい見た目になった俺を見たことのある女性陣は、俺が戦闘することには常日頃から反対の姿勢を崩さない。

 過保護だとは思うが、ステータスを客観的に見れない彼女たちからすれば俺の戦い方はいつ死ぬか分からなくて怖いものなんだろう。


 だからといって甘えておくわけにもいかない。


「分かったよ。でも、万が一の為に筋トレくらいはしててもいいだろ?」


 その場でスクワットしながらシャトルランを繰り返す俺を変質者を見るような蔑んだ目で見つめながら2人が頷く。


「うん...でもぉ、無理はしないでねぇ?」


「お父様がいいならそれでいいと思うわ」


「ばっふぉw」


 おい今ブライアンの奴笑わなかったか?体育座りのような姿勢まで身を丸めた直後に空を飛ばんばかりに体を伸ばし、ダッシュ。追いついたらスクワットからのダッシュ。

 筋トレと移動を同時にこなせるスペシャルメニューだ。

 前世からの俺だったらこんな事はするはずなかったが、底上げされた生命力と魔力のおかげか疲労は感じれど精神的には余裕がある。

 一瞥すると気持ち悪い動きをする男が馬車を追っているようにも見えるだろう。

 だがこれは完全に練り上げられた完璧なるトレーニング移動方法だ。……最近知能が筋肉に汚染されている気もする。


 ちなみに先日作成したばかりの『超木刀』も装備している。ゴム質を極限まで強化したベルトに引っかけて背中に担いだソレは筋トレの良い負荷になっていると思う。

 まあ実際には装備初日の夜は筋繊維が弾けては治る激痛歩行体験からのスタートで、しばらくして筋繊維が切れなくなったあとは乳酸発酵との戦いだ。

 その甲斐あってか、脚力は今までとは比較にならないほど強化されたような気がする。体型は相変わらず細身から変わらないが。


 同時に腕力も鍛えている。

 超木刀を作る要領で仕上げたウッドアーマーにウッドブレスレット、ウッドヘルムにシークレットウッドブーツ。体重計がないのが惜しいが、緑色の戦士として超重量の装備でパワーアップというのは外せない要素だと思っている。


 しかしそんな俺とは裏腹に、ルノールとアプリの2人にはこの装備は不評だ。

 まず見た目がダサい。

 デザインセンスゼロの俺にはカッコいい装備など作れるはずもなく、無骨を通り越した子供の『なりきり戦士セット』みたいな外観はアプリに【状態異常:溜め息】を発生させているし、ルノールは苦笑いが顔に貼りついている。


 さらに言えばこれはブライアンにも不評で、御者台に乗ろうものなら全力で拒否を表現してくる。荷車のタイヤがミシミシと音を立てて砕けそうになるのでこればかりは俺も納得の上だ。


 そんなわけで、俺はパーティー一行の冷たい視線を存分に浴びながら依頼の村を目指す。


 港町を南に下り、5日間。


 初日は何事もなく、穏やかに過ぎていく。



 しかし、そんな俺たちを眺める存在があった。

 南西と南東に分かれる街道の交差点、俺たちが向かうその反対側を行く商人たち。


 彼らと目が合った。


 びょんびょんと跳ねながらダッシュを繰り返して馬車を追う緑色の異形。彼らの瞳は雄弁に物語っている。


『気持ち悪いゴブリンが馬車を襲っている!』


 違う、そうじゃないんだ。


 弁解の言葉を考えながら、俺は彼らに疑われないように即座に近づいていく。話をすれば分かって貰えるだろうが、早く話をしないと勘違いされてしまう。


 この先の旅がどういうものになるのか、それを暗示していそうなこの出会い。これがどうなるのか、俺は若干の不安を抱えながら、ダッシュした。


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