表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草食系異世界ライフ!  作者: 21号
そして5年後編
49/95

47話~「看板娘はそれなりに看板娘」

~あらすじ~

 森

 湿地

 作物ゲットだぜ!

 宿屋にたどりつくなり看板娘を店の前に呼びつけた俺は、馬車の荷台に山と積んだ食糧を前に唖然とする看板娘に声をかけた。


「食材を持ってきたら食事をサービスしてくれるんだったよな?」


 細かいところは違うかもしれないが、これだけ持ってきたんだからそれくらいお願いしても罰は当たらないだろう。

 そうして声をかけられた看板娘はというと、食材の山と俺の間で視線を行ったり来たりさせていた。


「な、なんなのこれは…」


「何って、見ての通りの食材だろ」


「食材は見て分かるわよ!そんなことじゃなくて、どうしてこんなにたくさん、昨日の今日で手に入るのかって話よ!」


 言われてみればおかしな話だ。

 そこら辺に生えてたというのもおかしい話だが、調達してきたにしても往復の時間を考えたら違和感が拭えないだろう。


 どう説明したものか。


「あー、実は隣町に調達に行く途中で盗賊に遭ってな。そいつらがどこかで襲ったらしい荷が、たまたま食糧を山と積んだ馬車だったんだよ」


 盗賊ならそこかしこに居たようだし、食糧が高騰しているというならこれもあり得るだろう。

 言っておいて不安だったが、看板娘はそれを聞いて疑いながらも納得しているようだ。


「そう…確かに今は食糧を扱うのも儲かるだろうし、武器防具を扱う武装商人を狙うよりも利益が出るでしょうし、有り得ない話じゃないわね」


「そうなんだ。食糧しか積んでなかったから、そういう連中を狙ったんだろう。…もしかして盗賊から奪った荷なんて受け取れないか?」


 それなら少々困ってしまうが、そうではないらしく看板娘は首を左右に振った。


「別に盗賊から奪ったなら、それはお客さんたちの物でしょ。そんなに強そうには見えなかったから驚いたけど、そういうことならいいわ、受け取ります」


「おお。それなら良かった」


「それに盗賊から奪うなんて大変な思いをしてまで手に入れてきてくれた食材だもの。きちんと調理して出させてもらうし、これ全部っていうなら宿代もサービスさせてもらうわよ」


 願ってもないお礼に思わずガッツポーズしてしまう。現在の俺たちはちょっとした節約でもありがたい。


「遠慮なく受け取らせてもらおうか。で、この荷は裏にでも持っていけばいいのか?」


 宿の裏手には料理の際に使うものを置いておく倉庫などが置かれているのが基本だが、看板娘はニヤリと笑うと宿の中に案内してくる。


「この町は港町よ?そこらじゅうに倉庫なんて建ててたら場所がなくなっちゃうわ。さあ、こっちに持ってきてもらえるかしら」



 案内されたのは、宿に備え付けられた地下倉庫だった。


「へえ、氷室か」


「あら?氷室を知っているの?」


 そこは氷を備えた地下室で、食材を長期保存させる為に温度を一定以下にまで下げるつくりになっていた。

 その温度を下げる為の装置は、おそらく魔法由来のものであろう。氷室の奥に淡く光る石が並んでいて、そこから冷気が漏れてくるのが分かる。


「海の向こうの大陸では一般的らしいけどね。この国じゃ魔石がそう多くとれないから珍しいのよ」


「魔石ってのは鉱山か何かからとれるのか?」


「あなた冒険者なのに何も知らないの?中型から大型の魔物から穫れるじゃない」


 どうやら魔物由来の素材らしいが、正直言えばそのあたりはルノールに一任しているのでほとんど知らなかったりする。


「とにかく、ここに食材を持ち込んでおけばいいんだな」


 言われるがままに大量の食材を地下倉庫に次々と持ち込んでいく。

 残念ながら地下倉庫にも持ち込んだ食材にも肉が少ないのだが、草食系スキルを手に入れてから俺の食欲は肉を求めないので大丈夫。栄養の偏りに関してはルルノールに関してのみ留意しておけばいいだろう。


 扉の前まで寄せた荷車から次々と食材を持ち込み、およそ1時間半ほどかけたあたりですべての荷が地下倉庫に移動された。

 休みなしで階段を往復するのはかなりの重労働だと思うが、異常すぎる生命力を誇る俺にとっては息切れすらしないくらいの軽い運動だ。この体力はどうなってるんだろうな。


「ありがとうお客さん!あれだけ往復したのに全然疲れてそうに見えないってすごいね。盗賊を退治したっていうのもうなずけるよ」


 盗賊相手に鬼ごっこしているわけでもないんだから、これくらい体力があったところでどういうものでもないだろうが、頷いてくれるならそのまま認識を訂正する必要もないだろう。


 それから空になった荷車を乾いた布で拭き、俺たちは再度部屋を契約して戻った。


 宿代は1週間ほど無料で、食事も朝夜と出してくれるというので実に助かる。


 ちなみにこの間、ルノールは冒険者ギルドに赴いて情報の確認を行っているそうだ。船の出航規制がいつ頃解けるかも分からないままというのは困ってしまう。


 やることをやった俺は次に皮袋に積めた種子を見た。塩分を吸収する樹木の種子。こいつをうまく栽培できれば、この周辺でも作物がとれるはずだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ