28話~「襲撃」
約50本のライフポーションをまとめたケースを抱えてがちゃがちゃと音を鳴らしながら歩いていると、視界に町の外壁が見えてくる。
思ったより時間がかかってしまった。おそらくもう昼時は過ぎているだろう。
カバンの中ではアプリが昼食代わりの果汁を飲んでいる。品種改良を繰り返し、すぐ育ちすぐ枯れるようになった木から採れるリンゴを使い、魔力をたっぷり含んだ特製果汁だ。
当初のアプリは俺から直接魔力を吸わなければ自身の体を保てなかったのだが、それだと俺に何かがあったとき致命的になる。
そう話し合った結果、魔力を何かに込めて電池のようにすればいいという結論に至った。
これには割と試行錯誤したのだが、日常的に摂取するのだから味が良い方がいいというアプリの訴えを受けて、アプリの体と相性のいいリンゴを使った外部バッテリーを作ることになったのだ。
今では1日3食ほどんどコレで済ませており、たまの魔力吸収は嗜好品のような扱いだ。
そうして果汁を飲んでいるアプリの手が俺の腰のあたりをばしばしと叩く。痛くはないが、なんだ。
「ねえお父様、なにか騒がしいわ」
アプリが何かに警戒している。
同様に俺も聞き耳をたててみると、町の方からざわざわした人の気配が感じられた。
「気配察知に反応がある…けど、これは…俺たちを探してるとかじゃないな。何か混乱している?」
「お父様、少し嫌な空気を感じるわ。もしかしたら急いだ方がいいかも」
小さく頷いて町に向かう。まだ中の状況が分かるはずもない俺がこれ以上急ぐこともできないのが多少歯がゆい。
まっすぐに門に向かうと、いつもの門番たちが慌ただしく動いていた。
「戻ったんだが、開けてくれ!」
「ケイトか!?いいところで戻ってきた!」
なにか嫌な予感がする。
「薬師ギルドが登録員を召集してる、お前もすぐ薬師ギルドに向かってくれ!」
「なにがあったんだ?」
バタバタとしているところに悪いとは思いつつ、嫌な予感のする桂斗は少しでも情報を集めようと声をかける。カバンの中ではアプリが周囲の雑音から何か拾えないかと聞き耳をたてていた。
「いきなり町の後方にトロルの集団が出たんだ!」
「なんだって!?」
「冒険者の誰かが調査に行ってたところで突然らしい!怪我人もたくさん出てる、早く薬師ギルドに行ってくれ!」
「あ、ああ、分かった!」
これで理解できた。
薬師ギルドは薬を扱う連中の集まりだ。ひとつの場所にまとまり、作った薬を一度集中したあとに分配すれば効率がいいだろう。
「お父様・・!あっちこっちで色んなこと言ってるから正確なところは分からないけど、トロルの襲撃にあった冒険者ってルノールかもしれない!」
カバンから俺にだけ聞こえるようにアプリが言った瞬間、どこかで、ずしん、ずしん、と響く破壊音が聞こえた。
「クソッ!奴らめ、普段はただノロマでデカいだけのくせに!」
門番が悪態をつきながら走る。おそらく今こんな状態だから、無闇に町の外に出て死ぬことを防ぐのも彼らの仕事なのだろう。
ちらりとトロルたちの方を見て、走り出す。
待ってろルノール。今、薬を届けてやる。
一応15時更新予定!
短くてすみません!