21話~「短慮の結末」
短いです。
次回は12時予定です
一刻を争う。
意識を失いかけているルノールを救う為に、桂斗は皮袋の中にある種をありったけ掴んでスライムの中に突っ込んだ。
「栄養になるのはお前の方だスライム!」
魔力を全力で込めて放つ!
「<促成栽培>!!」
種が持つ『栄養を吸い上げる力』を極限以上に引き出し、スライムからエネルギーを吸い上げて成長する!
これならば、中のルノールを傷つけることはない。
そう思ったのに。
「ゴボッ…!ガボッ!」
一気に育っていく植物。反比例するように目減りし、朽ちていくスライム。消滅するのも時間の問題…なのに、スライムの色が一気に紫色に変化する。
その色を、桂斗は見たことがある。
「しまった、毒か!!!」
種の中に混じっていた毒草が、桂斗の魔力で瞬時に成長したのだ。朽ちゆくスライムはそれを取り込んで命を繋ごうとした。
その結果、ポイズンスライムとなったソイツは、自らのうちに取り込んでいたルノールの体内に毒を流し込んだ。
あちこち溶かされていたルノールは抵抗もできず、あっという間に毒に冒されていった。
ルノールに毒耐性はない。
桂斗のような馬鹿げた生命力もない。
彼女は、ただ普通の女の子だった。
がくん、と力が抜けた体が地面に向かう。
それをスライムごと掴む。
「さっさと…どけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
植物に絡みとられたスライムを置き去りにするように引っ張ると、ボロボロになったルノールの体が引きずりだされる。
・・・ひどい。
真っ赤にただれた火傷の痕に、毒が染み込んで紫色になっている。
解毒しなければ。
慌てて解毒草を取り出し、ルノールに飲ませようとするが、草を口に入れた瞬間にそれを吐き出してしまう。
【解毒草(変異種)】 解毒+5 単体での薬効が強化され、臭みが増した。もはや兵器。
「クソッ!ルノール、頼むから食べてくれ!飲んでくれ!じゃないと死ぬぞ!」
だが、すでにルノールからの返事はない。紫色になった顔から生気のようなものが感じられない。
怖い。
怖いけれど、やらねばならない。
ステータスチェック───
名前:ルノール
種族:人間
職業:羊飼い
年齢:10歳
生命力:0
魔力:18
スキル:料理・調教
状態:死亡
彼女はすでに、手遅れだった。