18話~「※イメージです」
成長チェック
ウソだろ…
フルーツ(笑)系美少女アプリ爆誕
「そもそも、お父様は魔力の使い方を知らなすぎるわ」
生まれたばかり、生後数時間にも満たないフルーツ少女のアプリにダメだしを食らっているお父様。
[生命生成]なんていういかにもなチート能力を羨ましく思い、珍しく起きてる間に促成栽培を行った桂斗が言われたのがいきなりそれだった。
「知らなすぎるって言われても事実だからな」
甘く生まれ変わったリンゴの種を植えて促成栽培を行ったところ、芽が出たと思った直後にはぐんぐんと成長し、一本の木になった。残念なのは、木にはなったけどリンゴの実はまだ生っていない。与えた魔力が少なかったのかもしれないと思うが、すでに育ってしまった木に対して使ったことがないので、促成栽培をどうすればいいのかが分からず、途方にくれたのがその理由だった。
「お父様の魔力は膨大よ。異常よ。キチ○イよ。なのに、やってることは大樽に汲んだ水をコップに注いでいるようなものだもの。無駄無駄無駄よ」
そりゃあ器が割れるか、溢れまくるな。
「だから、まずは魔力の操作について学ぶべきだわ。お父様、私に触れてくれるかしら」
そう言って頭の葉をフリフリしてくれる。
アプリの姿は、言うなればデカい帽子を被ったミニチュア美少女だ。リンゴの上の部分を切り取り、茎の部分から大きな赤い葉が3枚生えている。
そんなものを被った裸の少女である。正直、少女部分だけを見ていると色々とこみあげてくるものがある気がするが、あくまでそれは精神的なもの。今の桂斗は2歳児であり、肉体的に言ってもせいぜいが10歳相当。それ以上ではなく、性欲など涌いてはこない。
だが、それでも目の前で小さなお尻をフリフリしながら説明してくる美少女には鼻の下が伸びそうになる。
「・・・ってことなんだけど、お父様聞いてるの?」
全く聞いてませんでした。
「はぁ…まぁいいわ。私に触れてくれれば分かることだから。さ、お願い」
そう言われてどこを触ろうか迷った挙げ句、桂斗はおもむろにアプリの少女部分に触れた。
思ったのとは違い、普通の人間のように柔らかい。むしろ人間より柔らかいかもしれない。後ろに回った指はアプリの小さなお尻に触れ、親指はアプリの控えめの胸を軽く押さえている。ぷにぷにして気持ちいい。
「触れって言ったからって鷲掴みにすることないでしょ!ビックリするじゃない!」
そういえばよく見たら鷲掴みだ。人形を手荒に使う子供ほどじゃないけど、ちょっと乱暴だったかもしれない。
「あー、ごめんごめん。加減が分からなくて」
「まあいいわ・・・それよりお父様、よく自分の体を意識して」
次の瞬間、アプリの唇が桂斗の親指に触れた。そこから何かが抜けるような感じがする。
「んっ…これが魔力の動きよ。今、抜けてってるのが分かるでしょう?これをよく覚えておいて…んぅ」
見ると、アプリの喉が少しだけ嚥下している。どうやら魔力を吸ってるようだ。
「んむ…この、抜けてく感覚を覚えて、抜けないように留めるの。それが魔力の集中だから…おいしぃ」
絶対に味を占めてる。
だが、今は魔力の操作に集中する。すると、脳内にイメージが流れてくる。これが魔力の流れなのか。
『ソイヤッ!ソイヤッ!』
『魔力が抜けてるぞ!もっと気合いいれろ!』
『ソイヤッ!ソイヤッ!』
『そうだ!踏ん張って魔力に耐えろ!流されるな!』
『ソイヤッ!ソイヤッ!』
『いまだ!!魔力を掴んだぞ!引っ張れ!!』
『ソイヤッ!!!!』
・・・今のイメージはなんだったんだ。
何かフンドシ姿の暑苦しい男たちが魔力の波に耐えていたような、そんなイメージが脳内を占領していったが、どうやらこれが魔力の流れらしい。たぶん魔力の流れだと思う。納得はいかないが、それ以外の理由を説明しづらい。
「うん、魔力が吸えなくなったから成功してると思うわ。そうしたら、そのせき止めた場所に、止めたまま魔力を流し込むの。皮袋に水を押し込むイメージよ」
風船を膨らませる…水風船かな。それはビニールやゴムをイメージできる桂斗にとっては容易だった。
『おぉぉぉ!』
『ナイスバルク!いいね、詰まってる!』
『ぬふぅぅっぅん!』
『キレてる!キレてるよ!』
『むはぁぁぁぁん!』
『スゴい膨らみだ!ええぞ!ええぞ!』
なぜかまたおかしなイメージが付いてくる。そしてさっきからイメージ映像の連中が全員もれなく緑色をしている。なんなんだ。超人なのか。
「うん…なんか妙な波動だけど、強い魔力だわ。そうよ、それが魔力の操作。スキルや魔法を使うとき、ただ漠然と魔力をたれ流すのと、魔力を操作して使うのではまるで違うわ」
【スキル[魔力操作]を獲得しました】
よし、きちんと手に入った。
アプリも満腹そうに…満足そうに頷いている。指導してくれたんだよね?おやつ感覚で魔力をつまんだんじゃないよね?
その後、魔力操作で力を込めた促成栽培は驚きの結果をもたらし、結論から言うと草地がジャングルになった。
町の外に突如として現れたジャングルにびっくりした町民たちが冒険者の探索部隊を結成して乗り込んできたが、そこで見つかったのは艶々とした毛並みの馬が一頭と、グラデーションゴブリンと言われる珍種だけだった。ゴブリンはすぐに逃げてしまったが、冒険者たちの間ではそのジャングルは異常においしいリンゴが生る木があるという噂が広がり、町の食卓をにぎわせた。そんなジャングルもその年の冬には枯れ、元の草地に戻ったのだが、そのときの噂はしばらく消えることはなかった。
当然のことながら、そんな場所にはさすがに来れなかったルノール。彼女が次に桂斗に出会ったのは、すっかりジャングル生活に慣れた桂斗がキーキーと鳴き声をあげながらリンゴを投げつけて冒険者を追い払っている時だった。
その時の事を桂斗は覚えておらず、桂斗を落ち着かせて話を聞いたというルノールの評価は町の中で少しだけあがっていた。
ようするに、それからまたも1年以上、町に入ることなく生活を続けた桂斗であった。
次回更新も明日午後21時!
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