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草食系異世界ライフ!  作者: 21号
異世界転生編
2/95

第1話~「母なる大地に眠れ」

 というわけで、転生しました。詳しくは割愛する。


 生後0日目。 


 前置きは後にして、現在の状況を確認しよう。


 俺、草壁クサカベ桂斗ケイトは前世での死を迎えた後に転生し、新たな人生を迎えた。

 色々あって、本来は持ちえないような能力を持って生まれた。いわゆるチート転生だ。

 そんな俺が新しい人生を謳歌するため、問題なく生き抜くために出来る段取りを追っていくことにしよう。


 さて。俺は生まれたてホヤホヤの赤さんだ。

 生まれたての赤さんは喋らないし、立って歩いたりもしない。

 だから俺は、まず泣くのだ。

 俺が死ぬ時に周りが泣いて俺が笑うという理想のため、今は大声で泣くのが生まれたての赤さんのお仕事だ。


 おぎゃあ、おぎゃあ。


 俺の泣き声が空に溶ける。うん、我ながら素晴らしい泣き声だ。だが、いまいち反応がないな。


 おぎゃあああ!おぎゃあああ!


 どうだ、この元気っぷり。ちょっと元気よすぎて怖いかもしれないから自重しとこう。しかしこれだけ泣いてるのに誰も反応しないな。俺のママンはいったい何をしているんだ? ちょっとだけ周りを見てみるか。チラッとね





 お、おぎゃあああーーーーー!?


 そこは見渡す限りの大平原。

 いや、ママンの胸部装甲がとかの話じゃなくて、現実に。

 思わず生後0日目の乳幼児が目を見開いてしまう。しかしこれは、どういうことなの?


 おぎゃあああああああああ! あんぎゃああああああああああああああ!!!


──全力で泣いてみたものの、10分近く泣いても誰も来ない。誰もいない。


 一体全体どういうことなのか。

 首がすわらないどころか産毛すら生えてない赤子だけど、必死になってモゾモゾモゾモゾして周囲を窺う。


 ・・・なにもない。


 右を見ても平原。

 左を見ても平原。

 上を見れば曇天。


 ママンの姿も、産婆も、誕生記念のサンバカーニバルも、そういうのも一切見当たらない。蓮の葉とかに乗ってるわけでもない。



─どうやら俺は捨て子だったらしい。


 ここで俺は途方に暮れてしまう。

 何しろ、俺は生まれたばかりの赤ちゃんだ。与えられたチート能力があるといっても、それを使いこなすにはある程度の成長が不可欠だろう。


 ここで俺は思い違いをしていたことに気付く。


俺が欲していたスキル、それは

 [捕食]

 [賢者]

 [耐性]

この3つになる。賢明な方ならわかるだろう。俺が生前に読んでいたラノベで、ここから成りあがった物語があったのだ。

 転生にあたって能力を得られる機会があった俺は、迷いながらも迷いなくこれらを選んだ。だが、そこでひとつ思い違いがあった。いや、そもそも[耐性]スキルに関しては取得すら忘れていたのだが。取得忘れってなんだよ、チート転生なら行間でとってた事にしてくれてもいいだろ。 自分で操作してたんだからとってないのは間違いないんだけどさ。


 そんなことより、これらの能力は「不定形の姿でこそ真価を発揮する」ということだ。


 生まれたてでも、モンスターならなんとかなる。だが人間の赤さんにそれは無理だ。だって歯がないから噛めないし、手足がろくに動かないから移動もままならないし。


 というわけで、せっかくのチート能力も完全に宝の持ち腐れ。俺は泣き疲れて眠ってしまった。



 そして少し寝て目が覚めたところで、改めて途方に暮れていた。

 人気のない大平原。人の気配もない、生き物の気配がしない。空は薄暗く、妙な圧迫感がある。そして地面は土くれの荒れ地に数ミリほどのわずかな草が見え、さらに点在して生えているクローバーっぽい謎の葉っぱだけ。見事になにもない。おーい、だれかいませんか? おーい。


《[気配探索]を獲得しました》


 お? なにやら脳内に響くダンディズム。これ神仏天使さんの声っぽい。

 獲得とか言ってたな。ふむふむ、ここは想像通りといった感じか。とするとステータスとかもあるのかな? むむむ、ステータス! プロパティ! なんとかオープン! 鑑定! 解析!


《[自己診断]を獲得しました》


 診断って何か違くない?

 ちょっと違うけど、新しいスキルゲット。わりと簡単にスキルが手に入るけど、これ何かの効果かな? 俺が願った能力の中だと賢者さん辺りだろうか。よくわからんけど。


 それから色々やってみたが、そこからは特になにも起きなかった。[気配探索]が手に入ったけど、これも効果があるのかないのか分からない。

 そもそも周囲に何の気配もないもんだから、これがスキルの効果で「誰もいない」とわかってるのか、なんの応答もないから居ないと判断したのかが分からない。


 そしておなかがすきました。

 もう美人なママのおっぱいとか贅沢は言わないから、ミルクください。

 なんてぼやいてみたが、おぎゃあおぎゃあという泣き声にしかならない。

 声帯が発達してないから言葉にならない。

 そして人気がない平原というのは分かったけど、このどんよりとした雰囲気がどうにも不安になってきたので大声を出すのは控えよう。

 フラグが立ちそうで嫌な予感がする。


 おなかがすいても人は来ず。


 仕方ないので泣き疲れてもう一度寝ることにしよう。寝て起きても何も変わってなかったら…その時に考えよう。じゃあ、おやすみなさい。

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