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草食系異世界ライフ!  作者: 21号
第一章『緑色編』
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第11話


 2年後。

 桂斗のこれまでをダイジェストで紹介しよう。


 馬と旅に出て

 草を食べながらあてどなく歩き続けて

 2年経った。



 日本よりの転生者「草壁桂斗」。忘れてしまいがちだが、まだ2歳。転生前に行った行動による「功徳ポイント」があり、それを使ったボーナス、いわゆるチート能力を得て転生した転生者である。

 だが、その生まれは捨て子であり、ひどい飢饉に遭った町にて引き取られた桂斗だったが、飢えた町民たちの逆恨みに遭い、引き取り手の学者メンデルと離散してしまう。

 町長の罪悪感により、馬に乗せられて町を脱出した桂斗。草を食べて生きていけるという『草食系』の能力を持った桂斗は、馬と共に当てのない旅に出ることとなった。


 そして、馬任せの旅となった桂斗を待っていたのは、ただひたすら草のあるところを追って移動し、草を食べては少し休み、また移動する。その繰り返しだった。


「ちょっと移動すれば、少しくらいは人に会うと思ったんだけどなあ・・」


 それは桂斗にとっても予想外で、馬と共に過ごしたこの2年間、野生の動物や虫に遭遇することはあっても、人間と遭遇することだけはなぜか一度もなかった。

 他にも、モンスターなどが生息しているという噂は町にいたときに聞いていたのだが、それすらも見たことはない。

 ぶっちゃけると、桂斗は人恋しかった。


「ブライアン、お前もちょっとは寂しくならないのか?」


 日本に居た頃、遙か昔に有名だった馬の名前を勝手にいただいて付けた名前で呼ばれた馬は、どこか面倒くさそうに桂斗の方をちらりと見ただけで視線を戻してしまった。

 ブライアンにとっては仲間の馬に会うのもどうでもいいのか、少しでも美味い草が生えている方へと移動しているだけのような所も最近は感じられる。


 桂斗にしてみても、転生で与えられたスキルを使って何かできないかと色々とやってはいた。だが、馬の移動に全てを任せている関係上、どうしても出来ることが限られてしまっていた。


「身体操作のスキルは+5まで伸びたし」


 ブライアンに手をあて、ひょいと体を浮かせたと思うと、桂斗の体はふわりと馬の背に跨がっていた。

 ブライアンがそれほど大きな馬ではないにしろ、桂斗が2歳児とは思えないほどに大きく成長しているとしても、その身体能力は空恐ろしいものがあった。


「鑑定さんもきちんとスキルになったし」


 かつてはスキルとして存在していなかったにも関わらず使用できていた[鑑定]が、去年あたりにきちんとスキルになった。と同時に[自己診断]が統合され、[診察鑑定]に変わった。

 このスキルは、使用すると健康状態や生育状況を詳しく調べられるスキルだった。自分を鑑定したら種族がきちんと人間になっていたので安心したが、健康状態に「偏食」とあったので、たぶん野草しか食ってないせいだろう。


 他にも、実はこの鑑定で分かったことがいくつかある。

 それは[草食系]についてだ。

 この草食系というスキルは色々なものをまとめたスキルなのだが、どうにもスキルを一定方向に特化することで強化しているような節があった。

 [栽培]と[促成栽培]を統合していたが、これらは単体で使用した場合は収穫物が良品になりやすかったり、通常より2割程度早く収穫できるようになったりするものだった。

 だが、[草食系]に統合された結果、栽培は最高品質になりやすく、促成栽培に至っては一晩で成長を促せるような結果が出た。ただし、これを使うと体からエネルギーのようなものが一気に失われてしまうのも同時に分かった。おそらくは魔力的なものかと思うけれど、そういった知識がないので分からない。


 毒耐性や蓄積については保留されている。

 というか、町を離れてからというもの毒草がほとんど見あたらず、あっても微毒性のものが少量といった具合で、スキルの成長に使えそうなものはとれなかった。


 そういえば、馬に繋がれているとき、桂斗と共に袋に入れられていた植物の種や草の中に変わったものがあった。


【マギ草】マギソウ。魔力の多い土地で育った草。土から魔力を吸収して育つ。株分けされた種の為、保有魔力量はわずか。


 雑草であるヒメカソウに混じっていた。

 これ幸いにと草食系スキルで促成栽培して増やしていたが、これがなかなか増えなくて困ったものだった。というのも、一夜で2株にしかならない。なので、そのまま翌日も植えて倍々ゲームにしようと思ったら16株になったあたりでブライアンにモシャモシャされた。

 もちろん怒りを込めて抗議したが、馬の耳に念仏とばかりにスルーされた。

 なので、ブライアンが狙ってきそうな量になると自分で食べるようにしている。おかげで自分でもどれくらい食べてきたのか分からず、魔力が増えているのかも分からない。たまに勝負に負けてブライアンが食べてることもあったから、魔法駄馬になってる可能性も否定はできない。


 そして念のため、草が少ない地域に入ってしまった時の為の草も袋に詰めているのと、桂斗自身、体が大きくなってきた自覚があるので、袋に入ることはなくブライアンに乗るようになった。

 最初こそ馬に乗るなんて初めてだし、体型も赤子のままだったので苦労した。だが意外に協力的だったブライアンのおかげもあって、次第に乗れるようになり、[乗馬]なんてスキルも入手した。


 のんびりとした旅だが、いい加減に変化がほしい。


 そんないつものある日だった。


 ふと前方を見ると、なにやら人のような姿が。


 そう。ついに桂斗はたどり着いた。

 人がいる場所・・・村にたどり着いたのだった。



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