今日、世界が終わるその前に
『今日、世界が終わります』
それは、ずっと前から分かっていた事実。
進んだ科学は、遠い宇宙のことまで分かるようになっていて、ある日ブラックホールが近づいてくるということまで割り出してしまった。
そこからは大騒ぎだ。
地球は滅ぶ。
高度な頭脳を手にしていた人類は、様々な方法を使って生き延びる方法を探した。
火星へ移住しようと、金に物を言わせてロケットを作った富豪もいる。
人類が適合できる星を探すために宇宙で生活しようと、超巨大な……なんだろう、移動型宇宙ステーション?のようなものを作った人もいる。
だか、人類のほとんどは、どうすることもできなかった。
ただ、死を受け入れて、少しでも未練をなくそうと足掻くしかなかった。
僕ももちろんその一人。
やりたいことはたくさんやった。
貯金は全部使ってたくさん旅行に行ったし、見たい映画も見た。高校を休んで本を読んだり、貯まっていたゲームをしたり、たくさんの『したかった』ことをした。
そんな僕でも、たったひとつ、まだやっていないことがある。
それを果たすため、僕は今、ここにいる。
「……ねぇ」
「……なに?」
「好きだよ」
目の前の幼馴染みに、そう告げる。
ずっと、ずっと。
告白する気なんてなかった。
でも、ある日、思ったんだ。
死ぬって、どういうことなんだろうって。
僕はまだ高校生で、そういうことはよく分からなかったけど、一つだけよく分かったことがある。
それは、もう、彼女と一緒にいられないということだ。
彼女としょうもないことで笑いあったり、どこにでもあるありふれた日常を一緒に過ごしたり。
そういうことが、もうできないということだ。
そう考えた瞬間、怖くなった。
別に、付き合うとかそんなことは考えていなかった。だって、今日で世界は終わってしまうし。
でも、それでも、彼女の心に僕の存在が残るように。願わくば、世界が終わるその瞬間まで、彼女の隣で笑っていられるように。
そうなりたいと、そう思った。
だから、告白しようと決心したのだ。
今日、世界が終わるその前に。
目の前の幼馴染みは、泣きそうな顔をして、今までに見たどの笑顔よりも美しく、儚く、微笑んだ。
「遅いよ、バカ」