プロローグ
恋愛ものが書きたくなりました。拙くはありますが、どうぞよろしくお願いします。
「おい、皆んな!こんな話聞いたことあるか?」
あの日もそんな感じで、お調子者の達也が話し出したのがきっかけだった。僕たち3人は、公園で遊んでいた。確か小学校最後の夏休み。達也が話したのは、この街のある噂についてだった。
「学校の裏山にある、トンネルの向こう。今は誰も住んでない廃屋敷にお化けが出るらしいんだってよ。」
「達也〜…やめてよ…」
涙目で訴えるのは千里だ。僕の幼馴染みで、いっつも僕と達也と一緒にいる。小さい頃から3人でよく遊んだ。住んでる家は僕の家を真ん中にして隣同士。幼稚園と小学校も3人で同じところへ通った。
「中学生の先輩が言ってたんだよ。その先輩友達が見たって、すーごくビビってた!面白そうだよな!今からそこへ行くぞ!」
「え〜、裏山の奥には行っちゃダメなんだよ?」
「達也。千里嫌がってるよ。僕もそういうの嫌だし。」
「怖いのか?千里も裕太もダメだなー。なら俺1人で行くからな!」
達也はこうなると話しを聞かない。いつもそうだ達也はしたいと思ったことは僕たちが説得したって聞かない。でも、一時間くらいするとケロッと他のことをしたがったりする。僕たちはいつもそれを待つ。でもこの日は違った。僕は達也1人ではいかせられないという正義感か…それとも何かに惹かれたのか…結局行くことにした。
「達也君も…裕太君も…危ないよ…ダメだよ…」
千里はそんなことを行っていた気がする。何故だろう?いつもは千里のそばにいた僕がその日に限って達也について行ったのは。
ミーンミーンミーンミーン
裏山はろくに管理されてなかったのだろう木々が生い茂り、雑草は生え放題になっていた。もともと完備されていただろう小道も落ち葉や、草木に覆われていた。
蝉が鳴いている。木々から漏れる光は夏の強さを体感させ、青々とした葉に反射して眩しい。
僕と達也はそんな中をトンネルに向かって歩いって言った。
「なぁ、裕太?いると思うか?」
「幽霊なんていないよ。ぼ、僕は信じていない。」
嘘だった。怖いから信じたくなかっただけだ。
山は奥に入って行くほど暗くなっていった。普段ならこんなところで引き返す。達也はお調子者だが、ダメなことは分かる奴だ。そろそろ帰ろうと言い出すはずだ。僕は達也を見た。
達也は何かを指差していた。指の先を追っていくとそれが何かすぐに分かった。トンネルだ。暗い森の中でより一層暗いトンネルは今にも中に吸い込まれそうだった。
ザザッ…
何かが動いた音がする。達也の方を見る……
そこには達也はいなかった。
いや達也がいなかったんじゃない。僕が元の場所にはいなかったんだ。目の前にあったはずのトンネルが気づいたら僕の後ろにあり、僕の目の前には大きな屋敷があった。寂れてしまっている。トンネルの方からは僕の名前を呼ぶ声がする。帰りたい…けど、足は何故か屋敷に向かう。達也を呼びたい…けど、声は出ない。
僕は文字通り吸い込まれるように屋敷に入っていった。