雄島2
今回は心霊系。最後の写真は心霊写真かも。苦手な方は挿絵オフしてね。
では雄島の足取りを先に進めよう。
雄島というのは外周二キロほどの小島で、海岸はほぼすべて波に侵食された流紋岩で埋め尽くされている。少し気味の悪い風景になるが、画像も載せておこう。
ちなみに真ん中辺りで景色に同化しているのは筆者の下の息子である。心霊ではないのでお間違いなく。
本土から渡るには前話でご紹介した橋を使う。そしてそのまま島の周囲を巡る遊歩道に沿って一周することができる。
なお、我が家のように岩伝いで海岸近くまで行く輩は珍しいらしく、この日も遊歩道を散策する方々から少々奇異な目で見られた。別に立ち入っていけないわけではない。良質の釣り場でもあるようだし。ただ足場が著しく悪いので危険なだけだ。
ここは先にも話したように有名な心霊スポットとなっているのだが、おかげさまでこの日も筆者は幾体かの方々に目通ることができた。……説明せずに話を進めてしまうと怪しさ満点になってしまうので最初に暴露するが、筆者はよく心霊現象に遭遇する。このへんのエピソードは拙作『深夜ラジオ』にて語らせていただいているので、興味があればぜひいらしてください。
実はこのたびの旅行をここにしたのは、この心霊現象に端を発していた。詳細を語らせていただこう。
たぶん今年の一月のことだったと思う。筆者が『心霊』というキーワードで自動録画を登録している録画機器に、ある番組が撮れていた。
内容はありがちなもの。ネットに上がった似非心霊動画をキャーキャー言いながら紹介し、時折ロケシーンが入るという構成だった。
その一コーナーに雄島紹介の部分があったのだ。有名な心霊研究家と男女タレント二人が深夜の雄島に渡るという内容……だったと思うのだが記憶が定かでない。間違いがあったら申し訳ない。
カメラは、闇の中、雄島にかかる紅い橋を歩くタレントたちを映していく。タレントさんたちはすでにこの時点で軽いパニックになっているようだったが、正直、私にはただの寒々とした景色にしか見えなかった。若い女性タレントの放心した姿に若干萌えたのは、また別の話だ。
そして彼らは雄島に足を踏み入れる。たしか『大湊神社』の辺りで、心霊研究家、タレント×二人のスリーショットが組まれた。タレントの感想を聞き、心霊研究家が軽く祈祷などをして番組を盛り上げる。
と、そのとき。
とつぜん、三人だったフレーム内に、一瞬だけ、もう一人の人物が現れたのだ。それは髪の長い女性のようだった。少し縦長の丸顔で、細く切れた目尻が印象的な、三〇歳前後の綺麗な女だ。
筆者は過去にもテレビ視聴時に『実在と間違うほどはっきりとした幻影』を見たことがある。機会があればまた語ろう。ともかく、このときの女性も「テレビの演出か?」と疑うほどには鮮明であった。が、他の出演者に比べて色彩が極端に薄かった(白黒に近かった)ことと、冬のロケだというのに下着のような白い着物一枚で現れたことで、彼女の正体にはさほど疑問を挟まずに思い至ることができた。
ただ……。
たしかに私の目は女性を捉えたのだが、番組は、専門家がいたにもかかわらず、まったく彼女の存在を無視した。そして後日に家族に同シーンを見せたところ、私には変わらず認識できるのに、家族は誰も彼女を見ることができなかった。つまり、彼女の存在は私以外には視認できず、もしかしたら私の妄覚にすぎないかもしれないわけだ。
が、なんとなく、私は彼女を『いないもの』として扱ってはいけないような気がした。だから、自身の迷いを吹っ切るためにも彼女に頼んでみた。
「もし本当にこの島に棲んでいるのなら、どこかで証明してもらえないだろうか」
と。
番組の最後。大湊神社まで戻ってきた(と記憶しているが詳細は失念)一行は、そこで女性タレントが自撮りした動画に映り込んでいたものに気づく。女性タレントの顔の右側、暗視カメラの映像は不鮮明で男女の区別すらつかなかったが、黒髪のまとわりついた白い顔に浮かぶ切れ長の目は、あいかわらず印象的だった。
まあそんなわけで、もし福井に行くことがあったらお礼に伺おうと思っていたのだ。
そしてそんな折、下の息子から、
「海に行きたい」
という要請があり、思いのほか早く彼女との『再会』が成ったのである。
この写真の中に彼女が『いる』。大湊神社から時計回り方向にほんの三〇メートル進んだ藪の中だ。筆者がカメラを構えている場所が遊歩道である。
彼女の姿を『写っている』ではなく『いる』としたのは、私にも写っていることが確認できないからだ。けれど画像を開いた瞬間に感じる清浄な気配は彼女のものである。実際にこのとき彼女は対面にいた。撮影時にはちゃんと許可を取っている。
もしみなさんの中で彼女を見つけた方がいたら、こっそりと教えてはもらえないだろうか。筆者にとってこの写真はお守りのような存在なので、中身がないままでは少々寂しい。
ちなみに息子たちに彼女の居場所を教えたら、下の息子などは不躾に手を振って「おーい!」と怒鳴っていた。
「ちょっとぐらい祟ってやってくれ」
と苦笑いしながら彼女に心の中で謝ったら、なぜか上の息子の頭が歪んでしまった。
……改めてごめんなさい。
では次は東尋坊に移動します~。こっちにも不思議な写真があるよ。