表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/177

書籍発売記念 超短編SS「秘密結社YMK±1」

というわけでその無限の先へリスタートプロジェクト達成により、新たに第一巻が発売しました。(*´∀`*)

旧第一巻、第二巻分、つまり第一章を再度ブラッシュアップ・再構成したものになります。

おまけにキャトルミューティレーションされる猫耳の外伝も追加されました。


今回はそんな奇跡の新刊発売に合わせた宣伝用の短編となっております。(*´∀`*)




「おや、誰かと思えば我が友人じゃないか。久しぶりだね」

「誰だお前?」

「フレンズマン。君の友達さ」

「というか、どこだここ?」


 気がついたら奇っ怪な謎の異形が目の前にいた。触手のように細長く蠢く不定形な宇宙人。目のようなモノがあるため辛うじて顔だろう位置は分かるものの、それ以外の部位は人型といえなくもない構成をしている。服のようなナニかがなければ文明の気配すら感じない程度には化け物だ。


「貴様のような奴と友達になった覚えなどないのだが」

「忘れているだけさ、同志A。私の友達はみんな忘れっぽくていけない。私も結構忘れっぽいほうだけど」


 どこの世界にこんなインパクトを持った化け物を忘れる奴がいるというのか。夢で見たら普通にトラウマになりかねない。しかも、なんか名前までバレて……本名じゃないが、コレは名前バレでいいのか?


「ん? ひょっとしたらコレは夢か? ……なーんだ」

「夢のようだけど、そうでもない気はするし、ひょっとしたら夢かもしれない。そういう意味不明な空間だね」

「ええい、どっちなのだ!」

「どっちでもいいじゃないか。大切なのは私と君がフレンドという事さ」

「いや、むしろそっちはどうでもいいのだが」


 というか、夢というならこんな友人を名乗る化け物との邂逅ではなく、もっと欲望に忠実なモノを見たい。ユキたんのアレやコレな感じの、もう覚めなくてもいいやって感じの。


「ふむ、どうやらユキたんという存在がお気に入りのようだ。彼か彼女か知らない剥製職人の手下は友達になった事はないけれど、見た目くらいは変えられるよ。ほら」

「顔だけ変えたら余計に悍ましいだけだからやめろ、化け物。夢の産物とはいえ、思考を読むな」

「私の友達は贅沢だねえ。じゃあ、声も変えようか」

「やめろ」


 触手と触腕で構成されたような化け物の顔部分だけが蠢いてユキたんになっても気持ち悪いだけだ。何故かドヤ顔で、髪はアホ毛だけだし。それならまだ元の化け物らしい化け物のほうがマシである。


「それで、この夢のようなナニかはまだ覚めないのか?」

「夢の産物と思っている相手に聞くのかね?」

「それもそうだが、他に聞く相手がいない。で、どうなのだ?」

「さあ? 別に私が構築している空間でもないからね。まあ、放っておいたら覚めるんじゃないかね。夢とは限らないわけだが」

「夢の住人にそんな事を言われると不安なのだが」

「そんな事を言われてもね。良く分からない空間に辿り着いたり、無駄に良く分からない空間を作ったりするのが私の日常だし」

「壮絶な日常だな。というか、それなら貴様の仕業じゃないのか?」

「いや、こんな空間を作った覚えはないね」


 なんだか、勝手に友人を名乗る化け物が本当に夢の住人なのか怪しくなってくる。まさか、コレは妄想が具現化したようなモノで、徐々に現実が侵食されていくという事はないだろうか。


「良くある定番として、ここで眠れば目が覚めたりするんじゃないかね?」

「良く聞く話ではあるが、何故そんな定番を知っているのだ」

「私は色々事情通だからね。君の事は色々知ってるし、君の知らない事も色々知っている」

「私の妄想なら、せめて脳内に留まって欲しいのだが」

「だから私は君のトモダチだと言っているのだが。イマジナリーフレンドではないよ」


 そんな事を言われても、こんな謎空間で遭遇した化け物と友達になれる奴はそういないと思うのだが。


「というか、別に眠くはないのだが。すでに睡眠状態で更に寝る事など可能なのか?」

「それは知らないけど。なんなら、私の能力で君を眠らせてもいいよ」

「超不安なのだが……まあいい、頼んでもいいか、自称友人」

「分かったよ、友達のために一肌脱ごうじゃないか」


 そう言って謎の異形は何かのスキルを行使した……ように見えたが、メッセージは表示されないし、魔術発動時特有の魔力光も見えない。スキルが発動しただろうと感じたのは、同志Aが急に眠気に襲われたからだ。


「それでは良い夢を、同志A」


 返事をする暇もなく、同志Aは眠りへと落ちていく。




-翌日-




「覚めとらんではないかっ!?」

「私にそんな事を言われても」


 目が覚めたら、同じ謎空間と化け物のコンボがおかわりとばかりに待っていた。


「なんだコレは、嫌がらせか。夢の中で寝たらまた同じ夢でしたとか」

「単に夢ではなかったという事ではないのかね」

「それならどうしろというのだ」


 夢でないと認めたら、目の前にいる自称友人の化け物が実在しているという事になって尚更怖い。この空間にしてもそうだ。ダンジョンならなくもない程度の意味不明さだが、多分違う。冒険者なら分かる。


「私の経験によるなら、そういう場合は何かやるべき事をやるまで戻れないパターンがあるね」

「といっても、何をしろと? 別に誰かに何かやれと言われたわけでもないのだが」

「私と友達になるというのはもう果たされているしね、困ったものだ」


 同志Aとしては友達になった覚えなどないが、暖簾に腕押しになりそうなので口を挟む気がしなかった。


「ところで……えーと、お前の事はなんと呼べばいいのだ?」

「ああ、フレンズマンと呼んでくれ」


 あまりに行動と直結した名前である。同志Aが言えた事ではないが、間違いなく本名じゃない。


「なんだその名前は……まあいいが、じゃあフレンズマンよ、私はそろそろ尿意をどうにかしたいのだが、トイレなどはないか?」

「こんな謎空間にあるとは思えないけど」


 見渡す限りの湾曲した不定形空間にそんなモノがないのは分かる。トイレという呼称で伝わったのは助かるが、今重要なのは意思の疎通がメインではないのだ。

 これがダンジョンアタック中ならその手のアイテムは用意しているだろうが、今は着の身着のままでアイテム・ボックスの中身もプライベート用のモノばかりである。中に入ってる非公式ユキたんグッズの数々に価値がないはずもないが、トイレの代わりにはならない。……なっても、代わりになどしたくないし。


「仕方ない、夢の中とはいえ屋外で排泄するのは抵抗あるが……」

「文明人ならトイレくらい使ったほうがいいと思うけど。野グソは見苦しいよ」

「そのトイレがないから困っているのだろうがっ!? 分かってやってるのではないだろうな」


 今更だが、いちいち会話が成立しない。


「じゃあ悩める友達のために私が作ってあげよう。どんなのがいいかな」

「そんな事ができるのか。……どんなのと言われても困るのだが、普通ので構わんだろ」

「普通とは?」


 同志Aはトイレの普通など定義した事はなかった。何故、排泄するのにトイレの要件定義から始めなければいけないのか。


「じゃあ……とりあえず、立ち便器だと大きいのがしたくなった時に困るから、最低限大も出来るやつがいい」

「ふむふむ。君の脳内イメージから補完するよ」

「そんな事ができるならわざわざ問いかけるまでもないと思うのだが」

「思考というものはある程度条件付けしないと解析が難しいんだよ」

「そういうモノか」


 そういえば大学教授な友人も似たような事を言っていたような気がする。


「とはいえ、トイレでそんな詳細な定義など……あとは水で流せれば問題ないような気が」

「水洗という事だね。言われなければそのまま異空間に捨てる形になるところだったよ」

「流れる先は別にそれでもいいと思うが、ボットンみたいで嫌だから流す機能は欲しいな」


 実質的にはどこかに破棄できればそれでいいと思うが、絵面を想像できてしまう時点でフィルターは欲しい。そういう意味では水洗は偉大だ。

 迷宮都市には排泄物にモザイクをかける機能付きのトイレなどもあったが、なんとなく用途が理解できてしまった。どうせなら丸ごと視認できないようにすればいいと思うのだが、多分それだと流せたかどうか分からないとかそういう問題があるのだろう。


「あとは……文明人としてはシャワーくらいは欲しいな。ああ、風呂のアレではなく、肛門を直撃する洗浄用のシャワーだぞ」

「ああ、大丈夫だよ。そんなミスはしない。君が脳内で変な妄想をしなければ大丈夫さ」

「そんな事を言われると不安になるのだが」


 排泄し終わってボタンを押したら顔面に水流が直撃とかになったら泣く自信がある。そういうネタ的なトイレは見た事があるからだ。


「補完イメージは必要だしね。だからできるだけ単純なイメージがいいと思うよ」

「ぜ、善処する」


 何故こんな事をしているのか分からないが、余計な事を考えてとんでもないトイレになっても困るので、同志Aは真剣に考える事にした。

 間違っても便器の中からユキたんが見守ってる感じのトイレとか、そういうアブノーマルな妄想をしてはいけない。普通に嫌だし。


「よし、できたよ」

「なんだかんだで結構時間がかかったな」


 同志Aとフレンズマンの目の前には縦長のボックス型トイレが鎮座している。これはフレンズマンが良く分からない力で一から作り上げた代物だった。

 形状的には工事現場で見かける簡易トイレのようなモノではあるが、コレでも紆余曲折あってようやく完成したのだ。

 素材的に周囲の謎物質で作られているため、色合いが不気味なのは仕方ない。


「君が周りに敷居が欲しいとか色々追加条件を出してきたからだよ」

「私は人に排泄を見られて興奮するような変態ではないのだ」

「別に興奮する必要はないのだけど」


 何もない空間に突然ポンと便器が置かれて、そのまま何食わない顔をして用が足せるわけもないのである。フレンズマンがおらずとも普通に使いづらいだろう。

 加えて、最初に作られた便器はシャワートイレ機能付きの和式便器だったりと謎の仕様満載だったので修正には結構な時間がかかってしまった。……結構な時間といっても、この空間の時間感覚は良く分からないが。


「じゃあ、早速使わせてくれ。いい加減大のほうもしたくなってきたのでな。悪いが先に使わせてもらうぞ」

「どうぞどうぞ。どうせ私には排泄器官はないし」


 良く考えたら明らかに人間じゃないのに、普通に会話できてしまったせいかそういうモノと勘違いしていた。改めて見ると、どこから排泄するのだという形状をしているのに。

 というわけで、同志Aは勧められるままホイホイとトイレの中に入って行ってしまったのだ。


「ギャーッッッッ! 流されるーーーっ!!」


 脳内イメージから作られた適当な設備が最初から正常に動くはずもないのに。




-一ヶ月後-




「なあ、フレンズマンよ」

「なんだね」

「私は一体いつになったら帰れるのだろうか」

「さあ」


 切実な問題なのだが、フレンズマンは何処吹く風といった感じで気にも止めていない。

 随分と長い時間ここにいたため、謎の空間にはこれまた謎な設備が充実してしまっている。どれもこれも失敗に失敗を重ねてようやく動作させ、生活空間を造り上げてきたのだ。

 造り上げるのはフレンズマンで、体を張ってテストをするのは同志Aという立ち位置は最初から変わらない。

 使うのは主に同志Aだけだから、労力を割いてもらっている分文句も言い辛い。


「思えばこの一ヶ月、色々な事があった。最初はひどい目に遭ったと思ったものが、こうして思い返してみると……やっぱりひどい目にしか遭ってない気がするぞっ!?」

「君がトイレに流されたり、冷蔵庫に閉じ込められたり、レンジに食べられてチンされそうになったり色々あったね。さすが我が友だ」

「絶対褒めとらんだろ」

「いやいや、なかなかの逸材だとは思うね。いい観察対象だった」

「珍獣扱いではないか!?」


 ともあれ、そうやって失敗を繰り返した結果、こうして生活できる空間になったわけで、それは助かるのだが、当初の問題は何も解決していない。


「お前が私の夢の産物でないという事はさすがに分かるのだが、それならそれで私には皆目見当もつかない脱出方法は思いつかないのか?」

「うーん、過去の資料をまとめるついでに色々調査はしてるんだけどね」

「ついでではなく、真剣に取り組んでほしいのだが」


 異形の体をクネクネさせて何かをしていたのは分かっていたから、てっきり脱出方法を調べていると思ったのに。

 フレンズマンにとって、ここからの脱出は優先するべき事項ではないというのか。


「といっても、私にとっては良くある事だからね。良く分からない空間で友人を作るのはライフワークのようなモノさ」

「じゃあ、せめてそのついでで何かヒントのようなモノでも見つかっていないのか?」

「ない事もないよ」

「あるのかよっ!?」


 だったら言えよという話である。フレンズマンと違って同志Aには切実な問題なのだ。いくら生活環境が充実してきているとはいえ、長居したい場所ではない。


「どうやら、世界は再構築されるらしい」

「は?」


 何やら唐突にスケールのでかいワードが飛んできた。


「だから君の戻る先はまだ存在していないのかもしれない」

「何を言っているのかさっぱりなのだが」


 ヒントどころか、言葉の意味を解析するためのヒントが欲しいような回答が出てきてしまった。

 この場合、戻る先は迷宮都市という事になるが、そこから来たのに戻る先がまだないとはどういう意味なのか。


「以前、君と会った特異点の現象とも違う。もっと、大きな、外側からの力を感じるね。私にも理解できない規模だ」

「特異点?」


 同志Aにそんな記憶はなかった。以前とは一体いつの事なのか。やはり、フレンズマンの言っている事はいちいちおかしい。


「基本的に再構築だから、時期がくれば元に戻るんじゃないかな。そしたら自然と帰れると思うよ」

「よく分からんが、とにかく待てばいいのか? どれくらいだ」

「それは分からない。なんなら、元に戻らないかもしれないし、戻っても同じとは限らない」

「駄目ではないかっ!?」


 一体、同志Aが迷宮都市に戻るのはいつになるのか。そして、果たしてそこは同志Aの知っている迷宮都市なのか。ユキたんはどうなっているのか。

 答えは超常存在たるフレンズマンにも分からない。


「まあ、ゆっくり待とうじゃないか。どうせここからできる事はないんだし」





果たして、同志Aが迷宮都市に帰還できる日はやってくるのか。(*´∀`*)

多分、四巻までいければ帰ってこれるんじゃないかなーという気がしなくもありません。

フレンズマンの存在を無視すれば。


そんなわけで、新一巻発売中! 書籍・電子版共にAmazonでご購入可能です。

……といいたいところですが、何故かまだ書籍が未入荷状態になってるんですよね。(*´∀`*)

ただの登録関連の問題だと思うので、本が欲しい人は少しお待ちを。

読みたいだけならKindleのほうは購入可能です。いつもの如く、UnlimitedでもOK


そして、予定より遅れてはいますが、第二巻のクラウドファンディングも8月5日から開始予定。

今回は旧三巻、四巻分、つまり第二章を再構成したものになります。(*´∀`*)


また、この超短編は宣伝用であって本編ではないので、次話が更新された時点で時空の彼方に消え失せますのでご注意。(*´∀`*)

どうせ、どこかで見れるようにはするでしょうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここに来る人は大体知ってると思いますが、(*■∀■*)の作品「引き籠もりヒーロー」がクラウドファンディングにて書籍化しました!
表紙オーディオ
詳細は活動報告か、該当作品ページにて
引き籠もりヒーロー

(*■∀■*)第六回書籍化クラウドファンディング達成しました(*´∀`*)
img ■ クラウドファンディング関連リンク
無限書庫
作者のTwitterアカウント
クラファン準備サイト
― 新着の感想 ―
[良い点] メタ界!!!
[一言] 同志Aがここまで重要人物になるとはw ただどうあがいてもメインキャラにはなれそうに無いのが同志Aですねw
[気になる点] 4巻出るまで気持ち悪い自称友人と二人っきりで幽閉は草 同士が何をしたと言うんだ [一言] ユキたんは…どうなるかなぁ… 正直そこが1番存在の揺れがでかそうな気がしなくもない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ