後編
遅くなりましたが、とりあえず完結です。
今日も私は都会で踊る。
私の事を誰も見てくれていないと思いつつも、作り笑顔は絶やさない私偉い。
今日は公演後に握手会がある。
握手会はキモいおっさん共と悪手しないといけないという、アイドルにとって地獄みたいなイベントだ。
警備もそこまで厳重じゃないため、刃物を持ったファンが押し掛けてくるかもしれないという恐怖しかないイベントだ。
だがしかし、私みたいにファンがほとんど居ないアイドルは、楽っちゃ楽だ。
来る客も常連ばかりで、大体どの客が何を求めているか分かるようになったので演技しやすいのだ。
こんな私がどうしてアイドルになったか?
それは、歌が好きだからというのもあるけど、やっぱりチヤホヤされたいから。だけど私調子乗ってたみたい。
地元では、それなりに可愛いと思ってた私。だけど周りのアイドルはみんな私の数倍可愛い。正直歌の上手さなら上位だと思うけど、アイドルに歌の上手さなんて関係ないもん。そりゃ私人気出ないはずだと思ったね。
後、虚構の私を演じ続けることが予想以上に大変だった。
だから今日も私は自傷しながら、裏垢で本音をぶちまけている。
実はこの自傷というのが、アイドルとしてはすごく大変で、バレないようにしないといけないので深く切れず、そして、リストバンド等で隠せる凄く短い範囲でしか切れないのが辛いのだ。
私今、裏垢で凄く仲が良い人が居る。その人はフリーターで暇らしく、私が書き込んだらすぐ返してくれる。ちなみに私は公演前の昼間は、基本的に劇場の近くのカフェでバイトしているか、レッスンをしているかだ。その合間に書き込んでもすぐ返信をくれるのは嬉しい。
彼は、病んでる私の道しるべとなるようなアドバイスをくれるので凄く尊敬し、少し好きになりかけている。
今度私は次のオフに、彼と会う約束をした。
今日はオフだ。実は私たち末端のアイドルは、ほぼ毎日公演しているためほとんどオフは無い。が、流石に事務所も、月1日位はオフをくれるのである。
勿論末端のアイドルなので交通費や家賃は自腹だ。
だから公演を行っている都会に近く、地価の安い場所を探して私はそこに住んでいる。今日はその自宅に近いショッピングセンターに彼を呼びだした。
『ごめん、待った?』
待ち合わせ場所のフードコートに彼が現れたみたいだ。
彼は、サングラスを掛けていてとてもイケメンだ。
『待ってないよ。』
私はそう答える。
その後、私と彼の話は進んでいき、色々な事を話した。
精神的な話、好きなバンドの話。盛り上がった。
軽食を食べながら話が弾んだ。
彼が私の好きなバンドに詳しかったのは意外だった。
そして・・・私はそろそろかなと思い、本題に入った。
『実は、私アイドルやってるんだ。全く人気なくて売れない末端のアイドルなんだけどね。でも、いつも必死に、ファンが求める理想のアイドル像を追い求めているんだ。』
『そうなんだね。僕もバンドやってるんだけどなかなか上手くいかないんだよ。ファンの求めていることと、僕のやりたいことがなかなか噛み合わなくて苦労してるんだよね。でもやっぱり自分のやりたいことをやるのが一番だと思うよ、批判されてでも自分のやりたいことを貫き通す。それが重要だと思うよ。』
『そっか、自分の信じる道を行くのが一番だよね。ありがと。』
その後彼に電話が掛ってきて急用が出来たといって帰って行った。
帰り際に『また、会えたらいいね。』と残したのが印象的だった。
実際、結局1時間くらい話しただけで、彼と会ったのは終わった。
でも、とても濃い時間だった。
私、彼にめちゃめちゃ恋してるかも。
本当にまた会えたらいいな。私はそう思った。
しかし・・・帰って裏垢にログインしてみたら、彼のアカウントは綺麗さっぱり無くなっていた。
なんで・・・なんで・・・私の何が悪かったの???私は一晩中取り乱した。
帰り際にまた、会えたらいいねと言ったのは嘘なの???私は何も信じられなくなった。
でも、私の推測が正しければ彼とはまた会える。そう思ったからそこまで病まなかった。
だから、次の日の公演にはちゃんと出た。私は彼が居なくたって、彼の出してくれた道しるべの通り進む。それだけだと思った。
そして、私は、自分の信じる道を突き進むべく、ある一つの決断をした。
それは・・・アイドルを辞めることだ。事務所も止めなかった。正直私みたいな金にならないアイドルなんてどうでもいいみたいな態度で、辞めることを認めた。
そして、私の引退式は、いつものライブの最後にひっそりと行われた・・・
本当は最後だし、全部真実をぶちまけようと思ったけど、それは、私のアイドル像を信じているファンの夢を壊すことになるからしなかった。私は、最後までアイドルとして引退したのだ。
ちなみに私は、一人でソロシンガーとして活動していくつもりだ。やっぱり歌が好きだし、病んでる人達の力になる曲を自分でも書きたいと思ったからだ。
そして、私はアイドルを引退した数日後。私はとあることを確かめようと思い、ライブハウスに向かった。そして、いつもの好きなバンドの新曲を聴いた時。私は戦慄したんだ。なぜかって?その曲に出てくる少女が完全に私と被って見えたから・・・
やはり、私の推測は正しかった。私がフードコートで出会った彼は多分このバンドのリーダーだ。サングラスを掛けているかの違いはあるが、雰囲気でそうだと確信している。それにこの曲。これは多分私に向けて書いたんだ・・・そう思った。
そして、彼はライブ後に重大発表があるといいこう言った。
『今度我々が出す、この少女シリーズの曲を詰め合わせたアルバム。この曲の少女のイメージに合う女性のゲストボーカルのオーディションを今度行う。プロアマ問わず受けたい人は公式サイトのメールフォームで受付をしているから、どしどし応募してくれ。以上だ。』
私の目指す道が決まった。
『また、会えたらいいね。』を実現するために。私は進む。
例え同じことを言われてここに来ている人が他にもたくさんいて
ただ彼に踊らされてるだけだとしても・・・
これが私の進むべき道。そして、運命だと信じているから・・・
アナザーストーリーを書ける終わらせ方しましたが恐らくアナザーストーリーは書かないです。