第5話 領民総出!監査官に残業ゼロ実演
監査から二日後の朝。
領主館の食堂で、農民代表たちが朝食を囲んでいた。
「昨日は監査官殿、八時間労働制にすげぇ驚いてたぜ!」
「ボーナスもらってから、子供が笑顔になったよ…」
私の視界に、チートウィンドウが温かい数字を刻む。
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【エルウィン辺境領】
忠誠心:46%→52% 労働満足度:35%→43%
水路工事進捗:35%→42%(自発参加率+22%)
```
(領民の笑顔が数字になって返ってくる…
前世の職場では考えられない光景ですわ)
エドガー殿が食堂に入ってくる。
「領主様、王都から追加監査団が来るそうです。
今回は『王都最高の内政官僚三人衆』だとか。」
「殿下、本気で潰しに来ますわね。」
***
**正午──領地入口**
馬車三台が埃を上げて到着。
降りてきたのは、豪華なローブを纏った三人。
中央の禿頭がリーダーらしい。
「王立内政監査局、特別監査官バルターだ。
エルウィン領の『ふざけた改革』を検証する。」
私が一礼する。
「ようこそおいでくださいました。さっそく視察を。」
一行を水路工事現場へ案内する。
農民たちが、規則正しく鍬を振るっている。
```
【水路工事状況】
作業時間:朝8時〜午後4時(休憩2回)
生産性:従来工法比+37% 事故率:0%
```
バルター監査官が眉をひそめる。
「八時間でこれが終わるのか? 農民がサボっているのでは?」
その瞬間、農民代表が前に出る。
「監査官殿! 昨日まで16時間働いても収穫半分だったのが、
今は8時間で倍近く終わります!
残業ゼロで家族時間も取れるんです!」
他の農民たちも口々に続ける。
「ボーナスもらって、子供の服も買えました!」
「有給で婆さんの葬式、出られましたよ!」
監査官たちの顔が引きつる。
***
**領主館・実演説明会**
執務室に監査団を招き、羊皮紙を広げる。
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【エルウィン領改革成果(監査用)】
期間:領主着任後10日
①生産効率:+29%(従来比)
②離職率:89.7%→64.2%(-25.5%)
③労働満足度:12%→47%(+35%)
④納入実績:二割増しを5日早く達成
```
バルター監査官が鼻で笑う。
「数字は綺麗だが、持続可能とは思えん。
王太子殿下の直轄領では、16時間労働が常識だ。」
私が微笑む。
「では、実演してみせますわ。
──農民の方々、本日の作業はここまでです。定時退庁!」
農民たちが一斉に鍬を置く。
「ありがとうございます、領主様!」
「今日も残業なしで家族の元へ!」
監査官が呆然とする。
「な、何だと? まだ日が高いぞ!」
農民代表が胸を張る。
「これが領主様の『八時間制』です!
残業ゼロでも成果二倍! 王太子殿下の領地でも是非!」
***
**監査官同士の密談**
監査官たちが庭でコソコソ話しているのが見えた。
チートで盗み聞き。
```
【監査官会話解析】
バルター:「確かに数字は本物だ…報告書にどう書く?」
補佐A:「王太子殿下には『誇張あり』と?」
補佐B:「しかし農民の笑顔、あれは演技じゃない…」
```
バルター監査官が私に近づく。
声が少し弱気だ。
「エルウィン領主、見事な統治だ。
しかし『王太子殿下の許可なしに改革』は問題だ。」
「殿下には『特別監査』の正式依頼をしておりますわ。
開示書の第五条、領民動機付けのために『リリアベルタ名義での発表』を約束いただきましたよね?」
監査官がたじろぐ。
「そ、それは…」
そこへ、エドガー殿が書状を差し出す。
「国王陛下より直々の『経過優良』お達しです。
公爵家からも『見学希望』の照会が来ております。」
バルター監査官、完全に戦意喪失。
***
**監査終了・送り出し**
監査官たちが馬車に乗り込む。
バルターが最後に呟く。
「確かに…成果は本物だ。
王太子殿下には、『検証継続』と報告しておく。」
私が微笑んで見送る。
「殿下には、私の『戦力外通告』の成果を、
しっかりご報告くださいませ。」
馬車が去った後、領民たちが歓声を上げた。
「監査官も認めました!」
「残業ゼロ、最高です!」
チートウィンドウが更新される。
```
【エルウィン辺境領】
忠誠心:52%→61% 生産効率:+29%→+34%
王都評価:敵視→困惑(改革有効性85%認識)
```
エドガー殿と顔を見合わせる。
「次は、もっと大規模な妨害ですな。」
「ええ。恐らく『領地直轄化命令』でしょうね。
でも、私には領民の笑顔がありますもの。
何度でも迎え撃ちますわ。」
夕陽に照らされた水路が、美しく輝いていた。
(第5話 完)




