第3話 王太子殿下の妨害初手:「緊急プロジェクト」をよこせと?
領民集会から翌朝。
執務室でエドガー殿下と就業規則の最終確認中だった。
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【就業規則 導入効果予測】
離職率:89.7% → 75%(1ヶ月後)
生産効率:+12%(2ヶ月後)
導入コスト:穀物換算3日分
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(前世なら「コストかかるから却下」でしたけど…
今回は私が決裁権者。最高ですわ)
窓の外では、農民たちが珍しく生き生きと鍬を振るっている。
そこへ、門番が血相を変えて飛び込んできた。
「領主様! 王都から役人たちが…!」
エドガー殿下が封書を広げる。
高圧的な文面が並んでいた。
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**「王立監査院 臨時指令書」**
リリアベルタ・フォン・エルウィン殿
王太子殿下直轄『緊急食糧増産プロジェクト』の補佐を命ずる。
即刻、王都へ穀物納入せよ。期限は三日後。
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「…殿下らしい無茶振りですこと。
収穫前の今、穀物在庫は二割もありませんわ。」
エドガー殿がため息をつく。
「殿下の外交交渉が失敗したとかで…穀物貿易が滞り、尻拭いをこちらに。」
(前世でも「成果出してるお前がやれ」と丸投げされましたわね)
チート起動。指令書の裏に隠れた真実が、私の視界に浮かぶ。
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【指令書真意解析】
・表向き:緊急食糧増産補佐
・真意:リリアベルタの改革ノウハウを王太子側近に盗用させる
・隠し条項:納入量の8割は王太子私邸へ(公金流用)
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「…ふざけんなって感じですわね。」
思わず本音が漏れる。
エドガー殿が苦笑した。
「『戦力外通告』された令嬢の噂、王都で広まってますな。
殿下、面白くないのでしょう。」
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**執務室で即席対策会議。**
私が羊皮紙に在庫を書き出す。
「領内穀物:収穫前の二割のみ。全納入は領民飢餓確実ですわ。」
エドガー殿が頷く。
「反発すれば『不忠』の口実になります。殿下らしい罠ですな。」
「いいえ、**三重の罠**ですわ。
①穀物丸投げ→②私の改革手法を盗用→③『私が成果を出した』と殿下が宣伝。
『戦力外通告』を完全無効化する作戦でございます。」
エドガー殿が目を細める。
「しかし、お嬢様なら…何か策をお持ちですな?」
「当然ですとも。
前世…いえ、私の経験から、『上司の無茶振り回避術』を何度も実践してきましたわ。
──**最小限の納入+最大限の成果アピール**戦法です。」
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**その日の夕刻──返答書作成。**
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【リリアベルタの返答書】
領主 リリアベルタ・フォン・エルウィン
一、穀物納入について
・領内在庫:収穫前の二割のみ(詳細数値添付)
・全納入は領民飢餓確実につき不可
・領有農地全ての作業加速→五日後に二割増納入を確約
二、緊急食糧増産補佐について
・王太子殿下の補佐は「書面による助言」に限定
・現地派遣は水路工事中断で領民離職率上昇確実につき不可
三、成果報告義務について
・王都公式発表の際、「エルウィン領主リリアベルタの功績」と明記
(領民動機付けのため必須)
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「完璧ですな。法的に突っ込めず、殿下の盗用意図も封じ込め…」
エドガーが感嘆の声を上げる。
私が付け加える。
「最後に一押しですわ。
この文書の**副本を国王陛下と公爵家に事前送付**。
殿下が何か企んでも、『公衆の面前で約束した』状態にします。」
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**三日後──納入期限当日。**
王都から来た役人が、馬車ごと穀物袋を受け取る。
領民が飢えずに済むギリギリの量だ。
役人が皮肉っぽく笑う。
「王太子殿下は随分ご不満でしたぜ。
『戦力外通告された女がこれか』と。」
私が微笑む。
「殿下には、**五日後の二割増し**をお届けしますわ。
それが私の『戦力外通告』の成果でございますもの。」
役人は気まずそうに退散。
エドガー殿が肩をすくめる。
「殿下、次はどんな妨害を…?」
窓の外では、水路工事が始まったばかり。
農民たちが、初めて希望を持って鍬を握っていた。
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【エルウィン辺境領】
離職率:89.7% → 76.2% 忠誠心:12% → 23%
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「何度でも来ていただきますわ。
毎回、**ホワイト領地の実績**で迎え撃ちますもの。」
──王太子殿下との内政バトルは、まだ始まったばかりだった。
(第3話 完)




