表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/40

第23話 王太子の「八時間体験」強制視察

国王陛下の命令から一週間後。

王都ホワイト試験区は、これまで以上に多くの視線を集めていた。


掲示板には、新たな数字が並ぶ。

『配給効率:従来比+47%』『倒れ率:0%継続』


そんなある朝。

試験区の入口に、異様な一行が現れた。


***


**王太子アレクシスの「強制体験」開始**


王太子アレクシスを先頭に、側近十数名。

後ろには、明らかに不承不承な顔の宮廷官僚たち。


「これが、父上の命じた『八時間体験視察』か……」


アレクシスが吐き捨てるように呟く。

隣に控えるクロウが、無表情で応じる。


「第二王子殿下のご伝言です。『殿下の体験談、楽しみにしております』。」


王太子のこめかみに、青筋が浮かぶ。


そこへ、私とリアナが迎えに出る。


「王太子殿下、ご到着お待ち申し上げておりましたわ。」


「ふん……さっさと終わらせろ。」


***


**内政チートで「最適体験コース」を設計**


私は、心の中でチートを展開。


```

【王太子アレクシス】

残業依存:89%

集中力耐性:3時間(以降急落)

反発心:MAX

最適体験:【最も地味で単純作業】推奨

```


(地味作業で「八時間は長すぎる」と自覚させるのが効果的ですわね)


「殿下。まずは『帳簿確認業務』からお願いいたします。

最も基本的な仕事を、八時間でお願いしますわ。」


王太子が鼻で笑う。

「簡単な仕事なら、十六時間でもできる。」


「ぜひ、そのお言葉を。では、こちらです。」


机の上には、無限に続くような数字の羅列。


***


**「八時間地獄」の序盤──王太子の慢心**


最初の二時間。

王太子は意外と真面目に帳簿に向かっていた。


「ふむ。単純作業なら、確かに誰でもできるな。」


側近たちも、配給リスト整理や在庫確認に追われる。


リアナが、そっとお茶を配る。

「殿下、お体にお気をつけて。」


「気遣いはいらん。」


しかし、三時間目あたりから変化が。

王太子のペンの動きが、目に見えて遅くなる。


***


**中盤──「退屈」が最大の敵**


五時間目。

王太子の目の下に、うっすらクマが浮かぶ。


「単純作業が……なぜだ、集中が……」


隣の官僚が、小声で囁く。

「殿下。残業ならアドレナリンが出て集中できますが、

定時作業は……淡々と続くだけです。」


「黙れ! 私が負けるものか!」


だが、六時間目。

王太子の手が、初めて止まった。


「この数字の羅列……いつまで続くんだ……?」


```

【王太子アレクシス】

集中力:100%→38%

イライラ度:+73%

「八時間長すぎる」自覚:42%

```


***


**市民の視線──「王太子も働いてる」効果**


窓の外では、市民たちが試験区を遠巻きに見ていた。


「王太子殿下が、あそこで働いてるぞ。」

「八時間で帰るのか? 残業しないのか?」

「なんか……疲れた顔してるな。」


噂は、瞬く間に広がる。

酒場では、すでにネタにされていた。


「王太子殿下『帳簿つまらん…』だってよ。」

「愛国心より退屈が勝ったかw」


***


**終盤──王太子の限界突破**


八時間目、最後の三十分。

王太子は、ついに机に突っ伏した。


「……もう、限界だ……」


私が、静かに砂時計をひっくり返す。


「本日の体験、お疲れさまでした。」


側近たちも、全員ヘトヘト。

予定より早く、試験区から退場する一行。


リアナが、そっと呟く。

「殿下の机、周りに書類が散乱してました……

十六時間なら、もっと酷いことに……」


***


**国王陛下への「体験レポート」**


その夜。

クロウが、王太子の「体験記録」をまとめた羊皮紙を持参した。


『王太子アレクシス殿下 八時間体験記録』

・作業開始:意欲高

・4時間目:疲労兆候

・6時間目:作業停止三回

・8時間終了:突っ伏し退場


私は、さらなる追撃資料を添付。


『王太子直轄官僚の十六時間実態』

・作業効率:実働六時間相当

・残業十時間は「見ているだけ」状態


クロウが、にやりと笑う。

「第二王子殿下も、このレポート楽しみにしておられます。」


***


**王太子宮殿の崩壊感**


王太子宮殿。

アレクシスは、ベッドに倒れ込むように横たわっていた。


「八時間……たった八時間であの疲労……

十六時間働いている官僚どもは、何だ……?」


側近が、おずおそず報告。

「殿下。試験区では、あの作業を毎日、

淡々とこなしている者たちがおります。」


「ありえん……!」


初めて、王太子の目に迷いが宿った。


```

【王太子アレクシス】

八時間体験完了:YES

「改革かもしれない」自覚:12%

権威失墜:+28%

```


***


**改革派の夜──次の手を打つ**


王城客間。

私と父上、リアナで反省会。


「王太子殿下、完全に想定内でしたわ。」


父上が笑う。

「次は、全国主要都市での試験区拡大だ。」


リアナが、少し心配そうに。

「でも、王太子殿下の目……あの暗殺の時と同じでした。」


「ええ。だからこそ。」


私は、窓の外を見る。


「次は、王太子殿下に『自分で選ばせる』番ですわ。

『改革か、失脚か』──どちらを取るか。」


王都ホワイト試験区の灯りが、静かに瞬いていた。

王太子の「八時間体験」は、王国の常識に、確かな亀裂を生んだ。


(第23話 完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ