第22話 暗殺未遂? いいえ、労基案件ですわ
王国労働改革会談から、三日後の夜。
王都ホワイト試験区の灯りは、定刻で落ちた。
「本日も残業ゼロですわね。」
帳簿を閉じると、エドガーが頷く。
「はい、リリア様。全員無事帰宅しました。」
(ここで一安心のはずですけれど……)
胸に嫌な予感。王太子殿下の、あの危うい目。
***
**闇の中の気配──“残業命令”はお断り**
王城客間。寝る前のストレッチ中。
(社畜時代の腰壊し予防ルーティンですわ)
窓外は月も隠れて暗い。背後の気配に違和感。
「……エドガー?」
返事なし。空気が張り詰める。
次の瞬間。黒い影がきらりと光った。
(来ましたわね!)
反射的に身をひねる。刃が首筋を空切る。
***
**エドガー&クロウ、ブラック対策護衛**
「そこまでだ。」
カーテンがめくれ、エドガーとクロウが飛び込む。
「“残業命令”どころか“退職強制”ですか。
ブラックも労基案件ですわね。」
膝は震えるが軽口を叩く。
刺客二人は瞬時に制圧。クロウが呟く。
「王都裏社会で金を積まないと、ここまでは来られません。」
***
**刺客の口封じと“王太子の名前”**
「誰の差し金?」
エドガーの低音。沈黙。
刺客が苦しげに。
「……あの方の“名”を出せば皆巻き込まれる……」
「お、王太……」
黒い泡が溢れ、自滅。
「毒自己破壊ですか!」
クロウが目を閉じる。
「第二王子殿下も、この手の動きを警戒して護衛を強化するよう伝令を出しておられます。」
***
**聖女リアナの怒り──“祈り”は黙っていない**
翌朝。リアナが怒りを露わに。
「命まで……奪おうとしたんですか?」
「“正式な命令”ではないでしょうけれど。」
紅茶を飲みつつ落ち着いて。
「『私がいなければ』と考えた誰かがいるのは確かですわ。」
リアナのカップが震える。
「王太子殿下は……そこまで。」
「これは働き方改革へのカウンターですわ。
『改革進めれば命狙われる』と思わせるのが狙いです。」
リアナの瞳に炎。
「……余計に許せません。」
***
**国王陛下への報告──“暗殺未遂”の扱い**
昼。父上と共に陛下へ。
「リリアベルタ嬢への暗殺未遂だと。」
「刺客自害。背後関係不明ですが……」
父上が淡々。
「五日前、王太子宮殿から金貨行方不明です。」
陛下の目が光る。
「……アレクシス。」
「証拠不十分です。ここで大事にすれば改革止まります。」
「だが命を狙われたのだぞ。」
「“公式には”『王都治安悪化の賊襲撃』で。」
にっこり微笑む。
***
**情報戦──“王子の顔”守りつつ追い詰め**
「なぜ王太子を庇う?」
父上の怪訝な眉。
「庇ってませんわ。」
肩をすくめる。
「“表向き”守れば、王太子殿下の“中身の問題”が浮き彫りです。
・暗殺命じるほど甘く
・改革に対抗できる実績なし
──統治者として未熟の証拠ですわ。」
陛下の口元歪む。
「……性格悪いな、リリアベルタ嬢。」
「元社畜ですので。」
***
**王都ホワイト試験区“安全強化”**
試験区へ。エドガーが既に対策済み。
「夜間巡回増、非常通路を聖堂まで直結しました。」
「避難ルートですわね。」
「聖女様の結界で突破困難です。」
リアナが頷く。
「試験区全体に“夜の加護”張ります。」
「頼もしい労基署ですわ。」
前世ワード漏れる。
***
**王都の空気──“襲撃”が変えたもの**
数日後。酒場噂。
「エルウィン令嬢、賊に襲われた。」
「翌日も試験区にいたぞ。」
「『夜は寝たいので暗殺困りますわ』だって。」
尾ひれ付き。
「王太子より肝据わってるな。」
「王任せるならどっちだ?」
空気が変わる。
***
**エンディング──“怖さ”を上書き**
試験区屋上。リアナと星見。
「……怖くなかったんですか?」
「怖くないわけありませんわ。
でも『怖いからやめる』と言ったら社畜時代に負けます。」
リアナくすり。
「私も祈祷室時代、こんな夜空見る余裕なかったです。」
「今は八時間働いて星見て眠れる。」
「はい。」
同じ空を見上げ。
(王太子殿下。恐怖で口塞ぐ時代は終わりですわ)
(第22話 完)




