第21話 改革会談開幕「殿下、八時間制を体験なさいませ」
王国労働改革会談当日。
王城の大広間は、異様な緊張に包まれていた。
円卓を囲むように、国王陛下、王太子アレクシス、
私、聖女リアナ、父上、そして中立貴族と官僚代表が着席。
広間の壁には、試験区の成果をまとめた巨大な羊皮紙が掲げられている。
棒人間と数字が、王太子の顔を睨むように並んでいた。
(さあ……“ブラック上司”との最終論破会談ですわ)
***
**国王陛下の開会宣言**
国王レオノール三世が、重々しく口を開く。
「本日は、王国全体の働き方を議論する。
王太子の十六時間制と、エルウィン式八時間制──
どちらが真に国を豊かにするか、見極める場とする。」
王太子アレクシスが、強気な笑みを浮かべる。
「父上。愛国心なき改革など、所詮は甘えです。」
私は静かに手を挙げる。
「陛下、王太子殿下。まずは数字からお話しさせてくださいませ。」
***
**試験区数字の公開処刑**
召使いが、羊皮紙を順に広げる。
一枚目:配給遅延グラフ。
従来:赤い長い棒。試験区:緑の短い棒。
「王都中央地区の配給遅延が、八時間制で六割減です。」
二枚目:離職率表。
王太子直轄:二割。試験区:ゼロ。
「人材が定着すれば、経験値が積み上がり、さらに効率が上がりますわ。」
王太子が鼻で笑う。
「一週間程度の数字で、何を!
国を思う愛があれば、十六時間でも耐えられる!」
私は、次の羊皮紙を指さす。
「殿下。それが問題ですわ。」
三枚目:長期累積データ。
王太子直轄の離職累積:二年で官僚半減。
試験区予測:五年後もフル稼働。
「愛国心で無理やり働かせても、人がいなくなれば終わりです。
試験区は、人が残り、成果も残ります。」
広間に、どよめきが広がる。
***
**聖女リアナの体験談──心を揺さぶる**
リアナが立ち上がる。
声は震えていたが、目は真っ直ぐだ。
「王太子殿下。私が直轄祈祷室にいた頃、
十八時間祈祷の末、倒れました。
殿下は『愛が足りん』と仰いましたが……
祈りの神は、そんな私を救ってくれませんでした。」
王太子の顔が強張る。
「聖女ともあろう者が……!」
「今は八時間で祈祷と事務。
神託の精度が上がりました。
愛国心は、心身健全な者にこそ宿ります。」
中立貴族の一人が、頷く。
「聖女の顔色が、確かに良くなっておられる。」
***
**王太子の反論──愛国論の限界**
アレクシスが立ち上がり、声を張り上げる。
「国難の時代に、八時間など怠惰だ!
父上の代で魔王を討ったのは、誰だ?
十六時間以上の献身が、王国を支えたのだ!」
父上が静かに応じる。
「確かに。王太子殿下のお祖父上は、英雄であられた。
しかし、あの時代は戦時。
今は平和だ。民を壊さず豊かにするのが、真の統治です。」
私は、決定的な羊皮紙を掲げる。
「殿下。エルウィン連合のGDPが、王太子直轄を上回りました。
八時間で、ですわ。」
数字の棒が、王太子直轄を明確に超えている。
広間が静まり返る。
***
**国王陛下の裁定──八時間制全国試験**
陛下が、手を挙げて静かにさせる。
「十分に聞いた。王太子の愛国心は認める。
しかし、数字は嘘をつかん。リリアベルタ嬢の改革に軍配を上げる。」
王太子が青ざめる中、陛下が続ける。
「よって命ずる。
王都ホワイト試験区を全国モデルとし、
主要都市で試験導入せよ。
王太子は、試験区を視察し、自ら体験せよ。」
「体験……だと?」
アレクシスの声が上ずる。
「八時間で働いてみよ。その目で確かめよ。」
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**会談後の改革派勝利の余韻**
会談終了後。
控室で、私とリアナは小さくハイタッチ。
「国王陛下の“体験しろ”の一言が、最高ですわね。」
「王太子殿下が八時間働く姿、見ものです……!」
父上が笑う。
「これで、全国展開の道が開けた。」
エドガーが報告。
「王太子派の動きが……暗殺未遂?」
「? もうそこまで追い詰まってますの?」
クロウが頷く。
「護衛強化を。」
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**王太子の逆襲の予感**
王太子宮殿。
アレクシスは、拳を机に叩きつける。
「父上が私を侮辱した……!
リリアベルタめ、あの女さえいなければ!」
側近が、おずおずと進言。
「殿下、まずは試験区視察を……」
「黙れ! 改革など潰してみせる!」
その瞳に、暗い炎が宿る。
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【王太子アレクシス】
敗北感:87%
逆襲モード:起動
暗殺指示確率:+29%
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会談は改革派の勝利に終わったが──
王太子の牙は、まだ折れていなかった。
(第21話 完)




