第17話 王太子との面談「愛国残業? 効率無視ですわ」
王都滞在二日目の朝。
王太子宮殿の謁見室は、重苦しい空気に満ちていた。
豪奢な玉座に、王太子アレクシスが腰掛けている。
その視線は、明らかに苛立っていた。
対面には、エルウィン公爵と私。
後ろに控えるエドガーとクロウの気配が、心強い。
(いよいよ……前世のブラック上司と、真正面から対決ですわね)
***
**王太子の開口一番──苛立ちの矛先**
アレクシスが、机を叩いて立ち上がる。
「リリアベルタ! お前の領地改革が、王都を混乱させていると聞くぞ!」
私は静かに頭を下げる──が、すぐに顔を上げる。
「混乱の原因は、王太子殿下の“愛国残業”命令ではございませんか?
エルウィン領では、八時間で倍の成果を出しておりますのに。」
周囲の側近たちが息を飲む。
王太子の顔が、赤く染まる。
「何だと? 八時間で国が回ると思うのか!
愛国心のない怠惰な改革め!」
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**内政チートの解析──王太子の弱点露呈**
私は、心の中でチートを発動させた。
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【王太子アレクシス】
残業依存度:89%
成果効率:42%(全国平均比)
忠誠心低下率:-27%/月
崩壊予測:残業拒否拡大で3ヶ月以内
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数字が、はっきり見える。
「殿下。王太子直轄官僚の離職率は、月二割を超えております。
残業で無理やり回しているうちは、いつか必ず破綻しますわ。」
アレクシスが嘲笑う。
「エルウィンのような辺境ならそれでいいだろう。
王都は違う! 国の中心だ!」
「中心だからこそ、模範を示すべきですわ。
八時間制で王都の業務を効率化すれば、
全国に広がりますのに。」
***
**父上の援護射撃──公爵の重み**
父上が、静かに口を開く。
「殿下。ホワイト貴族連合はすでに六領。
対象人口十二万、王国経済の一割強を握っている。
我々が王都の物資を絞れば、飢饉すら起きかねん。」
アレクシスの目が、僅かに揺らぐ。
「脅しか、公爵!」
「忠言です。国王陛下も、エルウィン視察でご覧になりました。
八時間で水路完成、民の笑顔──あれを否定なさるおつもりか?」
謁見室に、重い沈黙が落ちる。
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**聖女リアナの援軍──王都ホワイト提案**
そのとき、扉が開き、聖女リアナが入室した。
純白のローブが、部屋を明るくする。
「王太子殿下。
私も、王都宮務院で深夜まで働いてまいりました。
ですが……もう限界です。」
アレクシスが慌てる。
「リアナ聖女まで、何を!」
「殿下の“愛国残業”は、民を壊します。
エルウィン領の八時間制を、王都で試験的に導入しませんか?
国王陛下のお許しを得て、『王都ホワイト試験区』を。」
リアナの声は震えていたが、目は真っ直ぐ。
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【王太子心理】
動揺度:68%
拒否継続確率:54%→31%
```
***
**王太子の反論──ブラックの本音**
アレクシスが、声を荒げる。
「試験区だと? ふざけるな!
国を思う愛がなければ、成果など出ん!
お前たちのような甘ったれが、王国を滅ぼすのだ!」
私は、静かに微笑んだ。
「殿下。愛国心は、残業時間ではなく、成果で示せますわ。
エルウィン領の水路をご覧ください。八時間で完成、
今、王都への物流を支えています。
王太子直轄では、十六時間かけても追いつきません。」
数字を並べ立てる。
離職率、物価上昇、業務遅延──すべて、王太子の失政の証拠。
***
**面談の結末──試験区設置の約束?**
アレクシスが、拳を握りしめる。
「…国王父上に相談するまでだ。
だが、試験区など認めんぞ!」
表面上は強気だが、目は泳いでいる。
父上が締めくくる。
「では、そのお言葉、国王陛下にお伝えします。」
謁見室を後にする私たち。
廊下で、リアナが小さくガッツポーズをした。
「効きましたわね。」
「ええ。次は、国王陛下の決断ですわ。」
***
**夜の王都──次の火種**
王太子宮殿の自室で、アレクシスは独り苛立つ。
「くそっ…リリアベルタめ、あの女…!」
側近が恐る恐る進言。
「殿下、試験区を認めて様子を見るのも…」
「黙れ! 絶対に認めん!」
だが、その声には、確かな焦りが混じっていた。
一方、王城の客間。
私はベッドで、ステータスを確認する。
```
【王太子支持率】
王都:68%→52%
全国:71%→61%
崩壊加速中
```
(王太子殿下。あなたの時代は、終わりましたわ)
王都ホワイト試験区の幕が、静かに開いた。
(第17話 完)




