第16話 悪役令嬢、王都へ「社畜ムーブは持ち込みませんわ」
王都行きの決定から、わずか三日後。
エルウィン辺境領の城門前には、遠征用の馬車隊が整列していた。
先頭に、公爵家の紋章旗。
すぐ後ろ、私──リリアベルタの専用馬車。
護衛はエドガー率いる精鋭騎士隊。
第二王子密使クロウの黒衣も目立つ。
(前世なら、出張で胃が痛くなりましたわね。
今回は、ブラック上司を“査察”しに行く側ですもの)
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**父上との出立──ホワイト親子の決意**
出発前。
馬車の前で、父上が短く言う。
「領都の留守は連合諸卿に任せてある。
王都交渉は、私とお前で受け持つぞ。」
「はい、父上。
王太子殿下の“働かせ方”を、しっかり確認してまいりますわ。」
父上が苦笑。
「婚約者に向かって、その言い方はどうかと思うがな。」
「いずれ正式に婚約破棄を申し出ますわ。」
エドガーが咳払いで笑いを誤魔化した。
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**道中の王都トレンドチェック**
馬車が動き出す。
窓から、新水路沿いの市場が見える。
「リリア様、これが水運路線です。」
エドガーが地図を広げる。
「王都まで、従来より三割早く到着できます。」
「物流早く、労働短く、成果二倍。
……戻りたくなくなりますわね。」
外からクロウの声。
「王都では連合物資絞りで不満高まってます。
“ホワイト側の顔”を見せるだけで、空気変わりますよ。」
「では、王都出張テーマは『見せるホワイト改革』ですわ。」
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**王都の景色──ブラックとホワイトの境界**
数日後。
王都の城壁が地平線に現れた。
外郭門前、物資不足の荒れた市場。
エルウィン連合刻印の商隊に人だかり。
「……物価、かなり上がってますわね。」
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【王都市民】
物価不満:83%
王太子支持:32%
ホワイト連合期待:57%
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(炎上前夜のSNS状態ですわ……)
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**王都入り──エルウィン令嬢の視線**
城門で兵士が整列。
「エルウィン公爵閣下、リリアベルタ様、ご入城!」
大通りは賑わうが、笑いよりため息が多い。
「リリア様、視線を感じます。」
エドガーが警戒。
ひそひそ声が聞こえる。
「エルウィン家の令嬢だ。」
「八時間で水路完成させたって噂の美人さんか。」
「王太子殿下の婚約者だろう。あのブラックに耐えられるのかよ。」
(噂の広がり方が、早いですわね)
***
**聖女リアナとの再会**
客間に案内され、一息つくと。
庭先から聞き覚えのある声。
「クロウさん、本当に…来てくださったんですね…!」
聖女リアナが、小走りにこちらへ。
「り、リリアベルタ様…!」
「リアナ様。」
顔を見合わせて笑う。
「お互いに……疲れましたわね。」
「ええ、でも来てくださって、ありがとうございます。」
リアナの目の下に薄いクマ。
瞳の奥に、火が宿る。
***
**作戦会議──王都ホワイト会議、開催**
その夜。
王城の一室に、公爵、リリア、エドガー、
リアナ、クロウが集まる。
地図を囲み、報告書が積まれる。
「王都官僚四割が残業拒否。業務ぎりぎり回ってます。」
クロウの報告。
リアナが続ける。
「王太子殿下は『国の愛が足りない』と怒鳴ってますが、
官僚たちは『自分たちが国を守ってる』意識です。」
私は地図を指さす。
「狙うのは──ここですわ。」
「ここ?」
「王都の“見える成果”。
ど真ん中に、“八時間制で回る仕組み”を作ります。
国王陛下と市民の前でお見せすれば、
王太子殿下の十六時間制は言い訳できませんわ。」
父上が口角上げる。
「王都版エルウィン領、か。」
「名付けて──『王都ホワイト試験区』ですわ。」
***
**次回への引き:王太子との初対面前夜**
客間に戻り、ベッドに腰下ろす。
「明日、王太子殿下とのご対面ですね。」
エドガーの慎重な声。
「はい。“ブラック上司”面談は、準備が命ですわ。」
鏡の自分は、生き生き。
(王太子殿下。社畜時代の私とは、もう違いますのよ)
王都の夜景が、不安げに瞬く。
(第16話 完)




