第15話 王都反乱の火種「聖女リアナの決起」
水路完成式典から二週間後。
王都では、静かな嵐が吹き始めていた。
国王陛下の視察帰還後、宮廷は微妙な緊張に包まれている。
王太子アレクシスの「働かせ方」が、ついに問われ始めたのだ。
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**王都・宮務院の日常崩壊**
宮務院の廊下。
いつものように深夜の灯りがともっていた。
ベテラン女性官僚マルコがため息をつく。
「またか…王太子殿下の『愛国残業』命令だ。」
机の上には、山積みの書類。
「明朝までにこれを。国の愛がないのか?」──王太子の直筆メモ。
隣の若い官僚がぼやく。
「エルウィン領では八時間で倍の成果だってのに…」
その言葉に、周囲の視線が集まる。
聖女リアナの書簡が、王都官僚の間で密かに回っていたのだ。
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【王都官僚心理】
王太子不信:62%→78%
ホワイト改革支持:45%
離反予測:67%
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**聖女リアナの決起──秘密集会**
深夜の祈祷室。
リアナは、数人の信頼できる官僚を招き集めていた。
「皆様…もう、無理ですわよね?」
おどおどした声だが、目は燃えている。
マルコが頷く。
「聖女様。国王陛下の視察後、王太子殿下の命令が苛烈になりました。
『エルウィン領に負けるな』と、残業が倍です。」
リアナは、震える手でメモ帳を広げる。
「これが、エルウィン領の八時間制成果です。
水路完成、連合六領発足…私たちも、真似できるはずですわ。」
若い官僚が声を上げる。
「でも、王太子殿下に逆らったら…」
「国王陛下は、すでにご存知です。
視察で、私たちが正直に申告しましたもの。」
部屋に、重い沈黙が落ちる。
そして──決意の吐息。
「やります。聖女様について。」
リアナの目から、涙がこぼれた。
(リリアベルタ様…今度は、私が動きますわ)
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**王太子アレクシスの苛立ち**
王太子宮殿。
アレクシスは、苛立たしげに書類を叩きつける。
「父上がエルウィン領を褒めおっただと?
あの女、リリアベルタめ…婚約者たるもの、もっと働かせろ!」
側近が恐る恐る進言。
「殿下、官僚たちの疲弊が…」
「国の愛がないのか!? 王国を思う心はどうした!」
側近は黙って頭を下げる。
内心では、エルウィン領の噂が渦巻いていた。
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【王太子アレクシス】
統治力:B 残業依存:S
危機認識:12%
婚約破棄リスク:+28%
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**ホワイト派の初手──供給停止の圧力**
王都市場。
連合六領からの織物・穀物が、ぴたりと止まっていた。
商人たちがざわつく。
「エルウィン連合が、供給を絞ってるってよ。」
「理由は? 王太子のブラックだって噂だぜ。」
王都の物価が、じわじわ上昇し始める。
宮廷厨房でも、食材不足。
「これじゃ、祝宴もままならん…」
リアナは祈祷室で、密使クロウから報告を受ける。
「連合の経済圧力、効いております。王都の不満が高まってます。」
リアナは頷く。
「次は、私たち官僚の“小さな抵抗”ですわ。」
***
**官僚たちの小さな反乱**
翌朝の宮務院。
王太子の残業命令書が配られる。
しかし──誰も動かない。
マルコが静かに言う。
「殿下。八時間で終わらせます。以降は、国の愛が尽きました。」
王太子の側近が慌てる。
「何を! 不忠者め!」
だが、周囲の官僚たちが、次々と書類を閉じる。
「国王陛下も、エルウィン領を認められたのです。」
王太子宮殿に、異様な静けさが広がった。
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【王都宮務院】
残業拒否率:0%→41%
ホワイト支持:61%
国王介入予測:89%
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**リリアベルタへの伝言**
エルウィン領執務室。
密使クロウが、汗だくで駆け込んできた。
「リリアベルタ様! 王都で反乱が始まりました!」
私が微笑む。
「リアナ様の決起ですわね。完璧です。」
父上が笑う。
「次は、王都上京だな。」
エドガーが剣に手をやる。
「護衛を固めましょう。」
私は窓辺で、水路の流れを見つめる。
(王太子殿下。あなたの“愛”は、もう通用しませんわ)
王都の火種は、瞬く間に炎上した。
(第15話 完)




