第14話 水路完成と六領主の宣言「ここからが本番ですわ」
国王陛下ご視察から三日後。
エルウィン辺境領の空は、雲ひとつない青で晴れ渡っていた。
あの張りつめた視察の日から、慌ただしくも充実した三日間だった。
式典の準備、連合六領主との細かい取り決め、領民への告知──
気付けば、時間はあっという間に過ぎていた。
そして今日。
水路完成と、ホワイト貴族連合発足を祝う日がやってきたのだ。
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**水路完成式典──悪役令嬢の開会宣言**
領主館前の広場には、簡素だがよく磨かれた壇が設けられている。
その向こうには、新しく完成した水路がまっすぐに伸び、
陽光を受けてきらきらと光っていた。
私──リリアベルタ・フォン・エルウィンは、深呼吸をひとつして壇に立つ。
「皆様。エルウィン辺境領の水路工事、これにて正式に完成いたしました。」
わっと歓声が上がる。
「この水路は、わたくし一人の力ではありません。
八時間働き、家族と笑い、そしてもう一度働く力をくれた、
皆さんの知恵と汗の結晶ですわ。」
(前世で、こんな光景が見られるとは思ってもみませんでしたわね)
***
**六領主の一斉宣言──ホワイト貴族連合誕生**
壇の横には、昨日まで会議漬けだった六領主が並んでいた。
林業領ハルトマン伯爵。
織物領ソフィア女侯爵。
牧畜領バルドウィン侯爵。
そして、穀物・鉱山・交通を担う三領の代理人たち。
父上が一歩前に出る。
「ここに、『ホワイト貴族連合』の成立を宣言する。
我ら六領主は、エルウィン領を範として、
八時間労働の改革をそれぞれの領で進めると誓おう。」
ハルトマン伯爵が斧を掲げる。
「残業で潰れかけた職人たちに、もう一度“誇り”を取り戻させる!」
ソフィア女侯爵が絹のハンカチを翻す。
「職人が幸せに織った布こそ、最高の一枚ですもの。」
バルドウィン侯爵が笑う。
「牛も人も、よく食べ、よく眠るのが一番だ!」
領民たちが笑い声と共に拍手を送った。
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【ホワイト貴族連合】
加盟:6領主正式参加
対象人口:約12万人
王国全体における比率:まだ一部だが、無視できない規模
改革拡大予測:92%
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**悪役令嬢と聖女からのメッセージ**
式典の中盤、第二王子密使クロウが壇上に上がり、書簡を広げた。
「第二王子ユリアン殿下より。」
「『エルウィン領の改革は、王国の新たな模範である。
王太子アレクシスには、民を壊さずに治めるということを学ばせねばなるまい』」
ざわめきが走るが、すぐに力強い拍手に変わる。
続いて、聖女リアナからの書簡。
「『エルウィン領の皆様の笑顔に、わたくしも救われました。
王都でも、少しずつですが、“おかしい”と声を上げる人が増えてきています。
どうか、お互いに倒れないように。
八時間でも結果は出せるのだと、どうかこの国全体に示してくださいませ』」
(リアナ様……必ず、“答え”を見せて差し上げますわ)
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**エドガーとのささやかな一幕**
式典が一段落し、領民たちが即席の屋台で食事を楽しんでいる頃。
私は壇の陰で、エドガーと肩を並べて水路を眺めていた。
「こうして見ると、本当に……こんな辺境領がここまで変わるとは思えませんね。」
エドガーが、少し茶化すように言う。
「皆さんの力があってこそ、ですわ。
どれだけ無駄に疲れていたか、身にしみて分かっていますもの。」
彼は、空を見上げながら少し真面目な声になる。
「王太子殿下は、これから苦しいでしょう。
自分の“当たり前”が否定されることになります。」
「ええ。でも、それは一度、味わうべき痛みですわ。
私たちはもう二度と、“あの頃”には戻りません。」
水路の水が、さらさらと音を立てて流れていく。
それは、過去から未来への橋渡しの音に思えた。
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**ここからが本番ですわ──次なる目標へ**
式典の最後に、もう一度壇に上がる。
「皆様。エルウィン領の水路は完成し、
ホワイト貴族連合も生まれました。
ですが──ここが“終わり”ではありません。
ここが、“始まり”ですわ。」
「次は、王太子殿下の“働かせ方”そのものを変えていきます。
十六時間働かないと回らない国ではなく、
八時間で回る仕組みを、王国全体に広げていきましょう。」
「その最前線が、このエルウィン領です。
──皆さん、一緒にやってくださいますわね?」
「おおーっ!!」
三百名を超える声が、空へ突き抜ける。
```
【エルウィン辺境領】
忠誠心:95%→98%
王国全体への改革波及予測:+31%
次アーク開始条件:達成
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水路のきらめきと、領民の笑顔に包まれながら、
私は静かに決意を新たにした。
(ここからが、本当の“ホワイト改革”の始まりですわ)
(第14話 完/「辺境ホワイト化編」完)
辺境ホワイト化編はここで完結です。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。続きを読みたいと思って頂けたら、ぜひ応援、レビューをお願いします。続きを書く励みになりますので。




