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雨の日のこと

一歩、一歩を踏みしめるごとに濡れた靴の中で冷たく湿った泡が弾けるように感じる。

傘を持つ右手もポケットに突っ込めないのが惜しい。

すかさず対の左手で包み込み、湿った空気のそれが絡み合うと、二つが互いの感覚を引き立てあって全身の中でただひとところに明かりが灯る。

春が来る前に、冬がした最後のくしゃみはこの体温がちょうど良く際立つ冷たさなのだ。


こういう程よく街を濡らす雨は、私達の感性を広げてくれる。


私は他人の家の、茂った庭の前を通るのが好きだ。

特に今は雨を通して見えているかもしれないが、降っていなくても、曇っていてもそうだ。

こんな話をするとなおさらだがやはり、私のいつも通る住宅街は人工物の雰囲気が少し息苦しい。


ちょうど暖かくなってきて、草花の緑がぽつぽつと現れ出す。

伸び放題の庭も、アスファルトの隙間も、お隣は倒れた植木鉢にも、雨が滴れば生が訴えかけてくるように伝わる。

薄暗い雲の下には静かながらに力強い息吹をひねり出すような姿は、着実な成長の象徴として私の心に影を落とす。


ただ、これが庭と言っても新築のように整えられたばかりのものはやはり人間の息を感じてしまう。

意識領域に生ずる見栄や支配欲のようなものを感じる。

だからこそ、ときに感じるのだ、自由に伸びゆく草花の清々しさや瑞々しいエネルギーを。

確かにそこには、新鮮さを求める反抗心的な気分も混ざっているものだ。

けれど、こんな感覚ほど雨に濡れた私の足どりを軽くして、平凡な日常がきらめかせるものはそうそうない。

人の意志によってではない造形を前にすると、素直になれるものだろうに。


玄関の前から道路に出るまでには、まばらに石畳が連なり、その縁から賑やかな彩りが飾る。

その脇、隣の家との間には細く白い柵が立っている。

白というよりは地面から伸びた古びた茶色のツルと、その下側を補強する今年生まれの草花とが織りなす何代もの軌跡の融合と言える。

各々の背の高さがグラデーションを作り、膝の高さくらいに紫色の花が開いている。

その顔を覗くと、吸い込まれるような白が内側から眩しく輝く。


別に立ち止まってまじまじと、見入っていた訳では無いが気ままに進む時間に流されていたいと思えばこそ、ゆっくりと感じてしまうものだ。


雨の音はそんな独り言を聞くわけでもなく、儚い感傷を描いた薄い紙に染みて溶かしていくように掻き消す。

こうして私は心地良い体験を、うちに帰る頃には心地良く忘れていくのだ。

自然は執着せず移り変わると思っている。

忘れる前に書けて良かった。良かったのか。

気取ったはずが矛盾してるじゃん。

直近の学校の帰り道です。今となってはなんのことやらって感じですけど、なんていうか安心で飽和してたんでしょうね。気分の上がり下がりは急速なので、写真に似た感じがします。趣味だったことないけどイメージとしては。

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