表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第二章】聖女達の婚姻 ~王太子のセカンドラブは義務と責任から始まる~
62/87

5.離宮の夜


 夜。

 準備を整えられたリゼは寝室でダリウスを待った。

 王妃に貰った種を一つ胸元に隠し持つ。

 ノックがあり、「どうぞ」と答え、同時に祈りを捧げる。


 これを、ダリウスへ。私の姿が彼の愛しいエレナに見えるようにーー


 瞬く間に種から透明の植物が湧き出るように部屋に広がり、空気に溶けるように消えた。




「!?」


 ダリウスが入ってきて、リゼを見て目を丸くした。


「……お前、また嵌められたのか?」


 驚いたように言って、目を逸らし息を吐く。


「またこんな所に……あいつは何をやっているんだ。呼んでくる」

「待って」


 リゼは咄嗟に声を上げた。

 予想していた反応と違う。出て行こうとするダリウスを慌てて呼び止める。


 また嵌められたのか、と言った。呼んでくる、と言った。エレナは何かに巻き込まれたのか。エレナの関係者がいると言うことか。


 何よりダリウスの声色だ。驚いてはいたが、少し呆れたような言い方。威圧感もなく、まるで友人に呼びかけるような声。


 そして……思ったよりも、熱が籠っていない。


「エレナは生きているの?」


 ダリウスがこちらを見て、目を瞬かせた。

 怪訝そうな顔をして目頭を押さえる。

 ゆっくり目を開けて目が合った時、いつものような眼差しと声色に戻っていた。


「見間違えた。気にするな」

「エレナに見えます?」

「いや、間違えただけだ」

「エレナに?」

「ここは其方しか居ないだろう、間違えただけだ」


 仏頂面で繰り返す。認めるつもりは無いようだが、エレナに見えたのだろう。そして先ほどの反応だ。

 エレナは生きている? リゼはドキドキと鼓動が大きくなるのを感じた。


 ダリウスは部屋の隅に用意されていたグラスに酒を注ぐ。「飲めるか?」と聞いて来たので頷いた。

 同じ物を二つ持って、ソファーに座る。


 リゼも目で促されて並んで座った。


「……其方に伝える事が」

「……あなたに聞きたい事が」


 少しの沈黙の後に二人同時に声を出した。


「……なんだ」


 ダリウスがリゼに譲る。本当はダリウスを優先させるべきだろうが、リゼはまずエレナの事が知りたいのだ。その為に妃にまでなったのだから。


「エレナは、生きているのですか?」

「……」

「エレナは私の大切な人なのです。ずっと一緒に育って来ました。家族のようなものです。死んだと聞かされていますが、遺体も無く……何処かに隠されているのではないかと思っていたのです」

「……」

「先程、あなたには私がエレナに見えたはずです。すみません、そういうのを使いました」

「……」

「あなたの反応は、死んだ者を見た反応ではありませんでした。生きているのね? それに、今どうしているかご存知なのでしょう!?」

「……」


 聞いているのか、目を逸らし返事をしないダリウスに、リゼはだんだんイライラしてきた。


「なんとか言ったらどう!?」


 なぜ答えない。


 興奮し頭が真っ白になる。ついに立ち上がって怒鳴りつけた。


「……生きている」


 ダリウスは呟くように言った。


「詳しくは言えないが、そのうち会える」

「生きてる」

「ああ。だから、そういきり立つな」

「今どこにいるの」

「王都ではない」

「あなたが隠しているの?」

「違う。……それもいずれ分かる。悪い事にはなっていないから安心しろ」

「本当ね?」

「本当だ」


 ダリウスはしっかりとこちらを見て言った。


「生きているし無事だし元気だ。……多分、幸せにやってる。そのうち会える」

「会える?」

「ああ、約束する」


 ダリウスの目は真剣で、嘘をついているようには見えなかった。


 生きている。無事。そのうち会える。


 その言葉が本当かはわからないが、今まで張り詰めていた気持ちが解け、リゼはその場に崩れた。

 涙が込み上げて、ダリウスの足元にうずくまって泣いた。


「おい」

「あ、あなたが、私からあの子を奪ったのよ」

「……」

「ずっと一緒に生きていくつもりだったのに」


 涙が止まらない。恨み言を言うつもりは無かったが、言葉があふれる。


「本当に姉妹のようだったの。なのに、あなたが急にっ ……あの子だって困ってたのに!」


 死んだなら、それがダリウスのせいなら殺してやると思っていたし、そうで無ければ手掛かりが欲しかった。


「そうか……」

「うーー」


 ダリウスが近くにいる気配がする。顔を上げると思ったよりも近い位置に顔があった。


 困ったような顔で覗き込んでいる。


 それからリゼの涙が止まるまではかなりの時間がかかったが、ダリウスは何も言わず何もせず、ただ膝をついてリゼの側に居た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お気に召しましたら是非こちらも
ライバルだったふたりが、イチャイチャしながら運命に立ち向かう物語

敗北した騎士令嬢、淑女を目指すが、最強わんこ騎士が離してくれない

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ