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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第一章】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~
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40.ただの男


 わ、私はどうしたら


 エレナはどうして良いか分からず、固まっていた。

 エレノアとして、大人しくニコニコしていれば何とかするからと言われたが、……これは、何とかなっているのだろうか。


「おいおい、セドリック!」


 セドリックとダリウスの睨み合いの沈黙を破ったのは、モンフォール伯爵だった。


「何を申している。エレノア嬢にとっても名誉な事、お前が口を出せる事ではないだろう」


 必死に空気を変えようとしているのか、少しおどけた口調でセドリックを嗜める。


「父上も了承してくださったじゃありませんか」

「わかったとは言ったが、認めたとは言ってない。たとえ認めていても王太子殿下のお召しだ、お前が反対する事は許さない」


 ダリウスはモンフォール親子が言い合いを始めたら、セドリックを睨むのをやめて、しげしげとエレナを見ている。


 見られている……これは私はどうしたら……


 だんだん笑顔がひきつり始めているのが自分でもわかる。


 目をそらすこともできず、ひきつったままダリウスを見ていたら、ダリウスが唇の片方だけかすかに上げた。


「エレノア嬢。そなた自身はどうなのだ?」


 威厳のある声だったが、エレナに気遣った優しさがあった。セドリックが驚いたようにダリウスを見る。

 モンフォール伯爵が飛びついたように言った。


「殿下、この娘は当家でお預かりしている令嬢ですが身寄りがなく……そうだ、モンフォール家に養子として迎えましょう、伯爵家の令嬢となれば、殿下の御側に侍ることもできましょうし何なりとお望み通り……」

「黙れ、私が彼女に聞いている」


 早速エレナを献上しようとするのをダリウスが止める。


「だが、……そうだな。そうすれば妃にする事も不可能ではないか。私にはまだ正妃は居ないが、早く妃をと言われている」

「待ってください! それは」

「いいだろう? エレノア嬢がお前の妻ではなく妹なら話は違ってくるな」


 抗議するセドリックを一瞥したダリウスは、エレナに向き合った。


「王都での生活に憧れはないのか? お前にならなんでも用意しよう。宝石でもドレスでも。……ああ、お前ならそう言う物よりも、村の大きさの離宮を用意しようか。丸々好きな花を植えればいい。小さな教会を作ってもいいな」


 ダリウスらしく無い優しい声だった。そんな景色の中にいるのを想像しているのか、目を細めて微笑んだ。


「そうだな、その中を一緒に歩きたい」


 そう言ってダリウスは立ち上がって、ゆっくりエレナに近づいてきた。

 エレナは思わず後ずさるが、ダリウスは気にかけずにそのままエレナに手を伸ばす。


 その時、後ろから肩を引かれて抱き寄せられた。そのままセドリックの胸に収まる。セドリックが少し焦った、硬い声でダリウスを止める。


「殿下、お戯を」


 エレナはセドリックに身を寄せてダリウスを見る。ダリウスは空振りした手とエレナの顔を見て、目を伏せた。


「エレ……ノア嬢。失礼した。俺は、……怖がらせてばかりだな」


 エレナは気持ちを奮い立たせた。


「殿下」


 セドリックに頼ってばかりではいけない。私の事なのだ。


「お気持ちは、嬉しいのですが……私はこちらで、セドリック様にも領地の方々にも大変良くしていただきました。ですから、私の、気持ちを、聞いてくださるなら……」


 ダリウスはじっと、促すように見つめている。


「セドリック様とともに、こちらの地から、殿下をお支えしたく思います」


 群青色の瞳から、少し力が抜けたように見えた。そして目を閉じた。


「そうか」


 掠れた声は、王太子の様子は無くて、失恋したただの男の声だった。

 エレナはつい声をかける。


「お庭を綺麗にしておきますから、いつでもいらしてください」

「それもいいな。……セドリックよ、俺も祝福しよう。二人で王宮にも顔を見せろよ」


 そう言ってダリウスは王太子のように、おおらかに笑って見せた。


 エレナを支えていたセドリックも安心したのか、力が抜けたようだった。


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