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【完結】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~  作者: ru
【第一章】花の聖女と秘密の庭 ~伯爵令息の溺愛スローライフ計画は成功しない?~
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31.男の正体

 

 その頃、エレナはギースの診療所から別荘の部屋に戻っていた。

 記憶を無くすような使い方はしなかったが、ラベンダーでハーブティーを入れた。ふわりと香りが漂い、気持ちが落ち着いていく。


 幼いころ、何があったのだろう。エレナが何となく覚えているのは、車椅子の少年とその従者の少年がいた事、荒れた庭で遊んだ事だ。

 車椅子の坊ちゃんは生意気で偉そうで、従者の少年は優しくて大人っぽくてドキドキした……ような気がする。


 とりとめもなく考えていると突然、階下で怒鳴りあう声とバタバタと足音がして、バタン、と扉が開かれた。

 押し入ろうとするギースと、それを止めようとするメアリーがもみ合っていた。


「失礼」

「ちょっと!何なんだい」

「この集落の存続がかかっておるのだ! 少し大人しくしておれ!」


 ついにギースがメアリーを振り切り部屋に押し入って、乱暴にメアリーを追い出した。

 興奮した様子のままエレナに詰め寄る。


「エレノア嬢、あやつが何者か知っておるのか」


 ギースの硝子玉の様な目は表情を読みにくいが、それでも随分と焦っている様に見えた。


「どうして」

「加護には相手の名前がいるであろ」

「……はい。あの方は」

「あわわ、やめてくれ、先程まじまじと見て気付いてしまったが、わしは知らない事にするからの!」


 手を大袈裟に振ってエレナの言葉を制止する。ギースはダリウスの正体を知っているのか。

 ギースは質問を重ねる。


「で、恋人と、『間違えられた』?」

「……はい」

「ほうほう」


 いまこの場にいるのはエレノア嬢であって、エレナではない、と言う事にすることにした。

 あと、恋人ではない。断れない関係で結婚する覚悟は決めたが、恋人になってはいない。


「うーーーーむ」


 ギースは、あまり信じてなさそうな顔で、暫く唸って何か考えている。


「成程わかった。主人殿はなんて事を……いや、流石は主人殿と言うべきか」

「え?」

「ぬしには同情する。だが、わしにはどうにもできぬ」


 ギースは溜め息をつき、決心したように言った。


「……あとは主人殿に任せよう。ぬしも、わしも、他にも数人、外に出られぬものが居るからな……」

「はい」


 セドリックが来るまで、ダリウスである事は気付かない事にする。それは分かった。

 しかし何気なく重要な事を聞いた気がする。


 外に出られない? 私も、ギースも? ほかにも?

 ギースはエレナの困惑には気づかず続ける。


「傷を確認したが、綺麗になっていた。傷痕もない。今回はこうするしかないがやりすぎじゃ。……分かる者には分かってしまう」

「は、はい」

「わしは戻る。あやつが去るまで何があっても絶対にこの家から出るなよ」

「わかりました」


 そしてエレナが疑問を問う暇もなく、ギースは診療所に戻って行った。

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