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無力

「ユウの様子はどうですか?」


心配そうに問いかけるイヴにランは首を横に振る。


夕焼けの鳥籠攻略から一日が経ったが、ユウは部屋に閉じこもったまま出てこない。


それもそのはず、彼は初めて善良な魔物を殺した。それも自分の意志を持ってだ。当然、あの時それ以外の選択肢はなかった。だが、ユウはあれを最良の選択肢だったとは思っていない。今思えば、全力を持って魔術を放てば、幽閉部屋の壁を破壊できたのではないだろうか。あるいは、自身にもっと力があれば彼女を救えたのではないだろうか。


結論から言えば、今のユウでは上記のどちらも望みはない。裏を返せば更に成長したユウならば可能性はあった。例えば、あの場にいたのがユウ以外だったら、別の選択肢を取ることができたわけだ。


今、ユウは自分の無力さを実感しているだろう。しかしそれは彼だけでなく、勇者パーティ全員が感じている。何せ、自分達にもっと力があればユウがあの選択を取って自分で抱え込むことなんてなかったのだから。


「ユウが出てきたら教えてください。それまで私は訓練しますので。」


そう言い残してイヴは訓練所に向かった。


恐らく最もユウに対して責任を感じているのはイヴだ。何故ならボロンを殺すことができるのはイヴだけなのだから。


ボロンはどんな細かく切られたとしても死なない。仮にフィルだったとしても、物理攻撃だけではボロンを殺すことができない。そんな相手を魔術がまだ未熟なランが倒せるはずがない。


――私がもっと強ければ、ユウがあんなに苦しむ必要はなかったのに。


あの時、イヴはただただ無力だった。


ユウが罠にはまった後も、勇者パーティは順調にボロンを追い詰めていた。しかし状況は徐々にボロン有利へと傾き始めた。その理由は、ボロンの魔術に対する耐性だ。


ボロンは一度食らった魔術に対して少しずつ耐性を得るという特性があった。その為、イヴの魔術は最後の最後まで残しておく必要があった。しかし、イヴはそれをわかっていながら、いくつかの致命的なミスを犯した。


時間は戻り、ユウが罠にかかった直後。


再びランとルースはボロンを細切れにすることに成功する。当然、その肉片はイヴによって凍らされる。


「今の内に対策を――」


先程の様子から、少なくとも数十秒は拘束できると踏んでランは一瞬だけボロンから目を離す。その時だった。ピシッと一瞬にして氷に亀裂が入り、ボロンが復活した。油断していたランは一瞬だけ対応が遅れる。直後、ボロンのかぎ爪がランを襲う。咄嗟に障壁を張るものの、一瞬で破壊され、ボロンの凶刃はランの眼前に迫っていた。


「クッ…!」


ガキンッという音共にボロンのかぎ爪が弾かれる。ルースの防御が間一髪間に合ったのだ。しかし、ランもルースも共に体勢が大きく崩れている。その最大の隙を逃すボロンではなく、無数の魔術を以て、2人を殺しにかかる。当然、その全ての魔術はイヴによって防がれる。


イヴのおかげで2人は難を逃れたが、ここでイヴは最大のミスを犯すことになる。度重なる仲間の危機、ユウの安否への不安、そして想像以上に凍結状態を維持できない魔術。それらの焦りから、イヴはその勢いのままボロンに反撃を仕掛けてしまう。


イヴが放った火の魔術は一瞬にしてボロンを消し炭にする。しかしその程度では当然殺すに至らない。一瞬にして再生したボロンはイヴの火の魔術に耐性を持ってしまった。少なくとも通常の火の魔術ではダメージを与えることはできなくなった。


しかしそれは大した問題ではない。問題なのは、ボロンがイヴの魔術の威力を知ってしまったこと。イヴにとってその攻撃は全力ではなかったにしろ、並みのダンジョンのボスであれば瞬殺できるだけの威力があった。それを見たボロンは当然、イヴに対する警戒度を強める。


ボロンに対して致命の一撃を与えられるイヴが警戒されることはかなりの痛手だ。しかし悪いことばかりではない。イヴへの警戒心が高まったことで、近接戦を担うランとルースはよりやり易くなる。ただそれはイヴが脅威である内は、の話なのだが。

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