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邪龍

扉を破壊し、一斉にボス部屋に入り込む。


待ち受けるゴツゴツとした肌を持つ黒い竜人、邪龍ボロンだ。


勇者パーティを見るや否や、口から放たれた魔力の光線は、咄嗟に貼られた強固な障壁を一瞬にして崩壊させる。


「聖剣と青魔術の攻撃は、再生力を遅らせるようです。それを主軸に行きましょう。」


「了解!」


それを聞いてランは先陣を切る。


――ボロンの再生力は無尽蔵。なら、時間かけても無意味だ。最初から…全力で行く!


ランが聖剣を握りなおすと、刃が眩い光を放った。その剣が聖剣であるとボロンも理解する。不死といえど、聖剣の一撃は致命的。咄嗟に防御態勢に入る。


ドガンッという轟音と共に砂埃が上がる。ランの一撃がボロンを防御ごと真っ二つにし、勢いそのままにボス部屋の地面を粉砕したのだ。


なんという威力だとボロンは動揺する。しかし流石の不死性か、聖剣により再生を遅らせているにも関わらず、一瞬で傷を修復――


ボロンの視界が逆転する。気づかぬ内に首を落とされていたのだ。ボロンはその速度に未だついていけていない。更にルースも前衛に加わり、形勢は完全に勇者パーティ有利。


ボロンは再生を間に合わせながらも、抵抗する暇もなく細切れにされる。


ボロンは灰にしても死なない。それは事前にわかっていたことだ。その為の作戦として考えていたのが、


「イヴ。今だ!」


細切れのボロンをイヴは魔術で凍結させる。


その間に部屋を隈なく捜索していたユウは、フィーの監禁部屋へと繋がる隠し扉を発見する。


「イヴさん!ここを破壊してください。」


開き方は不明。なら破壊すればいい。イヴはユウに言われた地点に赤魔術を放つ。ドカンという爆音が鳴り響き、そこに隠し通路が現れる。その先に鉄扉に囚われたフィーがいる。


この程度の扉なら壊せると確信し、ユウは魔術の準備をしつつ通路を進む。


カチッ。スイッチを踏む音がした。直後、ユウの足元が無くなる。


「ユウ…!」


直後、ユウを襲ったのは自由落下。長い長い落とし穴に落とされたのだった。その一部始終を見ていたイヴが動揺する。一瞬緩んだ魔力の穴をついたボロンが、凍結した状態から復活し、苦し紛れの反撃でランとルースから距離を取る。


「貴様達は今までの冒険者とは違うみたいだな。まさか、あの不死鳥を知っているとはな。」


「あそこにも罠を置いてるなんて随分と慎重なんだな。」


ランの表情が強張る。当然だ。大事な仲間の安否が不明なのだから。


「安心しろ。あの罠はそれ自体に相手を殺す意図はない。ただ、行きつく先は地獄だ!この神殿の守護者の中でもより魔に侵された神獣を隔離した洞窟。そこに繋がっている。俺ですら手が付けれない化け物揃いだ。はっはっは!」


「そうか。即死の罠ではない訳だな。なら安心だ。ユウならきっと切り抜けられる…!」


希望に満ちた表情をするランにボロンは不愉快そうな顔をする。


「人間はこれだから嫌いだ。すぐに根拠のない希望を抱く。」


話しながらボロンが準備をしていた魔術がランを襲う。それは不意打ちだったが、いつでも対応できるように準備していたイヴの魔術にそれは阻まれる。そして、イブを信じて迷わず突っ込んだランの反撃により、寧ろボロンが一刀両断される。


「根拠のない希望か。確かに根拠のない希望だ。だが、仲間を信じるのに根拠なんて必要ないだろ?」


ランは余裕そうな表情を浮かべて、ルースと挟んでボロンを一方的に切り刻む。ここでふと、ランは疑問に思う。


――弱すぎる。


そう。ボロンが弱すぎるのだ。当然、ダゾルサーペントやミノタウロスと比べたら強力だが、通常のA級ダンジョンのボスと比較すると実力自体は劣る。どうやらボロンの脅威は、その再生力だけの様だ。


それならやり易い。再びボロンを細切れにして凍らせる。そうやって時間稼ぎをして、ユウを待つのだ。


一方ユウは、ダンジョンの更に下。大洞窟にて身を隠していた。そこに生息するのは、ボロン並みの化け物達。ユウ一人では到底太刀打ちできない。しかし、身を隠していれば、ユウの実力があれば見つかることはない。


鑑定を駆使して、ダンジョンに戻る方法を模索する。


「クッ…!」


避けようがない位置に魔物がいる。倒せない相手ではない。しかし、戦闘をすれば別の魔物が現れるかもしれない。倒すなら最短で。


腹を括り飛び出すと、ユウは火の魔術を放つ。それは攻撃というよりかは目くらまし。威力や破壊力を落として、速度と明るさを上げて、狼の魔物の目にめがけて放った。


魔物は目を焼かれ動揺する。その隙に懐に入り込んだユウは、剣を抜いて胴体を一刀両断にする。物音に気付いて何体かの魔物が現れたが、急いでその場所から離れたのでバレることはなかった。


そうやって紙一重の戦闘を繰り返して、遂に上へと続く階段を発見した。それを見てユウは安心する。彼の瞳には、それが夕焼けの鳥籠に続く階段と映っているから。


十分に警戒して階段を上っていく。


「あれ?」


階段が途中で途切れてしまった。正確には行き止まりだったというべきか。周囲を見回しても、それらしき仕掛けはない。どうやらこの階段は、ボロンによって既に閉じられてしまったようだ。


仕方がないと、ユウは魔術を放って行き止まりを破壊する。ボロンが作った行き止まりだからか、ダンジョンである通路自体は全く傷つかず、行き止まりの壁だが崩壊した。


現れた階段を再び上っていくと、再び行き止まりに道を塞がれた。しかし、次は仕掛けがあった。ユウは鑑定を駆使して仕掛けを解除すると扉が現れた。それを通過すると、


「そっちから人が来るなんて…予想外。」


そこには殺風景な部屋が広がっていた。その隅に手錠で拘束されていたのは、


「初めまして。君は今ボロンと戦っている人達の仲間でしょ?」


「フィーさん?」


「なんだ。私を知ってるんだ。」


フィーだった。ユウの鑑定でも彼女がフィーだと言っている。災い転じて福となすとはよく言ったものだ、ユウは偶然にも救助対象と出会えたのだ。ユウは心底喜ぶ。


「じゃあさ、私を殺してよ。ね?」


その出会いがユウに絶望を与えるとも知らずに。

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