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連戦

「俺の無限回廊が突破された?」


夕焼けの鳥籠の一室で、巨大な蛇は自身の罠が突破されたことに気付く。ダンジョンのいたるところに隠れる小さな蛇と視界を共有し、勇者パーティを観察する。


「!?」


直後、じろりと魔術師の少女に睨まれたかと思うと、一瞬にして蛇が殺害され、視界が真っ黒になる。


「あんなにすぐに視線に気づくとはな。少女の姿をした魔術師。まさか、あれが噂に聞く、フロントラインのマホか?いや、それだと人数がおかしい。フロントラインは4人組と聞く。一瞬しか見えなかったが確かに奴らは5人だった。5人組で凄腕の魔術師を抱えているパーティか。一先ず、ボロン様に報告しよう。」


大蛇がボロンに報告しようと動き出したその瞬間だった。


「――見つけた!」


部屋の壁が一瞬にして崩壊する。壁にできた大穴から現れたのは先程の5人組。


「何故ここがわかった!?」


「何故って、視界共有のスキルの魔力の跡を辿ってきただけよ。」


そう、逃れることなんてできないのだ。特にあの無限ループを生み出した張本人からは。何故なら、彼が手を出した相手は、やられたままにすることなんてできない人達なのだから。


「時空の歪みから感じた魔力と同じ魔力。ランさん、アイツが犯人です!」


魔力に敏感なイヴは一瞬でその大蛇が犯人だと気づく。


「ユウ。何かわかることは?」


「見た目こそ少し違いますが、能力は一般的なダゾルサーペントとほとんど変わりません。弱点も物理攻撃ですが、ボロンの影響か高い再生力を持っています。後、特殊な幻覚のスキルを使うのでそれに気を付けてください。」


「了解。」


ユウの報告を受けて、ランとルースは何も考えることなく、大蛇に襲い掛かる。当然大蛇は反撃として紫色の霧を周囲に吐いた。それはユウの言う特殊な幻覚を引き起こす霧。しかし、その霧を吸い込んでも2人が幻覚に陥ることはなく、平然とした顔で大蛇を切り刻む。


「何故効かない!?」


「その程度の幻覚だったら、ソウの前では無意味だよ。」


「ソウだと!?あの僧侶の…そうか、お前達は勇――」


大蛇が言い終える前に、ルースはその頭を叩き潰す。驚異的な生命力だったがそこまで原型を失って、ようやく大蛇は息絶えた。


「ふぅ。」


大蛇を倒し切り、一同は一息つく。戦闘内容は瞬殺と言っていいほど一方的だったが、実際はそんなこともなく。特にランとルースの消耗は激しい。


「ボスでなくともこの強さとはね。まだ手が痺れているよ。」


大蛇の肉を切り裂く時の感触は不思議なものだった。肉を切る間、常に剣を押し返される様な感覚があった。あれはまるで、


「ゾンビだな。」


「ああ。「不死の町」で倒したゾンビのようだったな。」


B級ダンジョン「不死の町」。生息する全ての魔物が異様な再生能力を持つダンジョンで、物理攻撃が効きづらい。奴らは常に再生し続け、物理によって受けた傷は斬られると同時に直して見せる。その為、剣が押し返されるのだ。それと同じ特性をあの大蛇は持っていた。


「勢いで倒していなかったら厄介だったね。それにしても、もしボロンの眷属が全員再生能力を持っているなら、厳しい戦いになりそうだ。」


「想定外だが、倒せないほどではない。弱点を突いて一体ずつ排除して行こう。」


「ああ。」


大蛇の想定外の力を振り返りつつ、一先ず疲れた体を休める為に野営の準備を始める。大蛇の部屋をそのまま活用し、防御を固めると先にルース、イヴ、ユウに睡眠をとらせる。


「ふぅ。一先ず落ち着けたね。」


「ええ。」


一瞬気が緩んだその時だった。


寝ている間も継続されていたイヴの感知に、何者かが引っかかる。飛び起きたイヴは両隣に眠るルースとユウを叩き起こすと、「敵襲です!」と叫んだ。


寝起きでも一同は瞬時に障壁を張って、既に警戒態勢だ。直後、ドカンと壁を粉砕して襲ってきたのは、半人半牛の怪物。


「ミノタウロスか…!」


「いかにも。俺はミノタウロス。貴様ら殺す者だ!」


放たれた巨大な斧の横なぎ。その威力は凄まじく、全員の障壁をたった一撃で粉砕する。その一撃に一同は動揺するも、ミノタウロスにも隙が生まれている。隙を見つけては攻撃を放つという動きが染みついているのか、ルースは咄嗟に大剣を手に取ると、ミノタウロスの心臓をめがけて鋭い突きを放つ。


大剣は正確にミノタウロスを貫く。しかし、彼は何事もなかったように反撃をすると、刺さった大剣を平然と抜き取り投げ捨てた。胸に空いたは風穴からは大量の血が流れるが、それも束の間、見る見るうちに塞がっていく。


「やはりか。」


ミノタウロスの最も警戒される所は、凄まじい腕力と高い生命力。そこにボロンの影響が加わったことで、ミノタウロスの生命力はもはや不死身と言っていい領域に達しているだろう。ミノタウロスは再び腕に力を籠めると、武器を手放しているルースを狙って斬撃を放つ。ランはルースを守るために間に割り込むと、完璧に受けきる寧ろパワーで跳ね返す。


「ルース。今のうちに。」


「ああ。」


その隙に急いで武器を拾い上げたルースは、正面から追撃を入れるランに合わせるように、ミノタウロスの背中を強烈に切り裂く。前後からの攻撃をまともに食らったミノタウロスは、悲鳴のような雄たけびを上げる。


「ユウ!ミノタウロスの弱点って水の魔術よね。」


「はい。ですがこの状況なら氷の魔術の方が有効です。ランさんとルースさんがミノタウロスの腕を切り落としたら、そこを凍らせていってください。」


「再生できないようにするわけね。わかった。」


反撃を試みるミノタウロスは、正面のランに苦し紛れの横なぎを放つも、ランは涼しい顔で回避する。巨大な斧が空を切ったことで、ミノタウロスは体勢を大きく崩す。背後のルースはそんな無防備な背中に足を乗せ、勢いよく蹴り落とす。


ミノタウロスは無残にも地面に倒れると、その四肢をランとルースに一瞬で切り落とされる。更にイヴに傷口を凍らされ、強みの再生も止められる。そして、イヴとソウが放った水の魔術によって、最期は跡形もなく消し飛ばされた。


「この位置はもうばれているようだね。急いで移動しよう。」


ミノタウロスを討伐して、一同は休む暇なく他の場所へと移動する。しかし、安全に休めそうな場所は一向に見つからない。そこでランはあることを思いつく。


「そうか。イヴ、岩の魔術でこのダンジョンの壁を掘ってくれ。新しく隠れ家を作ろう。」


「わかりました。」


通常のダンジョンと違い、この壁は人の手で破壊できる。なら、壁に穴を掘りその穴を塞いでしまえば、安全に休める安全地帯を作れるはずだ。


イヴは一先ず5人が入れるだけの穴を空けて、全員で隠れると穴を完璧に塞ぐ。その後、物音を立てないように部屋を拡大し、外からはわからないように空気の抜け穴も作り、酸欠にならないようにする。


「やっと休めるな。」


限りなく気配を消した一同は真っ暗闇の中で体を休める。一同の中で最も体力の残っているソウは、4人を寝かせると、一人で周囲の警戒に当たる。当然、気配を消している間はスキルは使えないので、持ち前の感覚で周囲の気配を探る事しかできないが、今のところ彼らの隠れ家に気付いているものはいない。


4時間後。最初に目を覚ましたルースはもう大丈夫だと言って、ソウを寝かせた。元より感知系のスキルを扱わないルースは、ソウよりも明確に部屋の外の様子を把握できる。やはり、彼らの気配に気づいているものはいない。


更に5時間後、ソウの目覚めと共に夕焼けの鳥籠攻略の二日目が開始した。

次回は3/27(木)に掲載いたします。

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