第80話 正夢
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俺はフカフカなベッドの上で微睡んでいた。
隣には俺の可愛い彼女がいる。
いつものようにちょっとした悪戯で胸を揉む。
「ん、んん」
まだ寝ながらでも可愛い声で反応する。
なんて可愛い娘だ。
いつものように寝顔に口付けをしようと彼女をこちらに向けた。
「まいどぉ」
め、め、め、恵ちゃんんんんんん!
やばい通報案件にされるぅぅ!
俺はガバッと起き上がった。
夢かぁ…そうだよな俺に彼女なんて居ないもんな。
…ん?
何気なく置いた手に柔らかい感触が伝わる。
サイズ的に小さめの肉まんくらい?
あれ?
まさかな…
ベッドに備え付けてあるライトをつけた。
「まいどぉ」
「め、め、め、恵…んーんんーー」
「大声出したらあかんて、お兄さんこの現場見られたら言い訳きかんで!」
俺は口を塞がれたまま、もの凄い速さでコクコクコクと上下に動かす。
「な、なんでここに居るんだよ!」
小声で恵ちゃんに抗議した。
「お兄さんとお話ししたくてな」
「こんな夜中に?」
「いやー全然朝で構わんかったから、隣で寝てたんやけど」
「隣でって…無防備すぎだろう!」
「信頼の証や!それにお兄さんなら、ええて前にも言ったやんか」
恵ちゃん的にOKでも、世の中的には通報案件になるの!
「それでどうしたの?お話って」
「お兄さんもこっち側に足踏み入れてしまったやんか」
あぁ、何が言いたいか分かった。
「経験値の事か?」
コクンと恵ちゃんが頷く。
「だいたいみんな、アレに心が飲み込まれんねん」
「手っ取り早いもんな、探索者は人を殺すのが1番経験値入るんだな」
「正確にはクラス持ちやから、探索者を殺すやけどな」
「通り魔的な無差別殺人は意味がないのか」
「せやな、勘違いして襲うバカはおるけどな」
ここで、恵ちゃんも知らないであろう事実を伝える。
「1個気づいた事実があるんだけど」
「なに?」
「モンスターもモンスター殺すより探索者殺した方が経験値入る。
それも大幅に」
「そしたら、テイマーは探索者殺しまくったら、あっという間に強くなれんの?」
「ああ、ウチの子たちのレベルの上がり方が異常に早かった。
ランク6になったばかりだからレベル1だった子達がカンストまでもうそんなにない。
こっちのダンジョンでも経験値稼いでるけど、1体しか出てこないせいもあるけどレベルの上がり方違いすぎる」
「今までネタ枠やったからなぁ、探索者を殺したテイマーってお兄さんが初めてやない?
そんなんバレたら、人襲うテイマー増えるかもしれんな」
「そうだね、この事実は俺と…おそらく健二しか知らないと思う」
健二は俺を守る為に探索者に攻撃している。
あの時に経験値が入ってるはずだ。
気づかないって事は無いと思う。
「健二くんやし、それは問題無いんとちゃう?」
「う、うん、だよな!気弱な健二が探索者殺して歩くとは思えないもんな」
「あ、それで話変わるけど、思った事あってん」
「なに?」
「ウチのクラスって勇者より珍しいやん?
しかもな、これって下位職やねん。
このクラスで別にかまへん思っとったんけど、せっかくここまで来たんやしサクッとランク上げてしまおう思ってん」
「それは、3周目もしろって話?」
「いややわーそんなん事言わんてー」
「あービックリした!この苦行がまだまだ続くのか思ったよ」
「聖女ちゃんの分も入れて4周や」
「増えとるやないかーい」
「お兄さん、なんか微妙にイントネーション間違うとる」
問題はそこじゃ無い。
「手伝ってな」
「そりゃ構わないけど、鬼たちランク上げたら入れなくなるじゃん、戦力的に光莉ちゃんを先に上げないと攻略無理だと思うんだけど…最後に俺と恵ちゃんだけって違和感ない?」
「気にしたら負けや、それにお兄さんのウサギは評価めっちゃ高いから、こんなダンジョン余裕って顔しとれば大丈夫やと思うで」
「そっかー、でもなんでランクアップしようと思ったんだい?」
「白銀と敵対した時、戦乙女は向こう側になる事があっても、こっち側になる事は無いと思うねんな。
今回見とったけど、思ってたよりやるねんあいつら。
あれがランクアップするなら、うちもしとかんとちょっと不安やねん」
「でもちょっとなんだ」
「そらそやで、2対1でお兄さん庇いながら戦って、お兄さん守り切れるかって考えた時の話やし。
単純にやり合うなら絶対勝てるわ」
頼もし過ぎる。
「やっぱり、俺自身が弱過ぎるよなぁ」
「これだけはテイマーの宿命やししゃーないと思うんやけど」
「そうなんだけど…うーん、ここ終わったら久しぶりにうさぎダンジョン潜るかなぁ」
新しい戦力が必要かもしれない。




