第7話 ハグ
「戻りましたぁ」
「おかえりぃ!」
そう言うとお姉さん机を回り込んでこっちに近づいてハグをした。
ボッて音が聴こえるんじゃないかと思うくらい自分の顔が熱くなるのを自覚した。
ブランド品くらい良いんじゃないだろうか?
元々報奨金の事なんて知らなかったんだし。
お姉さんに教えてもらわなかったら貰えなかったお金だし。
「またクラスチェンジの相談なんですが」
「やっぱり、ランク1のモンスターだからカンストするの早いね!」
顔が近い、嬉…じゃなくて作業効率悪いよね。
泣く泣…もとい、とっとと離れて元の場所に戻ってもらう。
「どっちが良いですか?」
「過去のデータが全然無いから、勘で選ぶしか無いわね」
「それと、ノバが覚えたハッピーバレルのスキルなんですけど、2回目が全然発動しないんですけど、どう思います?」
「うーん、ハッピーもアンハッピーもカンストした後にアナウンス来たんでしょ?
レベル制限あるのかもね、他に何か気づいた事ない?」
「あ、そういえばスキルに横に数字つきました」
「そうなると、やっぱり発動のハードルが高くなっているんじゃ無いかなぁ?
そういう感じのスキルって良くある制限はレベルかランクなのよね。
とりあえずランク上げてレベル上げてみるくらいしか無いんだけど…」
「ノバ、ランク1のモンスターにしかなれないです」
「そうなのよねぇ、次の進化先出るのにかけるしか無いかな」
「とりあえず、進化させてもう一回レベルアップさせます」
「そうね、それで何か変わるかもしれないしね」
「後、もう一つ、俺のレベルも全然上がらないんですけど」
「当たり前じゃ無い、ウサギ系は経験値少ないし、あなたレベル10超えてるならランク1のモンスターから貰える経験値50%カットよ」
「そうなんですか!」
「もう、冊子に書いてあったじゃ無い。
こんな質問他でしないでよね、私がちゃんと説明してないって思われるから」
ちゃんと説明してもらってないんですけど…。
いや、それは言うまい、いまさら講習とかも嫌だし。
「あ、はい」
「5階層まで降りれば同じホーンラビットでもレベルが上がってるから、少しは成長しやすいと思うけど、狩りすぎてボスモンスター出さないようにね」
「何匹くらいで出ますか?」
「うーん、はっきりしないけど100匹じゃ無いかなぁ、安全に行くなら50くらいでやめた方がいいよ」
「分かりました!とりあえず進化させるんでまた手続きお願いします!」
ノバ レベル1
アンラッキーラビット ランク1
強さ 30 物理的攻撃力
器用 31 命中率
素早さ36 回避率、移動速度
知性 30 魔法的攻撃力
耐久力30 HP基準値
賢さ 30 MP基準値
HP 30
MP 30
スキル ラビットダッシュ
体当たり
身を守る
ウィークポイント
ハッピーバレル①
アンハッピーバレル①
積み上げる不幸
安定の素早さ1点上がり
もう慣れてきた。
そして、新しいスキルだけど、なんか俺のターン!発動!とか言いそうな名前出てきたな。
「じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
「…」
「…」
「…ダーリン」
「やだなぁ、もう」
俺はルンルンでダンジョンに向かった。
奥にある誰も座って無いはずの椅子が、キーッと音を立てながら動いた。
そして、黒いシミのようなものが現れ、それが人の形になっていく。
椅子には、ショートカットのでボーイッシュな女の子が椅子に座っていた。
「あの子なん?お姉ちゃんの言ってた子」
「そうよ」
「全然、強そうに見えんけど」
「今はね、でもね、絶対ボスはテイム出来ないっていうのが、この50年で証明された常識なの。
常識が通用しない人は、常識では計り知れない成長をするかもしれないわ、可能性の話だけどね」
「ふーん、それで協会には報告せんと、ウチにお金出させたんや」
「そうよ、報奨金に釣られてくれたから、うまく誘導出来たわ。
おそらくユニークモンスターに進化してるはずよ、あのウサギ」
「それはそれとして、そのバッグはいらんとちゃうの?」
「えー良いじゃん、いっぱい稼いでるんだからぁ」
「嫌やわーお姉ちゃんのそういうとこ、ほんまに嫌やわー」
「ほらほら、忙しいんでしょ!お仕事お仕事!」
「はぁ、もうあかんからね!勝手にバッグとか絶対あかんよ!」
「分かったから、いってらっしゃい!死神さん」
「死神ちゃうわ!恵比寿や!」
そう言うと、黒いシミのようになって消えていった。
それを見送ると、依頼書の処理を始めた。
ユニーククラス“グリムリーパー保持者“ S級探索者『恵比寿』
依頼内容『要人暗殺』
その書類は、シュレッダーで細かく断裁された。
1時間後
ーダンジョン内ー
よし!レベルカンストした!
ハグして…じゃなくて進化の相談に戻ろ。